菅義偉の無症状感染者関係の危機管理欠如がコロナ対策を失敗に導き、ワクチン接種のリスクコミュニケーション欠如が信頼喪失を招く

2021-03-29 10:54:05 | 政治
 緊急事態宣言は首都圏を除く6府県に対して2021年2月28日に解除決定。但し特に感染者が多かった首都圏1都3県の緊急事態宣言はさらに2月8日から3月7日までの1カ月延長されることになった。我が日本の首相菅義偉は2月28日の解除決定を伝える2月26日の「記者会見」で次のように勇ましく宣言した。

 菅義偉「今後改めて、今申し上げました1都3県については解除の判断を行いますが、3月7日に全てが解除できるように、正に、感染拡大防止の、飲食の時短を始めとして、やるべきことを徹底して行っていきたい、このように思います。政府としてはあらゆることを考えておりますが、今大事なのは、やはり、感染拡大防止を徹底して行って、3月7日、全国で解除することが大事だと思います」

 「やるべきことを徹底して行っ」た結果、2021年3月5日の「記者会見」で次のように述べることになった。

 菅義偉「先ほど新型コロナ対策本部を開催し、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県において緊急事態宣言を2週間延長し、3月21日までにすることを決定いたしました」

 言っていることとやっていることが異なる有言不実行は、当然、国民の信頼を獲ち得ない。

 この記者会見でワクチンの効果についてある情報が伝えられる。

 岩上安身(フリーランサーIWJ代表)「ワクチンだけが全ての決め手になる。何かワクチン万能論のような感じが世の中にあふれかえっているわけですけれども、しかし、実際にはワクチンには発症や重症化の予防効果はあっても、感染そのものの予防効果はないということが明らかになっております。

 これは、2月24日の(記者会見で)田村厚労大臣が私どもIWJの記者の質問に答えて、感染予防が十分なエビデンスはないとはっきり明言されておりまして、この頃、ファイザーのワクチンがイスラエル等で感染予防効果があったというロイター等の報道はありますけれども、査読前の論文です。これを確認しました、厚労省にです。厚労省の担当課は、この件について、国としての姿勢として、感染予防効果はないという姿勢を、これらの報道で改めるつもりはないというふうにはっきりとおっしゃっています。

 感染予防効果がないということは、実は、発症しない人を増やすということであって、感染しても発症しない、本人が気付かない、無症状者を増やすに等しいことであって、かえって無症状者による市中感染を増やす可能性があります。ということは、これは同時に、無症状者に対する無差別のPCR検査を大量に行っていく必要がある。片方でワクチン、片方でPCR検査の社会的検査を無差別に拡充するということをやると。そこで陽性者を洗い出していくということをやっていって、初めて成り立つものではないかなというふうに思います

   ・・・・・・

 PCR検査の拡充について質問させていただいたのですけれども、全量検査は必要ないと当時、総理はおっしゃったのですね。その御認識は変わらないでしょうか」

 要するに岩上安身氏はワクチンには感染予防効果があるわけではない。発症予防効果と重症化予防効果があるのみだから、感染しても、発症しないままに、重症化しないままにさらに感染を広げていく可能性は否定できない。その過程で予防効果が常に絶対と言うことはないから、中には発症し、重症化する例も出てくる。当然、ワクチンを接種したから、全てオーケーというわけではなく、ワクチン接種の過程や接種後に無症状感染者が出るのを少しでも抑え込むために現在から無差別のPCR検査を大量に行って、無症状感染者を割り出して、隔離、陰性に持っていく必要があると主張していることになる。

 それが「片方でワクチン、片方でPCR検査の社会的検査を無差別に拡充する」と言うことになる。

 岩上安身氏が「全量検査は必要ないと当時、総理はおっしゃったのですね」と指摘していることは2020年12月25日「記者会見」で同じ岩上安身氏が「中国が全量検査を徹底して、感染を抑え込み、経済を回復させた中国と比べて日本は全量検査に熱心ではない」と質問したのに対して菅義偉が「全国、全員ということは、私は、色んなところに相談しますけど、そうした必要性はない。こういうふうに思っています」と発言したことを指す。

