鹿沼軽自動車水没事故/危機管理無能力を徹底検証すべき(2)

2008-08-28 10:27:57 | Weblog

 ≪栃木・鹿沼の車水没死:遺族「悲劇、繰り返さないで」 市長が対応を謝罪≫(毎日jp/2008年8月27日 東京朝刊)

 栃木県鹿沼市で16日、集中豪雨で冠水した高架下に軽乗用車が水没し、同市千渡(せんど)の派遣社員、高橋博子さん(45)が死亡した事故で、佐藤信市長は26日、市の冠水対策が実質的に機能しなかったことを明らかにしたうえで謝罪した。遺族からは対応を批判する声が上がった。警察庁は110番に正確、迅速な対応をとるよう同日付で全国の警察に指示することを決めた。【中村藍、松崎真理】

 佐藤市長は市役所で会見し「情報が錯綜(さくそう)し、結果として救助出動がされなかったことは申し訳ないこと」と謝罪した。現場には路面冠水を知らせる装置が設置してあり、水深20センチを超えると、近くに保管してあるバリケードを置き、通行止めにすることになっていた。しかし、16日はバリケードの保管場所が水没したため設置できなかった。市は今後、バリケードの設置場所を増やす方針。

 市によると、事故当日の夕方の豪雨で問題の高架下は最高水位195センチを記録。市消防本部には浸水などの通報が殺到した。これらの対応に追われ、県警鹿沼署に出動要請済みの別の水没事故と混同し出動指令を出さなかったという。

 一方、高橋さんの長男雅人さん(19)は市長の謝罪について「母は必死に生きようとしながら死んでいった。このような悲劇を二度と繰り返さないでほしい」と怒りを押し殺して話した。中国留学から帰国し、高速バスで鹿沼インターに到着した雅人さんを迎えに行く途中の事故。雅人さんがバスから「もうすぐ着く」と電話すると、高橋さんは「すぐ行くからね」と答えた。それが最後の母の声だった。雅人さんは「警察や消防は混乱していたというが、大地震が起きたら救助できるのか疑問に思う」と緊急時の対応に苦言を呈した。
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 ◆栃木県鹿沼市で起きた車両水没死亡事故の経過◆
8月16日午後
 5時10分 市内で6時10分までの1時間に85ミリの雨量観測
   33分 現場の路面冠水を知らせる装置が作動
   54分 現場で最初の水没事故があり、目撃者が消防に通報(被害者は自力脱出)

  (業者現場到着/6時15分/東京新聞)
 6時19分 高橋さんの水没事故を目撃した人から県警に通報(県警は現場近くの別事故と勘違いし出
       動指示せず)
   21分 高橋さんから県警に通報(県警は発信位置を特定できず)
   22分 高橋さんの電話を受けた母親が消防に通報。「娘から『さようなら』と電話があった」と
       話した(消防は断片的な情報のため正しい位置を把握できず、別地点に出動指示)
   26分 高橋さんの事故の目撃者から消防に通報
   29分 さらにもう1件、消防に通報(この2件の通報について消防は5時54分通報の事故と混同
       し、出動を指示せず)
 7時30分 付近を巡回中の警官が高橋さんの車を発見、救助したが高橋さんは心停止状態。搬送先の
       病院で約1時間後死亡確認 


  ≪鹿沼の車水没死:鹿沼市長が謝罪、再発防止策策定へ 防災対応の盲点露呈 /栃木≫
(毎日jp/08年8月27日) 

「想定を超えてしまった」

 鹿沼市茂呂の東北自動車道高架下の市道が今月16日、集中豪雨のため冠水して通り掛かった同市千渡、派遣社員、高橋博子さん(45)の軽乗用車が水没し、死亡した事故は、市消防本部、県警に続き、地元の佐藤信・鹿沼市長も対応の不備を認める異例の事態に発展。緊急を要する事故・防災対応に盲点があることが露呈した。冠水した現場の市道にバリケードの設置などができなかったことについて佐藤市長は26日、市役所で開かれた定例記者会見で、謝罪の言葉を述べるとともに、再発防止策を策定する考えを明らかにした。【中村藍、松崎真理】

 消防や行政で適切な対応が取れなかった原因について、佐藤市長は会見で、「かつてない1時間に85ミリを超える雨が集中的に降った」ことと、市内の各所から通報が相次ぎ、対応する職員が手いっぱいになってしまった問題を挙げた。

