2021年5月17日付「AERA dot.」記事が自衛隊運営の「大規模接種東京センター」のワクチン予約システムに重大な欠陥があることをAERAdot.編集部の、いわゆる「検証予約」によって判明したと報道した。キッカケは「ワクチン予約に大変な欠陥が見つかった。システムのセキュリティが機能していない」との情報が防衛省関係者から飛び込んできたことだと記事は書いている。要するに杜撰過ぎるシステム設計を内部告発するリークがあったということなのだろう。
予約の手続きは次のように案内している。防衛省の予約サイトにアクセス、地方自治体から送付された接種券に記載されている市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)と自身の生年月日を入力。終わって、「認証ボタン」を押すと、接種希望日時を選ぶ画面が出る。カレンダーから接種枠の空きがある日時を選び、予約完了。
次に予約システムの欠陥の検証。6桁の市区町村コードも、10桁の接種券番号も、生年月日も、適当な数字を入れる。生年月日に関しては「1956年1月1日」としたのは接種対象者は65歳以上だから、65歳以上になるようにしたということなのだろうが、もし65歳下の年齢にしたとしても予約が取れたとしたら、滑稽だと思っていたら、同様の記事を書いた「毎日新聞」(2021/5/17 18:47)が、〈予約の対象は65歳以上だが、65歳未満となる生年月日を入力しても予約できることも確認。〉と伝えている。極端なことを言うと、0歳児の生年月日を入力しても予約は完成してしまうのかもしれない。
要するに全て適当な数字入力であっても予約が取れてしまった。確認のために数字を変えてテストしても、予約が取れた。市区町村コードが6桁未満、接種券番号10桁未満の場合にのみエラーが出ると記事は書いている。
記事はそのほかに予約システムの「セキュリティが機能していない」との内部情報を伝えた防衛省関係者の可能性として考えられるセキュリティ上の危険性を訴える発言等を紹介しているが、これらについては記事にアクセスしてご覧頂きたい。
上記「毎日新聞」は、〈架空の数字を使って予約枠を「占拠」することもできるとみられ、予約システムの信頼性が問われそうだ。〉と危惧を示し、「AERA dot.」は、〈これでは北海道や沖縄、名古屋などどこに住んでいようが、何歳であろうが誰でも予約ができてしまう。〉と欠陥を検証している。
この記事に対して岸信介の長男岸信和の家へ安倍晋太郎家から養子に入った、安倍晋三の実弟、安倍晋三よりもあくどさの点でずっとマシな防衛相の岸信夫が自身の Twitter に抗議の投稿を4回に分けて行っている。
〈自衛隊大規模接種センター予約の報道について。
今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です。〉
〈両社には防衛省から厳重に抗議いたします。
不正な手段でのワクチン接種の予約は、本当に希望する方の機会を喪失し、ワクチンが無駄になりかねないと同時に、この国難ともいうべき状況で懸命に対応にあたる部隊の士気を下げ、現場の混乱を招くことにも繋がります。〉
〈本センターの予約システムで、不正な手段による虚偽予約を完全に防止する為には、全市長区町村が管理する接種券番号を含む個人情報を予め防衛省が把握し、予約番号と照合する必要があり、実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断いたしました。〉
〈他方、今回ご指摘の点は真摯に受け止め、市区町村コードが真正な情報である事が確認できるようにする等、対応可能な範囲で改修を検討してまいります。〉
「不正な手段」、「不正な手段」、「不正な手段」と3回も「不正」であることの印象操作を行っている。要するに「不正な手段による虚偽予約」を許し難い行為として断罪しているが、その断罪に正当性はあるのだろうか。
防衛省側から見た「虚偽予約」を成功させてしまったことについての理由は3番目の投稿に書いてある。趣旨は「全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断」した結果の止むを得ない見切り発車ということになる。具体的には上記「毎日新聞」が書いている、〈市区町村の予約システムと連結〉させていなかったことがシステムの欠陥の原因となった。住民台帳に基づいた接種券記載の氏名と市区町村コードと接種券番号と生年月日を防衛省予約システムに関連付けていなかったために市区町村コードも接種券番号も生年月日も、デタラメな数字入力であっても、承認してしまうことになった。自動販売機に10円を玉入れてもジュースがガシャンと落ちてくるような欠陥に例えることができる。