 野党はPCR検査の拡充を一貫して要求していたが、政府は同じく一貫してその必要性を認めてこなかったが、菅義偉のこの発言にもその姿勢が如実に現れている。

 岩上安身氏が上記2021年3月5日の記者会見で社会的PCR検査の無差別な拡充を求めたのに対して菅義偉と新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂のそれぞれの答弁を取り上げてみる。

 菅義偉「私自身もワクチンは発症、重症の効果がある、このことの理解を示しています。発症と重症化にはワクチンは効果がある、こういう中であります。ですから、一日も早く国民の皆さんにワクチン接種をしたい。それと同時に、検査の充実、これも必要だと思います。先ほど私、最初の一連の挨拶の中で高齢者施設に対して集中的に今月中に3万か所やるということを申し上げました。さらに、繁華街でモニタリング検査を実施する。こういうこともこれから大都市でやっていきたい、このように思っています」

 菅義偉自身もワクチンは発症予防と重症化予防には効果があると保証している。裏を返すと、感染予防効果が絶対的にあるわけではないとしていることになる。その上で感染防止対策として3万か所の高齢者施設に対して集中的にPCR検査を行う。繁華街でPCR検査を通した感染状況のモニタリング検査を実施する。この二つの実施共に感染が判明する前の検査であって、当然、無感染者であるか、感染はしているものの、無症状者であるかの判別を行ない、後者の場合は2次感染、3次感染を防ぐために病院等への隔離に持っていくということになる。

 勿論、菅政権として今まではしてこなかったこのPCR検査の拡充は既に触れたようにワクチン接種の過程や接種後に無症状感染者が出るを少しでも防ぐために無症状感染者の数を少しでも減らしていくための方策であろう。

 この姿勢は野党のPCR検査拡充の要求に一貫して消極的であった菅政権の180度の政策転換を示すことになる。180度の政策転換は前の政策が間違っていたことを意味する。2020年10月29日の衆議院本会議代表質問で共産党委員長志位和夫が「無症状の感染者を把握、保護することを含めた積極的検査への戦略的転換を宣言し、実行に移すべきではありませんか」と求めたのに対して菅義偉は「医療機関や高齢者施設等に勤務する方や入院、入所者、さらには感染者の濃厚接触者等に対しては、既に無症状であっても行政検査の対象とするなど、積極的な検査を実施しているところです」と答弁。要するに医療機関や高齢者施設等で感染が確認された場合はその濃厚接触者も含めて、つまり全員、無症状であっても行政検査の対象とするが、感染が確認されない場合は行政検査の対象とはしないと答えている。

 言っていることはPCR検査の実施は感染して症状が出るまでは待つという姿勢でいたことになる。医療機関や高齢者施設、あるいは劇場や飲食店、家庭等の人が集まる閉鎖空間では感染者が出れば、その濃厚接触者は割り出し可能となって、PCR検査を実施、陰性のみを病院等に隔離していけば、概ね事は片付いていく。だが、最初にコロナウイルスを持ち込んだ人間は感染していると思っていなかったから、持ち込んだのであり、閉鎖空間での濃厚接触者扱いとなって、感染経路不明者とは扱われにくくなる。つまり発症時間に個人差があるから、感染が誰から始まったのか把握しにくく、逆に感染経路不明という事態が起こりやすくなる。

 さらに現実には人が集まる閉鎖空間での感染ばかりとは限らず、東京都の殆どの場合、感染者の半数か半数近くを占めてきた感染経路不明者は誰から感染したのか分からない、どこから感染したのか分からないということからの感染経路不明ということなのだから、その大半はコロナウイルスに感染はしているものの無症状の感染者(無症候病原体保有者)からの市中感染と見るのが妥当で、だから、感染経路不明に繋がっていくという危機管理意識を当初から持っていなければならなかったはずだ。だからこその野党側の無症状感染者に対するPCR検査拡充の要求であった。