 同市によると、事故現場となった市道は、東北自動車道が開通した1972年と同時期に開通した道路で、これまで、冠水により95年に車両3台と01年に2台の合計5台が水没したことがあったという。ただそれらはいずれも約1メートルの深さの冠水状態だった。

 しかし16日は、冠水部の水深が約2メートルに達するほどの集中豪雨だった。道路入り口付近に保管してあるバリケード2カ所は既に冠水していて設置できず、ガソリンスタンドの店員6人と市の委託業者2人が、手サインで車両の誘導に当たった。

 しかし、大雨で視界が悪かったことなどから、誘導に気付かなかったドライバーもいたものとみられ、すべての車の進入は阻止できなかった。佐藤市長は「想定を超えてしまったというところが最大の問題であった」と釈明した。

 市は今後の再発防止策として、
(1)路面冠水装置が作動した場合に設置するバリケードと設置個所を6カ所、8基に増やす
(2)路面冠水装置が水深10センチを感知した場合、市消防本部は現場に急行する
(3)広報紙でも冠水注意個所の周知を図る
(4)現在、市内に6個設置している赤色回転灯を18個に増やす
(5)雨量が1時間40ミリを超えると予想される場合、市消防本部は職員を招集する--などを挙げた
   。
 ◇遺族、怒りあらわ 「早めに連絡ほしかった」

 高橋さんの長男・雅人さん(19)は26日、宇都宮市で報道陣の取材に応じ、鹿沼市消防本部や県警の水没事故への対応を批判した。

 「想定外の大雨だったことが大きな要因」。釈明を繰り返す市に対し、雅人さんは「事故現場は十数年前から危険な場所と言われてきた。想像できない大雨だったことは分かるが、事前に改善できなかったのか」と怒りをあらわにした。

 高橋さんは中国での短期の語学留学を終え、成田空港から高速バスで鹿沼市に戻ってくる雅人さんを迎えに行く途中に事故に遭った。雅人さんはバスの中で母に2回電話をした。「そろそろ、鹿沼に入るから。雨が強いから気をつけてね」。高橋さんは「こっちもすごい土砂降り。すぐに行くからね」と答えたという。

 雅人さんは「母は泥水にのみ込まれて、苦しんで必死に生きようとした」と言葉を震わせた。

 また「謝罪やミスを認めるにしても、もっと早めに連絡をほしかった」と悔しさをにじませた。今後の対策については「犠牲者をこれ以上出さないために、排水設備の改善や道路の角度を直すなどしてほしい」と話した。その一方で、「警察、消防は対応のミスを認め、市も謝罪してくれたので気持ちは軽くなった」とも述べた。 
≪鹿沼水没事故 会見で市長が謝罪 人命優先第一を強調≫(東京新聞/2008年8月27日)
 事故に対する見解や今後の対応を述べる佐藤信市長=鹿沼市役所で

 「対応できず、心からおわびしたい」。鹿沼市の市道で豪雨のために軽乗用車が水没し、会社員高橋博子さん(45)が死亡した事故で、二十六日に記者会見した佐藤信市長はこう謝罪。再発防止策を公表した。行政の不手際が指摘される中、市は教訓を生かせるのか-。 (横井武昭)

 佐藤市長は冒頭で「結果として消防の救助出動ができず申し訳ない。心からご冥福を祈る」と神妙な面持ちで陳謝した。 

 市によると、当日の十六日午後五時三十三分、冠水が二〇センチを超えたことを現場の路面冠水装置が感知。周辺四カ所の掲示板が「通行止め」を表示した。冠水時、市は委託業者に通行止めのバリケードを設置するよう依頼しているが、連絡が遅れ、業者の現場到着は同六時十五分。すでにバリケードの保管場所自体が水没し、取り出せなかった。

 消防も同六時二十九分に「車二台が水没した」という通報を受けながら別の水没事故と混同し出動しなかった。大雨洪水警報が出た午後六時に非常招集をかけたが、全職員三十人のうち十八人しか集まらなかった。

 対応の不備や市の責任について市長は「経験したことのない豪雨だった。行政の不備というより、すべてが想定の範囲を超えていた。人命優先がとにかく第一。そのためにいち早く通行止めにすることが求められる」と強調した。

 死亡した高橋さんの長男雅人さん(19)は「もう少し早く説明してほしかった。悲しい事故が二度と起きないよう改善されることを望みます。母の死が無駄にならないように」と話した。


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