但し防衛省側から見た虚偽予約だけが問題というわけではない。岸信夫にしても、あるいは防衛省にしても、問題の本質を見逃している。「毎日新聞」が防衛省人事教育局担当者の「入力する人の善意に頼ったシンプルな予約システム。いたずらで予約されては本来必要な人の予約が取れず、ワクチン接種ができなくなる。絶対にやめてほしい」と訴えている発言を伝えているが、役人にしては、あるいは役人だからこそなのか、単細胞な受け止め方をしている。「善意」が全て正しい予約に向かわせるわけではない。
確かに両報道機関の防衛省側から見た「虚偽予約」は適当な数字を入力して成り立たせた意図的な行為ではあるが、故意に適当な数字を入力しても予約が成立するということは正規の予約でも数字の入力を間違えた場合は予約が成立してしまうという法則を取ることになる。ここにこそ問題の本質があるはずである。
具体的には正規のワクチン接種者として接種を受ける目的で予約に臨んだものの市区町村コードや接種券番号、生年月日のうちいずれか数字の入力を1字間違えてもエラーが表示されないことから正しく入力したと思い込んでしまって、「認証ボタン」を押してカレンダーから接種希望日時を選ぶ。これで予約が成立したとホッとしてしまうケースが生じる可能性は否定できない。
結果、既に触れているように接種会場に足を運んだとしても、予約情報と接種券情報との不一致によって接種を受けることができなくなる恐れが生じる。特に防衛省予約システムには氏名を記入する枠を設けていない結果、名無しでの予約登録となるから、持参した接種券の本人姓名で予約情報と照合することもできない。免許証か保険証を提示して、「これこれこのとおり接種券は私のものです」と証明できても、予約したのが本人かどうかの証明にまで行き着かないことになる。
当然、数字の入力間違いによる予約成立のプロセスは「AERA dot.」や「毎日新聞」の防衛省側から見た「虚偽」の数字入力による「予約」成立のプロセスと同じ道を辿ることの証明、既に指摘した、故意に適当な数字を入力しても予約が成立するということは正規の予約でも数字の入力を間違えた場合は予約が成立するという法則の証明を果たすだけのこととなる。
「不正な手段による虚偽予約」だと大騒ぎしている場合ではない。
正規の予約であっても、「善意」に裏付けされていたなら数字入力を間違えるケースがないと考えるのは、あるいは間違えることもあり得ることに気づかないでいるのは注意力散漫以外の何ものでもない。当然、故意の数字入力に備えた、あるいは数字入力の間違いに備えたシステムとすることが予約に関する危機管理の初歩中の初歩となる。
だが、危機管理の初歩中の初歩を怠った。岸信夫は「全国民の個人情報」というプライバシーを防衛省が所有することの不適切性から止むを得ない見切り発車だといった趣旨の投稿をしているが、最初の投稿の不正手段の予約実施行為は、〈本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です。〉と強く非難していたことに反して、4番目の投稿で、〈今回ご指摘の点は真摯に受け止め、市区町村コードが真正な情報である事が確認できるようにする等、対応可能な範囲で改修を検討してまいります。〉と、「不正な手段による虚偽予約」をシステム改善の思わぬキッカケとしている。
でなければ、危機管理の初歩中の初歩を怠ったままでいることになる。怠らずに欠陥は欠陥と認めて、欠陥と向き合う危機管理を働かすことになった。
だとすると、防衛省側から見た「不正な手段による虚偽予約」に対する強い非難の態度とその「虚偽予約」をシステム改善の思わぬキッカケとしている態度との間には大きな矛盾が生じることになる。前者の態度を基準として前後の態度に一貫性を与えるとしたら、危機管理の初歩を誤とうが何しようが、非難を維持して、システムの欠陥を放置し、システムの改善には手を付けないことであろう。
放置した場合、非難を受けるのは「AERA dot.」や「毎日新聞」ではなく、防衛省であり、菅内閣ということになる。
後者の態度を基準として前後の態度に一貫性を与えるとしたら、「不正な手段による虚偽予約」だとする非難はやめて、欠陥を素直に認めて、システムの改善のことだけを言うべきだろう。
だが、一方で「極めて悪質な行為だ」と非難し、その一方で「今回ご指摘の点は真摯に受け止め・・・・対応可能な範囲で改修を検討してまいります」と矛盾した態度を見せている。言ってみれば、前者は自分たちのシステムの欠陥を棚に上げて報道機関を非難しているのだから、闇雲な自己正当化の態度であり、後者はシステムの欠陥を間接的に認めていることになるから、自己正当化の放棄ということになる。