 菅政権が野党の要求に応じてこなかったのは感染経路不明者の多くは無症状の感染者からの感染の可能性を疑う危機管理に立つことができなかったからだろう。そしてワクチン接種という段階に至ってから、初めてこの手の危機管理の考え方を採用することになった。ワクチンが発症予防効果と重症化予防効果はあるものの、感染そのものの予防効果は必ずしも保証するものではないというその性格上、感染があった場合、無症状の感染者からの感染と限定せざるを得なくなり、今からPCR検査等を通して無症状感染者を減らしていく必要に迫られた。

 そのため政策転換であるはずだが、感染経路不明者の大半が無症状の感染者からの感染の可能性を疑う危機管理に立ち、PCR検査を通して市中に放たれている無症状感染者を割り出す政策を怠ってきたことのこの場に至ってのPCR検査の拡充であって、従来からのPCR検査体制の失敗を物語ることになる。

 尾身茂「今、おっしゃる重症化あるいは発症化予防。これが非常に重要で、しかし、それだからといって、実は仮に、よく分かりませんけれども、普通の常識を使えば、日本の(ワクチン接種の)候補者になる人々の恐らく90パーセントが接種することはないでしょうね。国民の7割が仮に打ったとしますよね。子供さんとかは別に。そうなっても、実は、私は、時々のクラスターはそれからも起きると思います。なぜならば、ワクチンの感染力防止ということと同時に30パーセントは打っていないわけですよね」

 国民の7割がワクチンを接種すると予想。30パーセントは接種しない。この30パーセント内で感染と被感染が繰り返されたなら、当然、クラスター発生の可能性も出てくる。但し30パーセント内での感染だけとは限らない。ワクチン接種の7割内でも無症状感染者を出す可能性は否定できないのだから、7割の中の無症状感染者から無接種の30%に対しての被感染の可能性も否定できず、東京都の場合、感染確認のうち約20%は無症状だということだから、無接種の30%に対して無症状の約20%はほぼ維持するかもしれないが、ワクチンを接種していない分、残りの80%分から重症患者を出す少なからずの可能性にしても否定できないことになる。

 岩上安身氏が取り上げた2月24日の田村憲久の記者会見での記者とのワクチンの感染予防、発症予防、重症化予防についての遣り取りを見てみる。

 記者「昨年10月2日の第17回厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会の『ワクチンの有効性・安全性等副反応の捉え方について』という資料の中で、ワクチンの効果についてというページがございます。接種した人は感染しないという効果については実証が難しいと書かれています。ある意味心配な記述ですが、その後これについての見解の変化ということはございますでしょうか」

 田村憲久「感染予防の効果があるかということですかね」

 記者「そうです」

 田村憲久「これは今のところ、世界中で、感染予防効果があるということ自体が認められているということではない、と我々は理解しています。実際例えばファイザーのワクチンに関しても、我が国においては発症予防に関しては確認できていると。

 重症化予防に関しては重症者の事例が少ないため確認はできていないのですが、ただ重症化予防というよりは重症者が減るかということから考えると、発症者が減れば重症化しないわけですから、発症者が減った分は重症者が減るのだろうと思っております。

 ただ、感染予防という意味からすると、これは十分にエビデンスがまだないので、そういう意味では我々はこれを確認できておりません。あるかないかが分からない」

 かくこの通り発症予防と重症化予防についてはそれなりの効果はあるはずだとし、感染予防については「十分にエビデンスがまだない」

 記者はコロナワクチンの予防効果についての情報根拠を2020年10月2日の「第17回厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会」の「資料3 ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について」に置いている。どんな記述になっているか見てみる。

 「新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関する分科会の現時点での考え方(一部抜粋)新型コロナウイルス感染症対策分科会」(2020年8月21日)

 〈新型コロナワクチンの治験に関する論文報告(概説)

 誘導された免疫による発症予防効果や重症化予防効果の有無、免疫の持続期間については、まだ評価されておらず不明。

※ 自然感染においては、抗体が比較的早期に低下するとの情報がある。〉

 〈一般的に、呼吸器ウイルス感染症に対するワクチンで、感染予防効果を十分に有するものが実用化された例はなかった。従って、ベネフィットとして、重症化予防効果は期待されるが、発症予防効果や感染予防効果については今後の評価を待つ必要がある。しかし、今から、安全性と共に有効性が妥当なワクチンが開発されたときに備えて準備を進めていく必要がある。〉

