反対の真の理由は日本人の血を汚したくない日本民族優越意識からだろう
11月18日(08年)未婚の日本人男性と外国人女性の間に生まれた子が父親認知を要件に国籍取得可能となる「国籍法改正案」が衆院本会議で可決、民主党その他の野党も賛成していることから、参院に送付後、今国会で成立する見通しだとメディアは伝えていた。
この改正の動きは最高裁が今年6月、結婚を条件とする現行法を違憲と判断したことを受けたものだという。但し、ウソの認知で国籍を取得する偽装認知が広がる恐れがあるため、虚偽の届け出をした者に1年以下の懲役か20万円以下の罰金を科す規定を新設したそうだ。
6月の最高裁判決を08年6月4日「毎日jp」記事≪婚外子:婚姻要件の国籍法規定は違憲 最高裁大法廷判決≫で見てみると、――
<結婚していない日本人父とフィリピン人母10組の間に生まれた子ども10人が、国に日本国籍の確認を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷=裁判長・島田仁郎(にろう)長官=は4日、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と初判断した。その上で10人全員について日本国籍を持つことを確認した。
最高裁が法律の規定を違憲としたのは、在外邦人の選挙権を制限した公職選挙法の規定を巡る訴訟の判決(05年9月)以来で8件目。国会は早急な法改正を迫られる。非嫡出子(婚外子)の不利益な扱いに対する違憲判断は初めてで、相続で差を設ける民法の規定などを巡り議論を呼びそうだ。
国籍法3条1項は、未婚の日本人父と外国人母の間に生まれた子について、父の生後認知と両親の結婚の両方を日本国籍取得の条件としている。嫡出子の立場を得ることを必要とする規定だ。
原告は、関東地方などに住む8~14歳の10人。父の認知を得て03~05年に法務局に国籍取得を届け出たが、認められなかった。
原告側は「両親の婚姻という子どもに左右できない事情で国籍について異なる扱いをするのは不合理な差別」として、憲法14条の定める法の下の平等に違反すると主張。これに対し国側は「両親の結婚で子は日本との強い結びつきを持ち、法には合理的な根拠がある」と反論した。
1審・東京地裁は2件の訴訟とも同項について違憲判断し10人の日本国籍を認めたが、2審・東京高裁は「婚姻要件を無効として認知のみで国籍を取得できると解釈することは、新たな要件を創設するもので立法権の侵害」と憲法判断に踏み込まず、いずれも原告逆転敗訴とした。
日本人父・外国人母の非嫡出子で原告と似た境遇の子どもたちは国内に数万人、海外にも相当数いるとの学者の試算がある。父の認知を得る困難さはあるが、判決は救済の道を開いた形だ。【北村和巳】>・・・・・・
国側の子供に「両親の結婚で日本との強い結びつきを持たせる」はもっもとらしげに聞こえるが、結婚できなければ駄目だという壁を設けるものだろう。
改正案が「婚姻」要件を外すことに反対して、自民党などの有志議員が11月17日、「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」を結成して採決延期を求める決議を行ったという。
その理由は「偽装認知による国籍売買を招く恐れがある」というものだが、「偽装」は人間営為のすべてに付き纏うものだから、「偽装認知」を口実にすることは法律阻止の理由とすることはできない。
そもそもからして「偽装」に備えて、「虚偽の届け出をした者に1年以下の懲役か20万円以下の罰金を科す規定を新設」しているし、この程度の罰金で「偽装」が止まないと言うことなら、法律を改正して罰則を厳しくするしかない。
1948年に制定された「政治資金規正法」は資金管理団体に対する企業・団体からの寄附を禁止したり、日歯連ヤミ献金事件をキッカケに政治資金団体に対する寄附の出入りを原則銀行や郵便振込み等で行うことを義務づけたのは証拠を残さない「偽装」の存在とそのような不正なカネの流れを防止することが目的であり、その後のそれまでは無制限だった政党及び政治資金団体以外の政治団体間の寄附の上限を年間5000万円まで制限する改正にしても、あるいは資金管理団体への企業・団体からの寄附禁止にしても、資金管理団体以外の政治団体を設けて迂回献金させる「偽装」の存在・横行とその制限の必要性から出たものであろう。
その後佐田玄一郎元行政改革担当や「何とか還元水」の自殺した松岡元農水相や同じく元農水相の赤城徳彦のように自らの政治資金団体に多額の光熱費を付け替えたり架空計上するといった「偽装」が明るみに出た。
