「asahi.com」によると、羽田空港国際線のゴールデンウイーク期間中(4月25日~5月6日)の出入国者数は前年比42%増の約34万1400人(速報値)にのぼったと伝えている。
対して成田空港の国際線のゴールデンウイーク期間中(4月25日~5月6日)の出入国者数は約74万5490人で、昨年の77万7010人より4・1%減少(速報値)。
この対照的増減は今春、羽田空港の国際線枠が拡大されたのを受けて日本航空や全日本空輸などの国際線が成田から羽田に週63便シフトしたことが大きく影響しているという。
また、第2次安倍政権発足以降訪日外国人の増加傾向は円安とビザの発給条件が緩和されたことが原因しているという。
国際線枠拡大にしても円安にしても、ビザ発給条件が緩和にしても、国の政策である。但しビザ発給条件緩和と円安の恩恵を受けた点については成田にしても羽田にしても、同じ条件となる。
主として羽田空港の国際線枠拡大が影響した羽田と成田の国際線旅客数の増減ということになる。
羽田空港の国際線枠拡大という国の政策に対して成田空港は無力であり、羽田空港は労せずして実績を上げることができた。いわば国の政策に左右されたそれぞれの趨勢ということになる。
成田と羽田を自治体に置き換えたらどうなるのだろう。成田は首都東京の国際空港として発足しているために出入国者数は羽田の約2倍となっていて、依然日本一の座にあるのに対して羽田が地理的に東京に位置しているという事情の違いはあるが、羽田にしても成田にしても国の政策下に位置していることから、両方共地方と位置づけることができる。
石破地方創生相は地方創生に関して常々、「国が何をするかではなく、地方が何をしたいか、市町村から色々な意見が出てくるものを国は支援する」と言って、地方創生の責任を地方に置いているが、かつての自民党政権は中央集権体制を敷いて国全体の政策を決める権限とカネを握っていたのである。
地方の側から言うと、国が決めた全体的な政策に従属する形で地方それぞれの政策を決める体制に慣らされて、地方が独自の政策を立案する能力にしても、立案した政策を地方独自の方法で主体的に実施し、その成果に責任を持つ姿勢にしても育てる機会を与えられなかったことから、地方が政策的に自立できない状態のままに現在に至っていることになる。
しかも地方の主体性や裁量権を阻害するヒモ付き補助金を2011年に民主党政権が廃止し、交付金の一部を地方自治体の裁量で自由に使える「一括交付金」として創設したが、安部政権は2013年度予算案でそれを廃止して、交付金制度を先祖返りさせる形でヒモ付き補助金を復活させている。
これは地方が政策的に自立できない状態に閉じ込めておこうとする試みであろう。
にも関わらず石破茂にしても安倍晋三にしても地方に責任を求めようとしている。
石破茂は金沢市の9月13日の講演で次のようにも言っている。
石破茂「北海道から九州・沖縄まで事情が違う。日本全体で同じことはやらない。うちの街を良くするためにと地方から(具体案を)言ってくれば、人も出すし、お金も支援する。だが、やる気も知恵もないところはごめんなさいだ」(MSN産経)
石破茂は自民党政権が今まで日本全体で同じ政策を押し付けて地方を政策的に自立できない状態に閉じ込めておきながら、そのことを忘れて、今になって「日本全体で同じことはやらない」と言い、口では自発性と自立を求めている
石破茂は9月20日の宮崎市の講演では次のように発言している。
石破茂「『うちの町をこうしたい』というアイデアは、霞ヶ関では考えられないが、知恵と熱意のあるところには国は全面的に応える。地元の人たちが考えたことに霞ヶ関や永田町が全力で応える『地方創生』が日本を救う唯一の道だ」(NHK NEWS WEB)
石破茂「うちの町をこうしたいというアイデアは地元でなければ考えられない。それをどう引き出すか。霞が関から若くて知恵のある人を希望があれば出す」(時事ドットコム)
霞ヶ関の若い官僚の思考は先輩官僚から中央集権の血を受け継いでいるはずだ。地方が政策的に自立できていない状態にあり、独自の政策を立案する能力や政策を主体的に実施し、その成果に責任を持つ姿勢が育っていないところへ中央集権の血を受け継いだ官僚を送り込んでも、地方を支配する思考力学だけが働いて、派遣された官僚たちは中央の遠隔操作の駒と化すだけだろう。
羽田国際線枠拡大等の国の政策を受けた羽田空港のゴールデンウイーク期間中の国際線出入国者数が大幅に増加し、その分成田空港の国際線出入国者数が減った現象は国の政策に従属するだけの地方の姿と重なる。
いわば成田は日本の多くの地方と同じように自らのアイデアや政策を持ち得なかった。様々な手を打っていたとしても、有効打となり得なかった以上、手を打ったことにはならない。
羽田にしても同じだろう。国の政策の恩恵次第の地方の姿と変わらない。
地方創生が実現するか実現しないか、その成果は地方が自立できていない以上、いわば国に従属する形で地方を成り立たせ、現在もそのような姿勢でいる以上、羽田空港と成田空港の国際線乗客数の増減が自分たちの政策からではなく、国の政策を受けた結末であるように、乗客数の増減通りに最終的には国の政策が占うように思えてならない。
だが、これまでの国の政策は地方を創生させることができなかった。自民党の各歴代政権が地方を自立させなかった、その延長線上に現在の地方があるのだから、安部政権が急に自立を言い始めても、急には言うとおりには対応できないだろう。
羽田空港と成田空港の国際線乗客数増減から地方創生の前途多難を感じた。
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