民主党の黄門様こと渡部元衆議院副議長が29日のTBSの番組「時事放談」で鳩山首相の自発的辞任に期待したという。
《民主・渡部氏、参院選前の首相辞任望む》(TBS/10年5月29日17:24) (動画から)
――鳩山政権は辞めなくてよいのかどうか?
渡部「辛いですねえ。本人がやると言っている以上、支える側になんなくちゃなんないんだけど、ま、彼が、この国の未来・将来、国民のために決断してくれることを願っています」
《退陣公然化にも首相あくまで強気》(msn産経/2010.5.29 23:41)が渡部氏の収録後の記者団に語った発言を取り上げている。記者というのは出演した政治家の発言次第で有難いネタになるからなのか、テレビの収録が終えるのを待ち構えているようだ。
渡部「政治家・鳩山由紀夫が後の世の歴史に残る判断をしてくれることを神様に祈るような気持ちだ」
神様次第と言うことか。
29日夜、福島県会津若松市での会合。党内から公然と退陣論をぶち上げたのだから、当分はマスコミに追いかけられる羽目に立たされたということか。首相が参院選で敗北した場合は退陣は不可避として――
渡部「(後継は)菅直人副総理兼財務相、前原誠司国土交通相、岡田克也外相のうちの1人であることは間違いない」
民主党が政権を取った途端にどれも代わり映えがしなくなった面々に見える。
記事は党首が罷免された社民党の又市征治副党首の同29日、宮崎市内での講演発言も伝えている。例のツバを飛ばすような言い方で言ったに違いない。
又市「鳩山内閣はつぶれる。一昨日から民主党の中から鳩山降ろしがとうとう始まった。・・・・政治家は計算が速い。参院選で敗北して退陣するなら今のうちに退陣してもらった方がボロ負けしないですむとの動きが起きるのは当たり前だ」
対して鳩山首相は訪問先の韓国・済州島で同行記者団に対して――
鳩山首相「党内にさまざまな声があることは理解しているが、そうした人たちにも理解が得られるよう努力したい。これが私の責任だ」――
この鳩山発言は「asahi.com」記事――《参院選前の内閣改造「発想持ち合わせてない」 鳩山首相》(2010年5月29日23時24分)では次のようになっている。
鳩山「党内に様々な声があるが、自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力していく。それが私は今の立場での責任を果たすやり方だと思う」
退陣要求は、もう職務を全うすべきではない、全うするだけの能力・指導力を失っている、あるいは能力・指導力を発揮できていないという状況の提示でもあるのだから、その提示が的を得ていた場合、鳩山首相がいくら「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力し」たとしても、ムダな抵抗となる。
提示が的を得ていない場合に限って、“理解努力”は可能となる。いわば周囲の能力・指導力を失った、発揮的できていないという指摘に反して、鳩山首相が内閣を率いて政権運営を維持できる能力・指導力を十分に備えていた場合に限ってということである。
だが、「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」が何ら実効性ないことを既に何度も証明している。「沖縄の皆様方のご理解」を得ると言って沖縄を訪問して、辺野古と決めた「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」したものの、理解を得るだけの効果を何ら見い出すことができなかったし、訓練の一部徳之島移転と決めた「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」するために首相官邸に徳之島3町長を招いて会談、しかしその「ご理解」の「努力」は実を結ばなかった。
辺野古移設に反対する連立政権を組んでいる社民党の福島党首に対して、辺野古移設と決めた「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」したが、移設に関わる政府の対処方針の全閣僚の署名を経た閣議決定の場面で署名を拒否され、その結末としての罷免は首相の「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」が何ら実を結ばなかったことの何よりの証拠であろう。
大体が「国外、最低でも県外」の「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」をそもそものからして自分から放棄していることから見ても、「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力」に関しては鳩山首相は自分から自分を既に“オオカミ首相”としているのであって、もはや頭から信用できない「自分自身のとった行動に理解を願えるよう努力していく。それが私は今の立場での責任を果たすやり方だと思う」なのである。
上記「msn産経」記事の渡部氏の鳩山首相早期退陣の“神様への祈り”は「NHK」記事――《渡部氏 首相は辞任が望ましい》10年5月29日17時11分)では次のようになっている。
渡部「世論調査では、8割以上の人が『鳩山総理大臣のことは信頼できない』と言っている。鳩山総理大臣が歴史に残るような判断をしてくれることを神様に祈るような気持ちで願っている」
この際、福島瑞穂の罷免に関して次のように発言している。
渡部「福島氏は、閣僚が内閣の方針と異なる行動を行うときには事前に辞表を出すという政治のイロハのルールを無視したのであり、罷免は正しい判断だ。ただ、社民党とは普天間基地の問題だけで連立政権を組んだわけではなく、格差の是正など、今後もいっしょにやっていけるならやっていきたい」――