 結論は、〈誘導された免疫による発症予防効果や重症化予防効果の有無、免疫の持続期間については、まだ評価されておらず不明〉であり、〈発症予防効果や感染予防効果については今後の評価を待つ必要がある。〉とどちらも「不明」の評価を下している。

 だが、この分科会の「議事録」では次のような発言となっている。

 林予防接種室長「ワクチンが開発されたときに効果があるかどうかが分かるのは、発症予防、重症化予防という観点の効果だと考えます。感染予防の効果については、まず治験を行っても、その瞬間には分からない、社会の中でしっかり使ってみないと分からないという性格のものであるということです。

 これは内閣官房のほうの分科会でも議論になったと承知していますが、なかなか呼吸器感染症のウイルスのワクチンで、感染予防に効果があるというものはこれまで開発されていないという御指摘もありますので、開発されたときには発症予防や重症予防、期待できるとしてもそのようなものが期待でき得るという考えの中で、いろいろな優先順位も含めて考えていく必要があるのではないかというのが、今の時点の内閣官房の分科会の議論も含めた現時点の考え方だと思います」

 ワクチンが「開発されたときには発症予防や重症予防、期待できるとしても」、「感染予防の効果」は「社会の中でしっかり使ってみないと分からないという性格のものであ」り、「呼吸器感染症のウイルスのワクチンで、感染予防に効果があるというものはこれまで開発されていないという指摘がある」と感染予防効果にかなり懐疑的になっている。総合すると、発症予防効果や重症化予防効果は期待できるが、感染予防効果は期待しにくいということになる。

 そしてこのような情報の国民に対する取り扱いについて1人の委員が発言している。

 大石委員「私も、前半の議論を踏まえて意見を述べたいと思います。臨時接種の接種勧奨・努力義務ということについて、あるいは接種率の目標について、やはり重要なのは、国民にワクチンのリスクコミュニケーションをしっかりしていくことだろうと思います。ワクチンを接種することで、個人の重症化予防ということだけではなくて、医療の逼迫を最小限にするといった社会的役割を国民にしっかり伝えていくことが大変重要なのだろうと思います。そうすることで、ワクチン接種の理解が接種率の向上に当然つながってくるわけですから、義務だとか言うよりも、やはり国民の理解を高めることが一番肝要になってくるのだろうと私は思います。以上です」

 2020年10月2日の時点でワクチンの感染予防効果や発症予防効果、重症化予防効果について議論が行われていながら、少なくとも菅義偉が記者の指摘に応じて公に取り上げたのは5カ月後の2021年3月5日の記者会見ということになる。しかも大石委員が指摘したようにワクチン接種のリスクを国民にしっかりと伝えて、そのリスクを国民と共有する目的のコミュニケーションという体裁を取ったものではない。質疑応答で記者に質問されて、その質問に手短に応じて伝えるべきリスクの類いではない。

 リスクコミュニケーションの意図を有していたなら、冒頭発言で早々にこのリスクを具体的に明らかにしておかなければならなかった。だが、そうはしていなかったのだから、コロナワクチンは発症予防効果や重症化予防効果は一応認められるものの、感染予防効果についてはかなり疑問符がつくというリスクに関しての情報を、少なくとも公にははっきりとさせない意図の隠蔽を働かせていたことになる。

 菅政権が現在着手し始めている高齢者施設に対しての集中的なPCR検査と繁華街でのPCR検査、それらのモニタリング検査が無症状感染者を少しでも多く割り出して隔離に持っていくことで、今から無症状感染者を抑え込んでいき、コロナワクチン接種後の無症状感染リスクを最小限にとどめるための政策であるはずであることからすると、無症状感染者をピックアップするためのPCR検査に消極的であった従来の政策が誤りであったことを証明となるにも関わらず、その誤りを認めないばかりか、コロナワクチン接種のリスクを国民と共有するためにそのリスクを公にする情報開示とは逆の、リスクを曖昧にしておく形での情報隠蔽まで働いている。

 菅義偉は常々「国民から信頼される政府を目指します」を謳っているが、自分では逆の信頼を失うことをしていることに気づかないでいる。

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