但しどちらの態度に重きを置いているかと言うと、明らかに前者である。「不正な手段により予約を実施した行為」、「本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為」、「本当に希望する方の機会を喪失させる」、「この国難ともいうべき状況で懸命に対応にあたる部隊の士気を下げ、現場の混乱を招くことにも繋がる」等々。
自分たちのシステムに欠陥があるにも関わらずにかくまでも非難に重きを置いている。つまり自己正当化に重きを置いている。自衛隊大規模接種センターの予約がスムーズに進み、接種が滞りなく行われるか否かは菅内閣のコロナ対策の成果に関係することになるから、予約システムの自己正当化は菅内閣を守る手立ての一つとなる。逆に欠陥を決定的に認めたなら、菅内閣の失態の一つとなる。考えるに予約システムの欠陥がコロナ対策の不評判からただでさえ低い数字に喘いでいる菅内閣支持率のマイナス材料とされることを恐れて、「AERA dot.」と「毎日新聞」を強く非難することで菅内閣を守る目的で自己正当化に重きを置き、欠陥は最後にさり気なく認めたと見ることもできる。
安倍晋三が2021年5月18日、〈岸信夫@KishiNobuo · 5月18日
自衛隊大規模接種センター予約の報道について。
今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です。〉とするツイートに対して、〈「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」〉とリツイートした、
岸信夫の「AERA dot.」と「毎日新聞」に対する非難をバカっ正直に取れば、「妨害愉快犯」と言うことができるが、「不正な手段による虚偽予約」と激しく非難するだけでは済まない欠陥を抱えている防衛省の予約システムであり、最終的には防衛省が「AERA dot.」と「毎日新聞」の「指摘」を「真摯に受け止め」て、システムの改善の乗り出さざるを得なかった事実と、システムの欠陥を放置したなら、菅内閣のコロナ対策の失態、ひいては菅内閣支持率のマイナス材料とされる蓋然性が高いことを考えると、「極めて悪質な妨害愉快犯」は問題の本質から外れたお門違いな表面的受け止めとしかならない。
大体が防衛省のワクチン接種予約システムに欠陥があったからこその「AERA dot.」と「毎日新聞」の検証報道である。何ら欠陥がなければ、両報道機関の検証報道は成り立たない。その欠陥も岸信夫自身が改修を約束しなければならなかった程の性格のものである。「極めて悪質な妨害」どころか、「AERA dot.」と「毎日新聞」が伝えたことは単なる検証報道では終わらずに啓発報道となった。合理性を持たせた理解なしに「妨害愉快犯」と決めつけるのは却って安倍晋三の方こそが"報道妨害愉快犯"と非難されて然るべきである。
予約の手続きは次のように案内している。防衛省の予約サイトにアクセス、地方自治体から送付された接種券に記載されている市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)と自身の生年月日を入力。終わって、「認証ボタン」を押すと、接種希望日時を選ぶ画面が出る。カレンダーから接種枠の空きがある日時を選び、予約完了。
次に予約システムの欠陥の検証。6桁の市区町村コードも、10桁の接種券番号も、生年月日も、適当な数字を入れる。生年月日に関しては「1956年1月1日」としたのは接種対象者は65歳以上だから、65歳以上になるようにしたということなのだろうが、もし65歳下の年齢にしたとしても予約が取れたとしたら、滑稽だと思っていたら、同様の記事を書いた「毎日新聞」(2021/5/17 18:47)が、〈予約の対象は65歳以上だが、65歳未満となる生年月日を入力しても予約できることも確認。〉と伝えている。極端なことを言うと、0歳児の生年月日を入力しても予約は完成してしまうのかもしれない。
要するに全て適当な数字入力であっても予約が取れてしまった。確認のために数字を変えてテストしても、予約が取れた。市区町村コードが6桁未満、接種券番号10桁未満の場合にのみエラーが出ると記事は書いている。
記事はそのほかに予約システムの「セキュリティが機能していない」との内部情報を伝えた防衛省関係者の可能性として考えられるセキュリティ上の危険性を訴える発言等を紹介しているが、これらについては記事にアクセスしてご覧頂きたい。
上記「毎日新聞」は、〈架空の数字を使って予約枠を「占拠」することもできるとみられ、予約システムの信頼性が問われそうだ。〉と危惧を示し、「AERA dot.」は、〈これでは北海道や沖縄、名古屋などどこに住んでいようが、何歳であろうが誰でも予約ができてしまう。〉と欠陥を検証している。
この記事に対して岸信介の長男岸信和の家へ安倍晋太郎家から養子に入った、安倍晋三の実弟、安倍晋三よりもあくどさの点でずっとマシな防衛相の岸信夫が自身の Twitter に抗議の投稿を4回に分けて行っている。