もし渡部恒三のこの“政治イロハルール”が正しい発言であるなら、内閣が国民が期待した「方針と異なる行動を行」った場合は、各閣僚の辞任に相当する総辞職を行い、内閣総理大臣は内閣を率いている責任者として自らの退陣を選択が“政治イロハルール”と言うことができる。
各マスコミが最新の世論調査を今日、次々と報道しているが、内閣支持率が20%を切って、17%だ、19%だと鳩山首相がこれまで取ってきた行動に対する国民の“理解”が示しているように、鳩山首相は国民が期待した「方針と異なる行動を行」っているのである。
渡部恒三の“政治イロハルール”からしたら、退陣の答しか残されていないことになる。
渡部氏の「世論調査では、8割以上の人が『鳩山総理大臣のことは信頼できない』と言っている」の発言は、国民は言動不一致を含めて、もはや鳩山首相の言葉が信用できない、言葉の信頼性を失っていると見ているとした上で、渡部氏自身も同じ評価で受け止めていること示唆した発言であろう。
福島社民党党首は鳩山首相の彼女に対する罷免措置を受けて28日に記者会見を開き、言葉の信頼性について発言している。(動画から、全発言参考引用)
《罷免をうけ福島消費者相が会見 ノーカット》(日テレNEWS24/2010年5月28日 21:31)
福島「エー、どうもお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。エー、連立政権の中で、エー、大臣として、多くの人々と、頑張ってきました。労働者派遣法の改正、エ、消費者問題、エ、消費者施策、自殺対策、子ども政策、男女共同参画などです。
しかし、社民党は、私は沖縄を裏切ることはできません。数々の犠牲を払ってきた沖縄の人たちに、これ以上の負担を、押し付けることに、加担するわけにはいきません。だから、署名をしませんでした。
12月3日、私は、この内閣が辺野古に基地を造るという、エー、決意をした場合、社民党としても、私としても、重大な決意をしなければならない思います、というふうに述べました。まさにこの内閣が日米共同声明の中で、エー、辺野古、沖縄ということを書き込み、また、閣議決定の文案でも、エー、はっきり、そのことを書き込んでいる、という状況の中でエー、そのことに、エー、署名することは、あの、できません。
エ、辺野古に基地を造らせない。それを沖縄の人たち、国民のみなさんに、約束をしてまいりました。私は言葉に責任を持つ政治家をやっていきたいと思います。だから、その言葉に従って、サインをしませんでした。
この問題には三つの大義の問題があると考えています。エ、沖縄の人と日本国民との連帯です。沖縄の人たちはもうこれ以上基地を新たに造らないで欲しいと、異議申し立てをしております。その沖縄の人たちの異議申し立てに国民はしっかり応えるべきです。辺野古に基地を造るというのは、この連帯を踏みにじるもので、沖縄の人たちの異議申し立てを踏みにじるものだと思います。
二つ目の大義、これは、国民のみなさんと日本政府との間の信頼関係です。「国外、最低でも県外」、辺野古には造らせない、という約束を、エー、色んな形でしてきたのであれば、そのことに実現すべきなのです。その国民や沖縄の人たちに対する約束を反故にするのであれば、それは日本政府と、国民との間の信頼関係は破壊をされます。
三点目の大義は、日米関係です。沖縄の人たちの同意なくして、今回日米共同声明はつくられました。そのことは日本政府も、エ、アメリカ政府も、熟知しているわけであります。地元の人たちの賛成なく、反対の中で、強行することは、日米関係も、破壊すると思っています。
三つ、第一に沖縄の人と、国民の連帯。二つ目、日本政府と国民との信頼関係。三点、日米関係の信頼関係。これが大事な大義です。これを今回の日米共同声明は、そして閣議決定は、踏みにじるものだと思います。
エー、先程、エー、言葉に、エー、ちょっとごめんなさい。鳩山総理は辺野古の、海を埋め立てるのは『自然への冒涜』だ、とおっしゃいました。その思いで、この内閣は頑張ってきたはずです。社民党も、私も、全く変わっておりません。私を罷免することは、沖縄の、沖縄を切り捨てることでございます。私を罷免することは、沖縄を切り捨てることです。私を罷免することは、国民を裏切る、ということでございます。
先程、言葉に責任を持つ政治家をやらなければならない、というふうに思いました。エー、そのことは鳩山総理にも本日しっかりと申し上げました。エー、社民党は、そのしっかり言葉に責任を持つ政治をやらなければ、存在意義はありません。エ、そして、そうでなければ日本の政治を切り拓いていけない、というふうに思っております。
私たちは、社民党は、私は、国民のみなさんに、沖縄の人たちに約束した政治をしっかり、これからもやって参ります。新しい時代を、むしろ、切り開いていきたいと思っております。今後沖縄問題の真の解決のために、沖縄の人々、国民、そして、世界中の人たちと手を結び、渾身の力を込めて、問題解決のために、これからも邁進をしてまいります。以上」――
安全保障政策の違いは横に置いておくとして、少なくとも当初示唆していた連立離脱を異論を押さえて、その方向に党を纏め上げるだけの指導力を発揮した。発揮し得たことによって、自らの行動、自らの言葉に終始一貫性を与えることができた。
「自分自身のとった行動に理解」を得ることができるもできないも、問われるのは常に指導力であり、指導力は言葉に対する責任を要件とする。言葉に責任を持ってこそ、自らの言葉への終始一貫性が保証可能となり、そのことが指導力へと結びついていく。
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