「信念」を持っていない男が「信念を持って乗り切っていく」と言うことの矛盾

2010-06-01 06:21:08 | Weblog

 民主党は参院選勝利に向けて鳩山首相を“罷免”しよう!!

 昨31日朝、首相が起き出して首相公邸から出てくるのを待ち構えていたのだろう、早々にマイクを向けて、何人かいた記者の中から女性記者が質問した。《首相“信念をもって頑張る”》NHK/10年5月31日 9時52分)(動画から)

 女性記者「社民党が連立離脱を決定しましたが、支持率が低迷する中、総理は進退を含めて、今後どのように対応していくおつもりでしょうか?」

鳩山首相「社民党さん、残念ながら、政権離脱ということになりました。まあ、安全保障に関する基本的な、考えが、残念ながら合わない、ということで、大変、残念に思っています。

 やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません。やはり国民のみなさんのために、しっかりした政治を取り戻していくと、いうことで、頑張ると。この一点であります」

 一礼して、車に乗り込んだ。

 「国外、最低でも県外」の“信念”を早々に放棄し、それを見せかけの“信念”に変えた男が、「やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません」と力強く宣言する。

 「辺野古の海を埋め立てることは自然への冒涜だ」と、辺野古拒絶の“信念”を一夜にしてと言っていい程の早さで投げ捨て、それを風に吹かれた一枚の鳥の羽のように風に舞う“信念”に変えた男が、「やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません」と、“信念”を振り回す。

 「5月末決着」の最後の“信念”を体裁づけるべく、地元・連立内閣・日米の三者合意を投げ捨て、日米合意のみを掲げて「5月末決着」だと取り繕う“信念”もへったくれもない男が「やはり、ここは信念を持って、乗り切っていくしかありません」と、“信念”を拠り所とする。

 これまで「しっかりした政治」を行ってこなかった、その能力がなかった。だから、「しっかりした政治を取り戻していく」という経過を踏むことになるのだが、「しっかりした政治」を行う能力のなかった男が、どう「取り戻していく」というのだろうか。

 引き続いての政権運営の口実に「国民のみなさんのために」を根拠とすること自体が恩着せがましいばかりである。国民は「国民のみなさんのため」の政治となっていないと見て、世論調査を通して最低評価しているのである。「国民のみなさんのため」の政治となっていないにも関わらず、「国民のみなさんのために」を政権運営の根拠とする。疎ましいばかりの奇麗事の矛盾となっている。

 政府は“沖縄負担パッケージ軽減論”を振りかざして、「国外、最低でも県外」から辺野古県内移設を正当化しようとしている。これまでブログに何度も書いてきたが、普天間基地移設分に関しては「国外、最低でも県外」なら負担ゼロとなるが、パッケージ軽減なら、負担はゼロからプラスに向かう。沖縄全体として見ても、辺野古に残った分とパッケージ軽減との差引きで政府はマイナスを保証できるというのだろうか。

 平野官房長官が31日午前の記者会見で、やはり“パッケージ軽減論”を振りかざして、辺野古移設の日米合意を正当化している。《官房長官 鳩山政権で参院選を》NHK/10年5月31日 14時7分)

 平野「日米の信頼関係を構築するとともに、沖縄県民の負担はパッケージとして軽減されると思っており、今回の政府方針の決断はやむをえなかった。ただ、社民党の連立政権離脱に至ったことはきわめて残念だ。離脱に伴う影響は当然あると思う」

 「政策について社民党と合意している項目もあり、これは政府としてもしっかりやらなければならない。選挙協力についても、党と社民党との間で詰めているが、今までの流れも含めて理解を頂き、なんとしても協力関係を維持してもらいたい」

 「当然、責任者だから、鳩山総理大臣の結果責任はあると思う。評価が厳しいのは事実だが、鳩山総理大臣としても、そのことは謙虚に受け止め、全力で国民の理解を得て参議院選挙を戦うべきだというのが、現実の認識だと思う」

 辺野古移設、日米合意、政府方針の閣議署名、社民党党首の署名拒否、罷免、連立離脱の経緯と、そして来る支持率低下状況下の参院選を見据えた当面の方策を述べている。

 だが、「asahi.com」記事――《嘉手納の騒音被害、過去5年で最多 移転で負担減に疑問》(2010年5月25日3時1分)は“沖縄負担パッケージ軽減論”を怪しいとする情報となっている。

 〈騒音を減らすために米軍機の訓練の一部を本土の基地に振り分けている沖縄県の米軍嘉手納基地周辺で、昨年度の騒音発生回数が過去5年で最多〉であり、〈基地周辺に設置された測定装置で、不快に感じる70デシベル以上の騒音発生回数〉のうち、〈09年度中、月別で多かったのは今年3月(4627回)と昨年6月(4217回)〉であった理由を地元の嘉手納町の担当者の発言で伝えている。

 「両月に騒音が多く発生したのは、本来の所属機以外の航空機が多く来ていたことが原因。特にF22がいた間は、F22と一緒に訓練するために国内外から来る航空機が多かった」

 日米両政府は2006年に嘉手納基地での米軍機の訓練の一部を本土の空自基地に移すことに合意したものの、〈「嘉手納には戦闘機や空中給油機など所属機が100機もあ>り、〈5機程度が移転したぐらいでは騒音を減らす効果はない」(嘉手納町議)〉延べ10回という小規模移転にとどまったことと、〈訓練移転で出て行く飛行機より、国内外の他基地から訪れる「外来機」が多いこと〉が原因した騒音の増加だと書いている。