〈自衛隊大規模接種センター予約の報道について。
今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です。〉
〈両社には防衛省から厳重に抗議いたします。
不正な手段でのワクチン接種の予約は、本当に希望する方の機会を喪失し、ワクチンが無駄になりかねないと同時に、この国難ともいうべき状況で懸命に対応にあたる部隊の士気を下げ、現場の混乱を招くことにも繋がります。〉
〈本センターの予約システムで、不正な手段による虚偽予約を完全に防止する為には、全市長区町村が管理する接種券番号を含む個人情報を予め防衛省が把握し、予約番号と照合する必要があり、実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断いたしました。〉
〈他方、今回ご指摘の点は真摯に受け止め、市区町村コードが真正な情報である事が確認できるようにする等、対応可能な範囲で改修を検討してまいります。〉
「不正な手段」、「不正な手段」、「不正な手段」と3回も「不正」であることの印象操作を行っている。要するに「不正な手段による虚偽予約」を許し難い行為として断罪しているが、その断罪に正当性はあるのだろうか。
防衛省側から見た「虚偽予約」を成功させてしまったことについての理由は3番目の投稿に書いてある。趣旨は「全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断」した結果の止むを得ない見切り発車ということになる。具体的には上記「毎日新聞」が書いている、〈市区町村の予約システムと連結〉させていなかったことがシステムの欠陥の原因となった。住民台帳に基づいた接種券記載の氏名と市区町村コードと接種券番号と生年月日を防衛省予約システムに関連付けていなかったために市区町村コードも接種券番号も生年月日も、デタラメな数字入力であっても、承認してしまうことになった。自動販売機に10円を玉入れてもジュースがガシャンと落ちてくるような欠陥に例えることができる。
但し防衛省側から見た虚偽予約だけが問題というわけではない。岸信夫にしても、あるいは防衛省にしても、問題の本質を見逃している。「毎日新聞」が防衛省人事教育局担当者の「入力する人の善意に頼ったシンプルな予約システム。いたずらで予約されては本来必要な人の予約が取れず、ワクチン接種ができなくなる。絶対にやめてほしい」と訴えている発言を伝えているが、役人にしては、あるいは役人だからこそなのか、単細胞な受け止め方をしている。「善意」が全て正しい予約に向かわせるわけではない。
確かに両報道機関の防衛省側から見た「虚偽予約」は適当な数字を入力して成り立たせた意図的な行為ではあるが、故意に適当な数字を入力しても予約が成立するということは正規の予約でも数字の入力を間違えた場合は予約が成立してしまうという法則を取ることになる。ここにこそ問題の本質があるはずである。
具体的には正規のワクチン接種者として接種を受ける目的で予約に臨んだものの市区町村コードや接種券番号、生年月日のうちいずれか数字の入力を1字間違えてもエラーが表示されないことから正しく入力したと思い込んでしまって、「認証ボタン」を押してカレンダーから接種希望日時を選ぶ。これで予約が成立したとホッとしてしまうケースが生じる可能性は否定できない。
結果、既に触れているように接種会場に足を運んだとしても、予約情報と接種券情報との不一致によって接種を受けることができなくなる恐れが生じる。特に防衛省予約システムには氏名を記入する枠を設けていない結果、名無しでの予約登録となるから、持参した接種券の本人姓名で予約情報と照合することもできない。免許証か保険証を提示して、「これこれこのとおり接種券は私のものです」と証明できても、予約したのが本人かどうかの証明にまで行き着かないことになる。
当然、数字の入力間違いによる予約成立のプロセスは「AERA dot.」や「毎日新聞」の防衛省側から見た「虚偽」の数字入力による「予約」成立のプロセスと同じ道を辿ることの証明、既に指摘した、故意に適当な数字を入力しても予約が成立するということは正規の予約でも数字の入力を間違えた場合は予約が成立するという法則の証明を果たすだけのこととなる。
「不正な手段による虚偽予約」だと大騒ぎしている場合ではない。
正規の予約であっても、「善意」に裏付けされていたなら数字入力を間違えるケースがないと考えるのは、あるいは間違えることもあり得ることに気づかないでいるのは注意力散漫以外の何ものでもない。当然、故意の数字入力に備えた、あるいは数字入力の間違いに備えたシステムとすることが予約に関する危機管理の初歩中の初歩となる。