このような「偽装」防止を目的に2007年に資金管理団体による不動産取得の禁止や資金管理団体の収支報告義務の強化を内容とした改正を行わなければならなかった。だが2008年に国会議員関係政治団体に関して、1円以上の領収書公開や第三者による監査義務付けを柱とした2009年分の収支報告書から適用の改正を行うこととなったのも、様々な「偽装」を用いた政治家の不透明なカネの流れが後を絶たなかったからだろう。
最近では福田改造内閣で農水相に任命された太田誠一の政治団体「太田誠一代議士を育てる会」が秘書官の自宅を「主たる事務所」として届けて2000~2002年、2005、2006年に亘って合計で5千万円近い経常経費を計上していて、そのことが今年8月に判明、活動実態がないことの指摘を受けて問題となったが、「政治資金規正法」という法律に反する「架空計上」や「経費の付け替え」といった「偽装」の存在を疑わざるを得ないからだろう。
「太田誠一代議士を育てる会」は2005、06年だけで1千万円にも上る人件費に関して給料の受取りを示す受領伝票を作成してなかった。(「時事通信」)
不正行為を予測してどのように法律を厳しくしたとしても、政治家のカネの不透明な流れは規制の網をかい潜ってその流れを止めることはあるまい。
とは言っても、「偽装を招く招く恐れがある」から、「政治資金規正法」は作る必要はない、反対だとは言えまい。これまでと同様に「偽装」が発覚したとき、それが既成の法律で規制できれば規制する、新手の「偽装」で法律で規制しきれない場合は法律を改正して対処するしかないだろう。また罰則も厳しくしていく。それが法律の宿命でもある。
太田誠一は事務所費疑惑はうまく逃れることができたが、誰もが承知しているように中国産冷凍餃子の中毒事件で「日本は安全なんだけど消費者、国民がやかましいから(安全対策を)徹底していく」、あるいはいわゆる汚染米流通問題で「(流通した事故米の残留農薬)濃度は(中毒事件が起きた)中国製ギョーザの60万分の1の低濃度。人体に影響は無いということは自信を持って申し上げられる。だからあまりじたばた騒いでいない」(08年9月12日NHK「日曜討論」)と食用として市場に流通した・させた農水省の杜撰・無責任な危機管理体制を棚上げにした無神経な発言の責任を取って選挙で戦えないという理由で詰腹を切らされて目出度く9月に辞任させられている。
道路交通法で酒酔い運転に対して厳しい罰則を設けても、酒を飲んだまま隠れて車を運転する「偽装」はなくならない。最初に言ったように「偽装」は人間営為のすべてに付き纏うからだ。酒酔い運転を取締る側の「警視」の地位にある警察官が酒酔い運転で当て逃げした上に自損事故を起こして仲間の警察に逮捕される、「泥棒を捕らえてみれば我が子なり」に似た場面を生じせしめたのはつい先頃の11月17日のことである。
もし事故を起こさず、検問にも引っかからなければ、善良な市民、優秀な警視として「偽装」した生活を送るのだろう。
さらに例を挙げるなら、民主党の前田雄吉衆院議員がマルチ商法企業から政治献金を受けて企業擁護の質問をしていたことが明らかになり、責任を取って民主党を離党しているが、自民党所属の野田聖子消費者行政担当相もマルチ商法企業にパーティー券を購入してもらっていて、業界擁護の国会質問をしている。
これらにしても国民に対して国会議員としてあるべきでない姿を隠して、日常普段から国会議員でございます、これがあるべき姿ですと顔を曝す「偽装」を犯していたと言えるだろう。
かくかようになくそうとしてもなくならない人間営為のすべてに付き纏う「偽装」である以上、「偽装認知による国籍売買を招く恐れがある」ことを理由とした「採決延期」は正当性を失う。
大体が「偽装認知」ではないが、日本が経済大国の名乗りを上げたときから貧しい東南アジアの国々発の偽装結婚を手口とした「国籍売買」(国籍取得)は始まっていることで、最近でも長期在留資格取得目的の偽装結婚が露見して逮捕される例が跡を絶たない。
08年7月11日の「YOMIURI ONLINE」によると、結婚相談所を経営する50歳の女が韓国のキリスト教宣教師の資格を利用してホームレス対象の炊き出しなどに参加してはホームレスの中から夫役を探し、約20年前から約300組の韓国女性等との偽装結婚を手掛け、約3億円を得ていたとみられる疑いで起訴されている。
こういったことは断るまでもなく一人の女性のみの犯罪ではなく、その他暴力団等も含めて合法的に外国人女性を風俗店等で働かせてカネを得るため、さらに偽装結婚の紹介料でもカネを得るための利潤行為で行っていることであって、その全体数は相当な規模に上るに違いない。
