昨25日、民主党最大支援組織である連合古賀会長取り持ちの挙党態勢の構築を求める会合が菅首相、小沢元代表、鳩山前首相、輿石参議院議員会長、岡田幹事長等が出席して行われたが、それを扱った「NHK」記事の中の岡田幹事長の発言が菅首相擁護一辺倒の愚しい指導者論となっていた。
先ずは「NHK」記事――《菅首相と小沢元代表らが会合》2010年12月25日 16時33分) からどういった会談だったか見てみる。
古賀会長「政権交代は実現したが、国民の目線は非常に厳しい。党の一致結束が必要で、党幹部が腹を割って意見交換してほしい」
そのほか、〈連合側から、来年の統一地方選挙に向けた危機感の表明や、党の結束を求める意見が相次〉いだと書いてある。
菅首相(来年度予算案を説明した上で)「これからは政策を推進して国民の信頼を得ていきたい。いろいろ前進してはいるが、十分アピールできておらず、今後、情報発信していきたい」
相変わらず合理的認識性を欠いている。一国の首相として存在しているだけで常にマスメディアの情報発信の対象となり、マスメディアを通して直接的・間接的に常時情報発信しているのであって、今後の課題とすること自体が洞察性を欠いていることになる。
菅首相は「1に雇用、2に雇用、3に雇用」と雇用創出・雇用拡大の重要性を訴えてきた。しかし大学生・高校生の就職率は悪化状況にあり失業率も改善されていない。菅首相としたら菅政権発足から半年しか経過していない、仮免許の状態だったと言っているが、不況時代に於いては雇用確保・雇用創出、いわば景気回復はいずれの政権にとっても喫緊最大の政策としなければならない課題であって、菅内閣だけの問題ではなく、前自民党政権にとっても、また鳩山前政権にとっても喫緊最大の政策であったはずだから、民主党政権の課題として自民党政権から問題点を鳩山前政権が受け継ぎ、さらに民主党政権に一貫した課題として菅政権がバトンタッチして1年以上経過しているのだから、菅政権発足後半年しか経過していないと言う弁解は成り立たつはずはなく、何らかの改善を実現させる責任があるはずだが、それを「これまでは仮免許」だったと言い逃れる感覚は首相とは言えない責任回避となっている。
「十分アピールできておらず、今後、情報発信していきたい」は自分だけが言っていることであって、菅首相は雇用情勢に関して見るべき改善はできていないという「情報発信」を行い、現在の状況に至っているのである。
参考までに次の雇用調査を挙げておく。
「労働力調査(基本集計) 平成22年10月分(速報)結果」
●10月の就業者数は6286万人と1年前に比べ15万人増加
就業者数は2か月連続の増加
主な産業別就業者数は,1年前に比べ「医療,福祉」などが増加
(主な産業別就業者数及び1年間の増減数)
医療,福祉・・・・・・・・ 676万人と,46万人増加
宿泊業,飲食サービス業・・ 390万人と,11万人増加
卸売業,小売業・・・・・・ 1055万人と,9万人増加
製造業・・・・・・・・・・ 1057万人と,7万人増加
サービス業(他に分類されないもの)・・ 469万人と,1年前と同数
建設業・・・・・・・・・・ 493万人と,23万人減少
●10月の完全失業者数は334万人と1年前に比べ10万人減少
完全失業者数は5か月連続の減少
●10月の完全失業率(季節調整値)は5.1%となり,前月に比べ0.1ポイント上昇 |
15万人増が民主党政権の努力の跡であるが、財政出動を受けた住宅エコポイントや家電エコポイント、そしてエコカー減税とその終了等の状況下での完全失業率が前月比0・1ポイント増加と最大の増加雇用先が医療・福祉関係の46万人であることから考えると、雇用全体の決定的な増加と言うよりも、財政支援に依存した見せ掛けの増加と人余りの場所から人手不足の場所に流れていった、いわば平均化の傾向を伴った15万人増であろう。
就業者数増加最大の医療・福祉関係で福祉分野は特に政府の財政支援に頼った人件費の確保下にある。これが国民負担に回った場合、逆に消費抑制につながらない保証はない。
