元反天皇主義者菅首相の現天皇主義者平沼赳夫への奇妙な抱きつき

2010-12-25 07:00:36 | Weblog


 昨夜のNHKニュースが次のことを伝えていた。菅首相が先月11月18日と今月12月4日(2010年)、総理大臣公邸や都内のホテルで「たちあがれ日本」の与謝野共同代表と会談して連立政権への参加を打診、拉致問題の解決を目的に平沼代表ら党幹部の入閣を要請したと。

 最初に抱いた印象は奇妙な組み合わせだな、だった。元反天皇主義者の菅首相の天皇主義者平沼赳夫への抱きつきである。菅首相が全共闘世代の元学生運動家だったと知っている者にとってはこの抱きつきに大方が奇妙に思ったのではないだろうか。

 菅直人が元反天皇主義者だからと言って、現在天皇主義者に転向したのかどうかは分からない。過去と現在の立場や責任の違いを口実に態度変節の転向を平気で繰返す日和見主義者・ご都合主義者だから、反天皇主義を投げ捨てたのか、単に天皇制に拒絶感をなくしたのか、腹の底深くに反天皇主義の炎を僅かに残しているのかは探りようがない。

 天皇主義者に転向したと言うなら、平沼赳夫への抱きつきは奇妙な現象ではなくなるが、天皇主義者にまで行き着く無節操そのものの転向を見せているとは思えない。

 いずれにしても学生運動華やかし頃、東工大で、どの辺に位置していたのか、学生運動を行っていた全共闘世代の一人だった。

 尤も学生運動出身者だからと言って、首相になって悪いと言うことではない。「政治は結果責任」である。結果を残す資質と才能さえあれが、誰にだって首相になる資格はある。はるな愛にだってある。

 《たちあがれ日本に連立を打診》NHK/2010年12月24日 19時30分)

 菅総理大臣の直々の連立打診後、自分だけの申入れでは心もとないと思ったのか、岡田幹事長が22日、都内のホテルで平沼・与謝野両氏と会談。今後の政権運営について協力を要請したという。

 “どっこいしょ ”たちあがれ 日本内では賛否両論があると記事は書いている。

 賛成:社会保障と税制の一体改革や保守の再生などの結党の精神が尊重されるのであれば、前向きに検討すべきだという意見。

 反対:先の参議院選挙や臨時国会で、野党の立場から菅政権を追及してきたことを考えると、支持者への説明がつかないとする意見。

 今朝のMY Twitter

 菅首相の“どっこいしょ たちあがれ日本”への連立打診は政策ごとに話し合って決めると散々言っていた「熟議」を投げ捨て、数合わせに走る方向転換。既に社民党福島党首と会談して協力を要請した時点で数合わせに走っていた。

 そこに政策調整があったとしても、「熟議」よりも頭数を優先させる動きであることに変わりはないはずである。なぜなら、「熟議」は例え一部の党、あるいは単独の党との間の成立であっても、初期的には野党全体を対象とした協議のことを言うはずだからだ。

 “どっこいしょ ”たちあがれ 日本の勢力図。衆議院議員3人、参議院議員3人。

 記事は最後にこの打診を解説している。〈菅総理大臣が、この時期に連立政権への参加を打診した背景には、衆議院と参議院で多数派が異なる「ねじれ」の状況で、来年の通常国会でも厳しい政権運営が予想されるなかで、政権基盤の安定に向けて、野党側の勢力を一部でも切り崩し、連立の枠組みを広げたいというねらいがあるものとみられます。〉――

 熟議排除の数合わせだということである。

 平沼赳夫について「Wikipedia」は次のように書いている。〈皇室への尊崇の念はとりわけ強いもので、本来反天皇論者の言葉であるとして天皇制という言葉は口にせず、必ず「御皇室」という言葉を口にする。〉――

 コチコチの天皇主義者だと言っている。この天皇主義が言わしめた、その反映としての2006年2月の、例の有名となった発言なのだろう。当時皇太子妃雅子は病気による次子出産の希望が薄れたことで女性天皇、あるいは女系天皇の可否の議論が沸き起こっていたが、2006年2月の秋篠宮妃紀子の妊娠、検査で男子と分かった頃と同じ時期の発言である。

 平沼赳夫「愛子さまが天皇になることになって、海外留学して青い目の外人ボーイフレンドと結婚すれば、その子供が将来の天皇になる。そんなことは許されない」
 
 2006年2月8日の「asahi.com」記事は「そんなことは許されない」が「断じてあってはならない」と、より強い口調で紹介している。

 万世一系の血に拘り、万世一系の血に絶対的価値を置く。それ程までの天皇主義者であることを証明する発言となっている。この天皇主義は「青い目の外人ボーイフレンド」を排斥する意識から人種差別主義を抱き合わせていることを自ずから炙り出している。

 人種差別主義者であることをあらわにした発言。《2001年版「アイヌ民族は同化していなくなった」という発言に関するアイヌ・ウィルタ民族からの抗議文・質問書など》から参考引用――

 平沼赳夫「(日本は)小さな国土に、1億2600万人のレベルの高い単一民族でぴちっと詰まっている」(札幌市内で開かれた中川昭一参議院議員(自民党)の「政経セミナー」)

 紀子妊娠以後、女性天皇、あるいは女系天皇議論は急速に沙汰止みとなっていった。

 平沼赳夫の人種差別意識は2009年11月13日の民主党事業仕分けでの蓮舫議員の「スパコンは世界一になる理由は何があるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか」の発言に対する批判にも現れている。

 平沼赳夫「言った本人は元々日本人じゃない。キャンペーンガールだった女性が帰化して日本の国会議員になって、事業仕分けでそんなことを言っている。そんな政治でいいのか」(Wikipedia

 人種差別批判に対して反論している。

 平沼赳夫「テレビ受けするセンセーショナルな政治は駄目だということ。彼女は日本国籍を取っており人種差別ではない」(同Wikipedia

 いくら蓮舫議員が現在日本国籍取得者であるからと言っても、「言った本人は元々日本人じゃない」と民族レベルで人間存在を否定する認識自体が、そう言うこと自体が既に人種差別となっている。さらに 「キャンペーンガールだった女性が帰化して日本の国会議員になって」には職業差別、職業蔑視の意識が否応のなしに浮かび上がってくる。

 人種差別と職業差別は同じ権威主義を母親とした双子の関係にある。人種であっても民族であっても、職業であっても家柄であっても、何事もそこに優劣のモノサシを置いて、その優劣で以て人間の価値までも測るからだ。人種・民族の優劣に人間の優劣を一致させ、職業の優劣に人間の優劣を一致させ、家柄の優劣に人間の優劣を一致させる。

 元反天皇主義者菅首相の“どっこいしょ ”たちあがれ 日本の天皇主義者、人種差別主義者平沼赳夫への数合わせのための抱きつきは数合わせが主眼であるゆえに平沼の天皇主義、人種差別主義を無視した、あるいは見て見ぬ振りをした抱きつきということなのだろう。例え第三者から見た場合、奇妙な印象を奇妙な印象のままに置き去りにすることになったとしても、菅首相にとっては取るに足らない事柄に違いない。


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