元厚生次官宅・襲撃事件は連続テロなのか

2008-11-19 10:57:53 | Weblog

 テロだと言うなら、「懲罰」の対象は何なのか

 10月18日午前10時頃、さいたま市南区別所の自宅玄関で元厚生事務次官山口剛彦氏(66)とその妻美知子さん(61)の2人の血を流した死体を発見。

 一方同18日夕方、東京都中野区上鷺宮2丁目で元厚生事務次官吉原健二さん(76)宅で宅配便配達を装った男が侵入、妻靖子さん(72)を刺して逃走。

 警察庁幹部は二つの事件を
 ▽2人の経歴が似ている
 ▽凶器が刃物
 ▽襲撃場所が自宅玄関など、共通点が複数ある――

 こういったことから「連続テロの可能性がある」と見て、埼玉県警と警視庁に対し関連を視野に捜査するよう求めた(「asahi.com」)という。

 「2人の経歴」とは19日の時事通信社記事≪基礎年金導入時の担当幹部=2人の元厚生次官、経歴に共通点≫が纏め上げている。箇条書きにすると――

 1.刺殺された山口剛彦氏と妻が刺されて重傷を負った吉原健二氏の両元厚生事務次官は基礎年金制度
   の導入を柱とする1985年の年金改正に担当幹部としてかかわった。

 2.吉原元次官は当時年金局長として、また山口元次官は年金課長として年金改正に取り組んだ。

 3.吉原元次官は厚生省を退官後、社会保険庁長官も務めた。

 同記事は2人の経歴以外に「基礎年金制度の導入」に関して、「それまで厚生年金、国民年金などに分かれていた年金制度で全国民共通の基盤を作った点で画期的だった」と評価する一方、「年金制度をめぐってはその後約20年を経て、基礎年金番号に統合されていない『宙に浮いた』年金記録が約5000万件に上ることが2007年に発覚。同年の通常国会は同問題で大荒れとなった」ことと、「吉原元次官が社保庁長官を務めた86-88年当時はちょうど、年金記録管理のオンラインシステムへの切り替えが行われていた時期に当たる。年金記録のミスはオンライン化時に多数発生したとみられている」と、既に国民の殆どが知ることとなっている制度の画期性に反する運営面での杜撰さとその破綻を指摘している。

 そして最後の共通点として、「小泉純一郎元首相が2度厚相を務めた時にそれぞれ事務次官だった」ことを上げている。

 吉原元次官は厚生省を退官後、社会保険庁長官に天下っているが、山口元次官の方は99年8月に次官退任後、「00年1月に社会福祉・医療事業団にはいり、01年2月に同事業団理事長に就き、今年3月に辞職した」(「asahi.com」)と吉原元次官と同様の天下りの経歴を踏んでいる。

 退官後の再就職先は違っていても、2人とも天下りを経ている点で共通点があったことになる。

 その行為が正しかろうと正しくなかろうと、実行者側から見た場合、テロなる行為は常に「懲罰」の意図を持たせ、持たせることで成り立たせている。だからイスラム過激派はアメリカ軍や外国人に対するテロ行為、もしくはテロ犯罪を「ジハード(聖戦)」と称して、「ジハード(聖戦)」の名の下、「懲罰」行為として自爆攻撃等を繰返している。

 ここにテロの始末に負えなさがある。実行者は常に「懲罰」犯罪を正義の行為としている。

 もしこの2つの事件が連続テロ事件だとしたら、テレビでコメンテーターたちが正義の人となって口を揃えるように「卑劣な犯行」だ、「許せない犯行」だと声高く非難しようと、あるいはこういった事件が起きること自体が「国家の危機」だと「国家」を振り回して警告しようと(麻生みたいな総理大臣が存在すること自体の方が「国家の危機」だと思うのだが)、実行者の側からしたら、「懲罰」の意図をその犯行に込めていたことになる。
 
 犯人が犯行声明を出して、その声明の中に犯行動機として「懲罰」の二文字をそのまま書いているか、「懲罰」を匂わせる意味の言葉を記しているか、あるいは逮捕されて「懲罰」が犯行の動機だったと自白して初めてテロ犯罪だったことが判明する。

 ではテロ犯罪だったと仮定すると、「懲罰」の対象は何だったかということになる。

 「基礎年金の導入」は画期的な業績だったとしても、そのことに反する5000万件に上る年金記録のミスをつくり出して多くの国民に迷惑をかけ、不安に陥れたばかりか、僅かな年金で暮らしている国民が多数いることが明るみに出た上、不景気、原油高等による物価高等で打撃を受けた生活困窮者が多くいる一方で、そういったことにはお構いなしに事務次官退官後天下って、天下り先で高給を取り、さらに高額の退職金を受け取る、生活困窮など毛ほども感じたことがない人間が一方にいることを改めて印象づけた。

 考えられることは、そのことの不当性に対する「懲罰」だと言うことなのだろうか。

 2007年6月8日の「中日新聞」≪元社保庁7長官 「渡り」収入 計9億円≫によると、厚生労働省の推計として、<1985年8月から98年7月までに在任した歴代社会保険庁長官7人が再就職を繰り返す「渡り」で得た退職金と報酬の合計が9億2861万円、一人当たり約1億3200万円に上るとの推計を公表した。≫と伝えている。

 「一人当たり約1億3200万円」と年金10万円以下でかつかつの生活を送る少なくない数の国民の存在。余りにも差があり過ぎるその格差。

 最後の共通点である「小泉純一郎元首相が2度厚相を務めた時にそれぞれ事務次官だった」は、格差社会を決定的な形で仕上げた元凶として小泉元首相をキーワードとし、それに加担した共通性を2人に持たせている可能性もある。

 上記記事は<最高額は、台帳廃棄が通知された当時長官だった正木馨氏で、長官退職後に四法人から計2億1121万円の報酬と退職金を得ていた。>と、その栄華を伝えている。

 その栄華はお手柔らかにを願って差し出す農民からのワイロや年貢米徴収の過程で米を騙し取って財を成し、その財で与力や旗本の家督を買い取って華麗を極める、元々は下級武士でしかなかった江戸時代の年貢米徴収の代官の栄耀栄華を思わせる。

 犯人が自己正当化の口実をどう設けようとも、犯罪は犯罪である。歪んだ「懲罰」としか言いようがない。だが、テロの存在自体が社会の矛盾の一端を示しているはずである。

 いわば社会の矛盾という歪みに対応する歪んだ犯罪としての「テロ」と言うことだろうから、「テロ」という言葉を口にする以上、「卑劣だ」、「許せない」と非難して正義の人を演ずるだけではなく、犯人の「懲罰」が何に向けれらているかぐらい推測しなければ、テロを存在させることとなっている社会の矛盾とテロそのものを対峙させることはできないのではないか。

 厚労省は2件の事件を受けて<現役と歴代幹部の住所リストを警察当局に提出し、警備を要請した。>(「毎日jp」)と言うことだが、警視の酔っ払い運転、跡を絶たない警察官のわいせつ、盗撮行為、住民の捜索願を無視して行方不明者の殺害を防げなかった捜査ミス等々、志気の緩みっぱなしの警察のお粗末な現状を考えると、警察よりも頼りになる「アコム」とかの民間の警備会社に依頼した方がより確かな安全を約束されるのではないだろうかと心配になる。


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