小沢元代表「国民の期待に応えられておらず、不徳を恥じている。来年の通常国会や統一地方選挙に向けて、菅総理大臣を筆頭に頑張らなければならない。政権交代できたのは、みんなの気持ちが一つになったからで、それが大切だ。民主党政権の一員として、政策の実現に頑張りたい」
鳩山前首相「小沢氏は政権交代の立て役者であり、政治倫理審査会に出す出さないといった問題を乗り越えて、挙党態勢を築くべきだ」
記事は、〈小沢氏の国会招致を巡る具体的な議論には至〉らなかったと書いている。
この会談について野田財務相と出席した岡田幹事長の二人が感想発言を行っている。
野田財務相「いろんなものを乗り越えて党内が固まっていかないといけない。菅総理大臣と小沢元代表が複数回会うということは、お互い求めていることだと思うので、何とか結論を出してほしい。私は小沢元代表が政治倫理審査会に出た方が、国会対策上だけでなくて、ご本人のためにもいいのではないかと思う。ただ、これは本人しだいなので、意見交換の中で、その辺をちゃんとうまく、小沢元代表がすとんと心に落ちるように、執行部は説明したほうがいい」
菅首相の方は小沢元代表を求めてはいないはずだ。排除して、自身の指導力を自由に発揮したいと思っているだろう。だが、排除に成功したとしても、元々指導力を欠いている人間に指導力の発揮は望むことはできない。
岡田幹事長の場合は三重県川越町での記者会見の発言を伝えている。
岡田幹事長(25日の会合について)「どういう経緯で行われたのかよく分からない。民主党と連合が話し合う場であればそれでいいが、メンバーがどういう基準で選ばれたのかもよく分からない。ただ、それぞれから、お話を聞けたことはよかったと思う」
会合に出席していたのだから、「どういう経緯で行われたのか」、「メンバーがどういう基準で選ばれたのか」、聞き質せばよかったのではないのか。
岡田幹事長「代表選挙で選んだ菅総理大臣の下で、しっかり一致結束していくことが本当の意味での挙党態勢だ。『今は挙党態勢ができていない』と連合から指摘を受けたのは、それが貫徹されていないからではないか。国民は、民主党は本当に一本なのかと心配している」――
現在の民主党の混乱状況を述べた発言だが、これが菅首相擁護一辺倒の愚かしい指導者論となっている。
「NHK」の動画では少し発言が違っている。
岡田幹事長「代表選挙で、サポーターも参加して、菅、代表、総理を選んだわけです。選んだ総理の元でしっかり一致結束していくと、いうのが本当の意味での挙党態勢であると。今、挙党態勢できていないというふうに連合の皆さんから、アー、それぞれご指摘を受けたと、いうことは、まあ、そのことが貫徹されていないと、いうことではないかと――」
「代表選挙で、サポーターも参加して、菅、代表、総理を選んだ」のだから、「選んだ総理の元でしっかり一致結束していくと、いうのが本当の意味での挙党態勢」だと言っている。
これは選挙での選択を理由に一致結束を周囲に求めている発言であって、その選択を受けて党及び内閣に於ける指導者の地位に就いた菅代表・首相には求めてはいない発言となっている。
だが、周囲に一致団結を求める前に指導者自らが一致団結を作り出すことが指導者に求められるリーダーシップであるはずである。その能力があるかないかで指導者としてのリーダーシップの真価が決まってくる。
組織の一致団結を作り出すことができない指導者、リーダーシップということは考えられない。裏返して言うと、指導者の属性としなければならない一致団結能力、あるいは挙党態勢能力、求心能力ということになる。
岡田幹事長は一致団結を周囲に求めるだけではなく、それ以上に菅首相自身に求めなければならなかった。勿論、岡田幹事長は幹事長として自身も組織の一致団結を図る役目を担っているはずだから、その責任も果たさなければならない。
岡田発言には菅首相自身の指導者としての一致団結に向けた責任と自身の役目上の責任への言及がすぽっと抜けている点、二重に愚かしい指導者論になっていると言える。
周囲にのみ一致団結を求めても、無能なリーダーなら、一致団結を作り出せないのだから、無能なリーダーが作り出した不一致団結となって、やはり指導者のリーダーシップにかかってくる