 このことを踏まえて、鳩山政権は、〈外来機の訓練の場も本土の基地に移すことで、地元の負担軽減を図る方針〉を掲げているそうだが、米軍の運用に詳しい防衛省幹部の、このことに疑問を投げかける発言を記事は伝えている。

 「訓練の場所や内容は運用上の観点から専権的に決めるというのが米軍の立場。日本の要望が受け入れられる保証は全くない。効果の限定的な訓練移転を『負担軽減策』と称して普天間の県内移設を進める材料にしようとするのは、まやかしと言われても仕方がない」――

 例え外来機の訓練の場を本土に移したとしても、沖縄の基地に抑止力としての機能を一部でも残していたなら、沖縄でも外の基地と併せた訓練が必要となって、外来機の訓練の場をすべて本土に移すことは不可能となる。

 宮城篤実・嘉手納町長「米軍は外来機がいつ飛んで来るか伝えてこないのに、どうしてそれを移転できるのか。政権はできもしないことをできるように装い、沖縄県民をだまし続けている」

 「訓練移転はこれまで何度もやったが、騒音軽減の効果は全くなかった」――

 記事は政府の“沖縄負担パッケージ軽減論”を冷笑するかのように最後に次のように書いている。

 〈政権の思惑をよそに米空軍は21日、米ニューメキシコ州の空軍基地から12機のF22を5月末から約4カ月間、嘉手納基地に暫定配備することを発表した。(土居貴輝)〉――

 訓練移転によって沖縄の負担が軽減されないということなら、〈沖縄本島周辺は広い訓練空域や、実弾を使った訓練のできる射爆撃場があって、訓練環境が恵まれている。〉ことが外来機の飛来を招いているといった事情があったとしても、それを無視して、訓練の場と共に訓練母体となるすべての基地を県外に移転するしか「負担軽減」の本質的な問題解決とはならない。

 鳩山首相は5月27日に全国知事会議を開催、“沖縄負担パッケージ軽減論”に則って訓練等の基地機能全国分散移転の受入れを出席知事に求めたが、大阪府の橋下知事以外は手を挙げなかった。

 この要請に関して全国知事会長の麻生渡福岡県知事が31日の記者会見で異の唱えたと「NHK」記事――《“訓練の内容など明確化を”》(10年5月31日 12時59分)が伝えている。

 麻生知事「鳩山総理大臣は、受け入れに協力する人は手をあげてほしいと言っていたが、冗談ではない。政府がまずアメリカ側と話し合って、どのような訓練が移転可能なのかをよく確認したうえで、実際に考えられる移転先はどういう条件の場所なのか明確にするべきだ」――

 要するに「どのような訓練が移転可能なのか」、その規模・内容とそのような訓練の受入れ可能な条件を備えた「移転先」の日米検討を最初に行った上で、条件的に受入れ可能な「移転先」自治体と、移転訓練の規模・内容が実際に受入れ可能かどうかの話し合いに持っていくのが手順ではないのかと言っている。

 その手順も踏まずに、“沖縄負担パッケージ軽減論”を振りかざして、「沖縄県民の負担はパッケージとして軽減されると思って」いると、さも確約できるかのように言っている。

 人間の生命が脳や胃や肝臓や腸、その他のすべての器官が、いわばチームとなって相互に連携・機能して有機的に統一的な活動を可能としているように、訓練も他の基地の部隊と相互にチームを組んで連携・機能して初めて一国の軍隊として有機的な統一体を成し得る。

 単一の基地に於ける単一の訓練のみでは、部隊としての独立的な機能は果たせても、軍隊としての連携的な有機的統一体は確保できない。だからこそ、〈米ニューメキシコ州の空軍基地から12機のF22を5月末から約4カ月間、嘉手納基地に暫定配備〉といった戦術的措置を必要とするのだろう。

 少なくとも、抑止力・攻撃力を含めた全体的な安全保障を損なわない範囲内の訓練の移転可能性について日米で交わした具体的な議論に基づいて、実際に議論したのかどうか分からないが、各自治体にも国民にも移転の具体像を説明していない。説明しないまま、「沖縄県民の負担はパッケージとして軽減されると思っており」とさも確実なことのように言っている。

 この説明の不在は普天間基地移設先を地元にも国民にも説明しないまま決めていった経緯と重なる。

 このように見てくると、「沖縄県民の負担はパッケージとして軽減される」は確約に見えて、正体は鳩山首相の言葉や信念が口先だけ・見せ掛けだけであることと同様に単に沖縄の反対を宥める口先だけ・見せ掛けだけの方便・口実に見えてくる。

 麻生知事は希望移転先についても言及している。

 麻生知事「まずは大阪府に示すのが筋だ。大阪府は積極的に受け入れたいと言っていたし、鳩山総理大臣も非常にありがたいと言っていた」――

 だが、この発言は一見妥当に見えるが、矛盾している。移転可能な訓練とそれを受入れ可能とする条件を備えた基地を抱える自治体の選定に向けた日米の話し合いが先だと言っている以上、大阪府内の関空、その他の空港のいずれかがその条件に当てはまる場合に於いて、大阪府がその自治体の一つということとなり、そのとき初めて「大阪府に示すのが筋」としなければならないはずだ。

 今後とも沖縄基地問題は迷走を続ける予感がする。何しろ、「信念」を持っていない男が「信念を持って乗り切っていく」と言っているだから。


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