衆参与野党逆転のねじれ現象が政治の停滞を生じせしめ、政治不信を招いている。だが、ねじれ現象をつくり出したのも政治である。
今回の参院与野党逆転に根ざした政治停滞・政治不信は菅直人が愚かにも自分から撒いた種によって育て上げた。具体的な骨格を描きもせずに単に不用意に消費税増税に言及しただけではない。民主党は2009年8月30日総選挙前は「4年間は消費税上げない」と言い、「民主党政策集INDEX2009」には、「現行の税率5%を維持」、つまり4年間の政策約束だから、4年間は5%維持、消費税は上げないと約束し、「税率については、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の抜本的な改革が検討の前提」と言って、基礎的社会保障制度の抜本的な改革が先だとしていた。
ところが「菅2010年民主党参院選政権政策(マニフェスト)」になると、基礎的社会保障制度の抜本的な改革を待たずに「早期に結論を得ることをめざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」となり、マニフェスト発表記者会見でいきなり消費税増税に言及した。
1年も経たないうちに約束を違えた。国民の頭には「4年間は消費税上げない」の言葉があったはずで、その記憶を裏切った効果はてきめんであった。
かくして政治遂行の上で重要な参議院の議席を失うことになった。身から出たサビ、自業自得に苦しめられることになった。
だが、菅仮免にとっては自身の無能政治、愚かしい心がけから発した当然の身から出たサビ、自業自得だとすることができても、菅自身の指導力欠如、統治能力欠如と相まって招いた衆参ねじれによる政治停滞と政治不信は何度も繰返してもいい現象ではないはずだ。
現在選挙制度改革として二院制を配して「一院制」を掲げる勢力に「超党派衆参対等統合一院制国会実現議連」(会長 衛藤征士郎自民党衆議院議員)が存在する。
その案を見てみる。
「一院制国会創設案」
1.衆議院と参議院を対等に統合して一院制の国会とする。
2.2016年までに一院制の国会を創設する。
3.国会議員の定数は、現行722人を3割(222人)割削減し、500人以内として、別に法律で定める。
4.国会議員の任期は4年とする。
5.国会の会期は通年国会とする。
6.国会の解散は不信任の可決(信任の否決)のときのみ換算できる。
7.解散後の国会議員の任期は、新しく選任された国会議員による初国会の前日までとする。
8.国会議員の選挙制度は昭和21年4月10日に施行された都道府県単位の大選挙区制で、2-3名連
記の制限連記制を基本とし、比例代表も検討する。
9.国会は、国会議員の2分の一以上の同意があれば法案や条約を国民投票に付すことができる。
10.内閣総理大臣は予算及び租税以外の法案や条約を国民投票に付すことができる。
2010年12月21日 衆参対等統合一院制国会実現議連 |
5.の「国会の解散は不信任の可決(信任の否決)のときのみ換算できる」の「換算できる」という言葉の意味が分からない。「換算」とは「ある数量を他の単位に換えて計算しなおすこと」を言うのだから、「国会議員の任期は4年」だが、解散した場合は従来どおりにその限りでないとも受け取れるし、国会の解散は「不信任の可決(信任の否決)のときのみ」で、それ以外は任期4年は保証されるとも解釈できる。
例えば与党が一院制の任期、あるいは衆院の任期がまだ残っているにも関わらず、選挙を有利な状況で勝利に導くために内閣支持率が高いときを狙って解散するといったことは許されないとするのか、あるいは野党が内閣支持率低下を理由に国民の信任を失ったとして解散を迫ることもできないということななのか、はっきりしない。
もし以上の事柄を含めた「国会の解散は不信任の可決(信任の否決)のときのみ」許されるという意味なら、内閣の任期も国会議員の任期もほぼ4年間は保証されることになる。
与党は多数を上回っているから与党としての存在理由を得ているのであって、与党内の造反といった余程の理由がない限り、数の優勢によって不信任案は否決され、信任案は可決されることを予定調和としているからだ。
私の選挙制度改革案は一院制であっても衆参二院制であっても、すべての任期は2年とする。もし二院制を取るなら、選挙は常に同時選挙とする。
同時選挙とすることで、衆参のねじれが解消できる。国民が同時選挙で衆参別々の支持を与えることは考えにくい。
二院の場合、不信任案(信任案)の権利は衆参両院に同時に与える。参議院も政党化しているのだから、両院間で意見が異なるということは先ずあり得ない。衆参どちらであっても不信任案が可決(信任案が否決)されて解散した場合であっても、他の院は解散に従い、同時選挙を行う。
この選挙制度改革の要は議員任期が2年であることである。これを短いと見る向きは合理的判断能力を備えていないと言える。もし首相が有能な政治家で、真に国民に利益となる政治を展開し得たなら、2年後の選挙でも国民の審判は国民に利益となる政治を行い得た現内閣に下されるだろうから、少なくとも与党に関しては任期は2年で終わらない。逆に与党は議席数を増やすことになる。
また与党内閣は結果的に2年という短い期間に国民利益となる政治の実現を勝負する切磋琢磨が常に求められることとなる。もしも財源の裏付けも実現可能性の裏付けもなく口先だけでバラ色の国民生活を描くポピュリズム政治を展開した場合、その化けの皮が剥がれるのは目に見えていることで、そのことによって国民の支持を失うだろうから、2年後の選挙の勝利が覚束なくなり、与党は選挙の敗北を免れる手段として首相を代えることを余儀なくされ、残りの任期内で国民の利益となる政策への転換を迫られることになる。
それができなければ、政権を失う国民の審判を受ける可能性が高くなる。
首相交代の手段として信任案の提出ということもあるし、野党提出の不信任案に同調、可決するということもあるし、これらの手段を待たずに退陣を迫って引導を渡すということもある。
要は任期2年の中で菅仮免みたいな無能なリーダーの長い在任は許さない状況とすることができるメリットがあるということである。早々に退陣を願わなければ、政権担当の保証を遅くても2年後には自ら投げ捨てることになるだろう。
政治の側からの切磋琢磨と無能なリーダーの居座りを許さないための国会議員任期2年でもある。首相が1年前後でコロコロと代ることを今後とも繰返したとしても、繰返しながら少しは日本の政治も成長し、まともになっていくに違いない。
選挙制度改革には憲法を改正しなければならない。
日本国憲法
第42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第45条 衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
第46条 参議院議員の任期は、4年とし、3年ごとに議員の半数を改選する
「国民投票法」が2010年5月18日に施行された。各議院の総議員の3分の2以上(憲法96条) の賛成を得ることができれば改正できる。3分の2以上という数はハードルが高いが、要は改革への意欲である。
どのような選挙制度改革であっても、特に参議院の場合、何もせず、無為に過ごしたとしても6年間の身分が保証される利害優先の意欲に支配されていたなら、何も変わらないに違いない。
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事業仕分けは もう 終わったのだろうか?