だが、危機管理の初歩中の初歩を怠った。岸信夫は「全国民の個人情報」というプライバシーを防衛省が所有することの不適切性から止むを得ない見切り発車だといった趣旨の投稿をしているが、最初の投稿の不正手段の予約実施行為は、〈本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です。〉と強く非難していたことに反して、4番目の投稿で、〈今回ご指摘の点は真摯に受け止め、市区町村コードが真正な情報である事が確認できるようにする等、対応可能な範囲で改修を検討してまいります。〉と、「不正な手段による虚偽予約」をシステム改善の思わぬキッカケとしている。
でなければ、危機管理の初歩中の初歩を怠ったままでいることになる。怠らずに欠陥は欠陥と認めて、欠陥と向き合う危機管理を働かすことになった。
だとすると、防衛省側から見た「不正な手段による虚偽予約」に対する強い非難の態度とその「虚偽予約」をシステム改善の思わぬキッカケとしている態度との間には大きな矛盾が生じることになる。前者の態度を基準として前後の態度に一貫性を与えるとしたら、危機管理の初歩を誤とうが何しようが、非難を維持して、システムの欠陥を放置し、システムの改善には手を付けないことであろう。
放置した場合、非難を受けるのは「AERA dot.」や「毎日新聞」ではなく、防衛省であり、菅内閣ということになる。
後者の態度を基準として前後の態度に一貫性を与えるとしたら、「不正な手段による虚偽予約」だとする非難はやめて、欠陥を素直に認めて、システムの改善のことだけを言うべきだろう。
だが、一方で「極めて悪質な行為だ」と非難し、その一方で「今回ご指摘の点は真摯に受け止め・・・・対応可能な範囲で改修を検討してまいります」と矛盾した態度を見せている。言ってみれば、前者は自分たちのシステムの欠陥を棚に上げて報道機関を非難しているのだから、闇雲な自己正当化の態度であり、後者はシステムの欠陥を間接的に認めていることになるから、自己正当化の放棄ということになる。
但しどちらの態度に重きを置いているかと言うと、明らかに前者である。「不正な手段により予約を実施した行為」、「本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為」、「本当に希望する方の機会を喪失させる」、「この国難ともいうべき状況で懸命に対応にあたる部隊の士気を下げ、現場の混乱を招くことにも繋がる」等々。
自分たちのシステムに欠陥があるにも関わらずにかくまでも非難に重きを置いている。つまり自己正当化に重きを置いている。自衛隊大規模接種センターの予約がスムーズに進み、接種が滞りなく行われるか否かは菅内閣のコロナ対策の成果に関係することになるから、予約システムの自己正当化は菅内閣を守る手立ての一つとなる。逆に欠陥を決定的に認めたなら、菅内閣の失態の一つとなる。考えるに予約システムの欠陥がコロナ対策の不評判からただでさえ低い数字に喘いでいる菅内閣支持率のマイナス材料とされることを恐れて、「AERA dot.」と「毎日新聞」を強く非難することで菅内閣を守る目的で自己正当化に重きを置き、欠陥は最後にさり気なく認めたと見ることもできる。
安倍晋三が2021年5月18日、〈岸信夫@KishiNobuo · 5月18日
自衛隊大規模接種センター予約の報道について。
今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です。〉とするツイートに対して、〈「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」〉とリツイートした、
岸信夫の「AERA dot.」と「毎日新聞」に対する非難をバカっ正直に取れば、「妨害愉快犯」と言うことができるが、「不正な手段による虚偽予約」と激しく非難するだけでは済まない欠陥を抱えている防衛省の予約システムであり、最終的には防衛省が「AERA dot.」と「毎日新聞」の「指摘」を「真摯に受け止め」て、システムの改善の乗り出さざるを得なかった事実と、システムの欠陥を放置したなら、菅内閣のコロナ対策の失態、ひいては菅内閣支持率のマイナス材料とされる蓋然性が高いことを考えると、「極めて悪質な妨害愉快犯」は問題の本質から外れたお門違いな表面的受け止めとしかならない。
大体が防衛省のワクチン接種予約システムに欠陥があったからこその「AERA dot.」と「毎日新聞」の検証報道である。何ら欠陥がなければ、両報道機関の検証報道は成り立たない。その欠陥も岸信夫自身が改修を約束しなければならなかった程の性格のものである。「極めて悪質な妨害」どころか、「AERA dot.」と「毎日新聞」が伝えたことは単なる検証報道では終わらずに啓発報道となった。合理性を持たせた理解なしに「妨害愉快犯」と決めつけるのは却って安倍晋三の方こそが"報道妨害愉快犯"と非難されて然るべきである。