中国人の女性が同じ中国人の男との間にできた子供を出産する直前に日本人を夫とした偽の婚姻届を出して、子供に日本国籍を取得させていたとして今年10月に逮捕・起訴された例もある(「47NEWS」)。
例えそれが偽装結婚でも、1年間程度結婚生活の実態を演じて、念には念を入れて偽装結婚と露見させずに済ませている外国人女性も存在するかもしれない。
実際に「偽装認知による国籍売買」が存在したとしても、父親の認知を受けながら父親と同じ国籍を認められない子供たちの「不利益」をなくすことを何よりも最優先させなければならないように思えるが、どうだろうか。どちらをプラスとし、どちらをマイナスとするかである。プラスとした方が遥かに価値を持つとしたなら、少々のマイナスは発覚した時点で法律で罰するしかないだろう。
ところが「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」は子供たちの利益をプラスとはせず、「偽装認知」の防止をプラスとして、そこに遥かに多くの価値を置こうとしている。
果して「偽装認知」が真の反対理由なのだろうか。それを解くカギが会の発起人代表の平沼赳夫元経済産業相の政治的立場であろう。
<会合には議員本人14人を含む38人が出席。平沼氏が「男性が証拠もなく認知をすると日本国籍が獲得できる、むちゃくちゃな歯止めのない法律だ」と指摘した。出席者からDNA鑑定義務化や偽装認知の罰則強化を求める声が相次いだ。>≪「偽装認知の危険あり」 国籍法改正案に反対の議連結成≫「msn産経」/2008.11.17 22:14 )ということだが、平沼は元々から日本民族優越主義者であり、天皇崇拝者であって、実際は日本人の血に特にアジア系やその他の有色人種の血が混じって、日本人の純粋だと思っている血が汚れることを嫌悪する立場にいる。
わざわざ証拠を挙げるまでもなく、多くの人間が平沼が日本民族優越主義者であり、天皇崇拝者であることを既成事実としているが、確認のために改めて平沼赳夫なる政治家の日本民族優越者振り、天皇主義者振りを書き記すことにする。
皇太子夫妻に男子が生まれず、秋篠宮夫妻も女子ばかりの子で、皇位継承の問題が世間の関心を呼んでいたことを受けた世論調査といったところだったのだろう、女性天皇を容認する日本人が92年の3割強だったのが99年の半数、03年には4分の3を超える社会的な皇室意識のもと、当時の小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が議題に皇位継承権を女性に広げ、女性天皇の子供が皇位を継ぐ「女系」を認めるか否か、あるいは皇位継承の順位、結婚した女性家族の宮家創設の範囲を検討する(以上『朝日』/05年1月26日朝刊記事)といったことを上らせてスタート。その時点で女性天皇及び女系を認める方向に進むことは予想できたことだが、そのとおりに「有識者会議」は容認を全会一致で決定し、その決定を受けて小泉首相は06年1月からの通常国会に皇室典範改正案を政府が提出する見通しであることを記者団に語った。
小泉首相自身、女性天皇及び女系を認める意思を示していた。
だがである、我が平沼赳夫はというと、「仮に愛子様が留学なさって、青い目の男性と恋に落ち、そのお子様が天皇になられることは断じてあってはならない」と女性天皇にも女系にも断固反対の姿勢を示した。
平沼は女性天皇及び女系に反対しただけではなく、その反対理由に「青い目」を持ち出したのは女系皇族の血に外国人の血が混じることは許せない、純粋に日本人の血を守らなければならないと考えたからだろう。そのように考えた程にも日本人の血、特に皇族の血を優秀だと見ていたのである。
このことは2001年7月2日、経済産業大臣在任中、札幌市内で開かれた自民党中川義雄参院議員のセミナーで発言した「小さな国土に1億2600万人のレベルの高い単一民族できちんとしまっている国。日本が世界に冠たるもの」(「単一民族国家-Wikipedia」)だと日本民族を価値づけたことが証明している。
日本民族が「単一民族」であると誇ることは、そのこと自体が既に自民族優越意識の表明以外の何ものでもないが、平沼のこの言葉を裏返すと、「小さな国土に1億2600万人のレベルの高い単一民族できちんとしまっている世界に冠たる日本」を崩すわけにはいかないと言うことになる。