菅首相を党員、サポーター、国会議員が選んだにしても、多くが世論の影響を受けて、菅首相に一票を投じたはずだ。特にサポーター、党員はその影響をより強く受け、サポーター、党員の世論に影響を受けた動向に地方議員も影響を受けた投票動向だったはずである。
2010年9月民主党代表選前の朝日新聞が8月7、8日に実施した全国世論調査を改めて見てみる。
《朝日新聞社全国世論調査》
◆菅内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 37(37)
支持しない 43(46)
◇支持・不支持の理由(選択肢から一つ選ぶ=択一)
支持する
首相が菅さん 17
民主党中心の内閣 41
政策の面 20
実行力の面 9
支持しない
首相が菅さん 2
民主党中心の内閣 16
政策の面 30
実行力の面 49
◇続投
続けた方がよい 56
交代した方がよい 27
◆菅首相は、小沢一郎さんと距離をおいた方がよいと思いますか。連携した方がよいと思いますか。
距離をおいた方がよい 69
連携した方がよい 16
◆小沢さんが民主党内で影響力を強めることは、好ましいと思いますか。好ましくないと思いますか。
好ましい 10
好ましくない 78 |
菅内閣を支持しないが6ポイント上回っていながら、小沢氏と距離を置くべきだ、影響力が強まることは好ましくないの世論の後押しを受けたサポーター票、党員票、地方議員票で小沢元代表を圧倒的に上回った。いわば世論が選ばさせしめた要素が大分ある当選のはずである。もし選んだときの状況のままに一致結束して菅首相を支えなければならないと言うなら、世論にしても現在菅首相を支持している状況になっていなければならないことになる。岡田幹事長の言葉で説明してみる。
「世論は代表選挙で、菅、代表、総理を選んだわけです。世論は選んだ総理の元でしっかり一致結束していくと、いうのが本当の意味での挙党態勢維持の基本になるのです」――
だが、このようなことを求めるのは無理難題・不可能であって、見てのご覧の通り現在の世論はまるきり逆の方向に向いている。菅直人を民主党代表に選び、首相の座に推し進めたときの世論自体が既に破綻している。世論の影響を受けて菅首相に一票を投じたサポーター、党員、地方議員は投じたことを後悔している者も大分いるに違いない。来春に統一地方選を控えて菅首相では戦えないという声が地方で高まっていることがこのことを証明している。
勿論、世論が間違っていたわけではない。菅政権発足以来、菅首相の党運営、政権運営を見て、岩がそれらの情報発信を受けて態度を改めたに過ぎない。
疑問は小沢氏に対するアレルギーを変えない点にある。
世論の破綻は岡田幹事長の発言自体が既に矛盾を来たし、破綻していることをも証明するはずである。民主党議員にしても菅首相の党運営、政権運営を見て、態度を変えざるを得なかったことからの不一致団結、挙党不一致であるだろうからである。l
菅首相が組織の一致妥結に関して自ら行ったことは小沢排除であった。誰かを排除することで一致団結、挙党態勢を図ること自体が自己矛盾でしかないが、代表選での菅首相支持要素が指導力や政策からではなく、首相がコロコロ変わるのは良くないということと小沢アレルギーといった消極的選択であった成功体験に縋ったのだろう、だが、小沢排除によって得た成果は今日のゴタゴタであった。
にも関わらず、危険水域を越えた低支持率を修復したいがためになお小沢排除の成功体験に縋っている。例え小沢排除の有力な機会となる国会招致に成功したとしても、それで菅首相の指導力が解決するはずもなく、党運営、政策運営にしても好転するとは思えない。
小沢排除が前原や仙谷の指示・命令で行ったことであったとしても、部下の地位にあるメンバーに指示・命令を受けてその言いなりになること自体が既に指導力の欠如を証明して余りある。
菅首相擁護一辺倒の愚かしい指導者論しか振り回すことができない岡田幹事長はリーダーシップもない、愚かしいばかりの菅首相あっての岡田幹事長ありといったところに違いない。
一人の指導者の周りには似た才能の者が集まるということである。類は友を呼ぶ。
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