その答は当然のこととして他民族は入れない、入れたくない、日本人だけの単一民族で日本を守りたいということに尽きる。
言い換えると、単一民族意識とは日本人が日本人であることを守るということである。その唯一の理由は日本民族を優秀民族と把えているからに他ならない。このことから「単一民族」であると誇ること自体が既に日本民族優越意識の現われとなる。単一民族意識=日本民族優越意識=日本民族無誤謬意識=他民族排斥意識という等式が成り立つはずである。
確認のために「冠」(かん)なる言葉の意味を『大辞林』(三省堂)で見てみると、「最も優れているさま。最高と認められるさま」と出ている。狭い国土に単一民族で固まり、結束している。レベルが高いからこそ可能としている世界に誇ることができる日本の優秀・最高の民族性だというわけである。
女性天皇・女系容認の流れは2006年2月、「皇室典範改正法」を3月に国会に提出しようとする矢先に秋篠宮の妻紀子懐妊が報じられると、今国会で改正する意向を言明していた小泉首相は、「誰もが改正が望ましいという形で成立するのが望ましい。慎重に審議することによって、政争の具にしないように慎重に取り運んでいきたい」(≪皇室典範改正案、今国会の提出見送りか≫「日刊スポーツ」/2006/2/8/16:20)とし、結局見送りとなった。
秋篠宮妃紀子の懐妊を受け、秋の出産まで改正論議を凍結すべきだとの声が強まったことに配慮した(同記事)ということだが、9月の男子出産を以って皇室典範改正案の国会提出が見送られ、反対派の胸を撫でおろさせることとなった。
女性天皇・女系容認意識は男子継承者の出現によって敢え無く潰えさる程度の淡いものだったことになる。そのこと以来、女性天皇と言う言葉も女系と言う言葉も音沙汰なしと言っていい程に耳にしない。
尤も皇太子妃雅子からしたら、自分が果たせない男子出産に少なからず心穏やかなものを感じたかもしれないが、娘愛子のためにはほっとしたのではないだろうか。元外交官である彼女が籠の鳥から解放されてかつてのように世界を飛び回りたい衝動を抑えているとしたら、娘に同じ籠の鳥を運命づけたくないと思っているかもしれないからだ。
安倍晋三は首相時代、2007年1月に日系のマイク・ホンダ下院議員が日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議案を米下院に提出、3月1日に河野談話に関するマスコミの質問に「旧日本軍の強制性を裏付ける証言は存在していない」と、軍の直接的な関与を否定。
当時の外相麻生太郎は決議案提出に「客観的事実に全く基づいてなく、甚だ遺憾だ」と述べている。麻生太郎の漢字の読み違えは今始まった問題ではないだろうから、当時からも間違えはあったと思われるが、その当時は漢字の読み間違えについて報道されることはなかったようだ。
結局米下院は07年7月30日の本会議で法的拘束力はないものの日本政府に公式謝罪を求める従軍慰安婦問題に関する対日非難決議案を採択した。
但し決議阻止に向けて我が平沼赳夫も活躍している。採択される2週間程前の7月14日付の米紙ワシントン・ポストに「日本軍によって女性が強制的に慰安婦にされたことを示す歴史的な文書は存在しない」と全面広告した賛同者の一人に名前を連ねていたのである(「YOMIURI ONLINE」)。
これは日本民族優越意識がそう仕向けることとなっている、優秀な民族だから間違いを犯すはずはない、間違いなど認めることはできないとする日本民族無誤謬説に平沼が従来からかぶれていたことから生じさせた従軍慰安婦の全面否定であろう。
「うちの子供に限って」を日本民族に変えただけのことだが、イワシの頭も信心から、単一民族意識=日本民族優越意識=日本民族無誤謬意識=他民族排斥意識という等式を常なる情動として抱えているのである。「国籍法改正案」反対意志がウソの認知で国籍を取得する偽装認知の広がりを恐れるというのは見せかけと断ぜざるを得ず、外国人の血が日本という優秀な国に混じって優秀でなくすることを少しでも防ぎたい一心からなのは、「小さな国土に1億2600万人のレベルの高い単一民族できちんとしまっている国。日本が世界に冠たるもの」という言葉自体が証明している。
優秀であるかどうかは民族性によって決まる価値観ではなく、個人性を要件として決定づける価値観であることを忘れてはならない。いつも言うことだが、政治家を見れは簡単に了解できる事柄であろう。歴代の天皇の中にもごくごくつまらない天皇もいたに違いない。
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