ケイの読書日記

個人が書く書評

歌野晶午 「葉桜の季節に君を想うということ」 文春文庫

2020-04-09 20:13:49 | その他
 名作だという評判なので、前から読んでみたいと思っていた。「2004年版このミステリがすごい!」第1位に輝いた作品。

 元私立探偵のトラちゃんは、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼される。そんな時、地下鉄に飛び込んで自殺を図ろうとした女を助けることになって…。
 最初は、催眠商法でインチキ健康食品や寝具などを売りつける会社が出てきて、え?歌野晶午なのに社会派ミステリ?と驚いたが、いやいや事件や謎がいくつも出てきて、それがキチンと解決してあり、最後にあっと驚く展開がある。えーーーっ?! 話が違うじゃん?と憤るが、最初の方に戻って読み返してみると、確かに断定はされていない。自分が勝手に思い込んでいただけ。つまり作者のミスリードが本当に上手だったということ。
 しかし、いまどきのジジババって、こんなに元気なの?

 年寄りをカモにしたインチキ健康商品を売りつける催眠商法って、ずーーっと昔からあった。私の実家では、バアさんが「タダで貰った」とボックスティッシュなどを喜んで持ち帰っていたので、何だろうと静観していたら、アルカリイオン水の製造装置を買ってきた。それで催眠商法に引っかかっていると発覚した。あのままずっとタダのティッシュにつられて通っていたら、何十万もする布団を買わされていただろう。
 詐欺グループは、公民館のような所を借りてカモを入室させ、ラップやティッシュやトイレットペーパーをタダで配り、医者でもないのに白衣を着た男を先生と呼び、ここにあるものは全て身体に良いもので、しかも格安!今だったら半額!と催眠状態にして買わせる。
 本当に昔からある詐欺商法なんだ。そうそう、最近は別の手口もある。「いらない布団を引き取りますよ」と若いイケメンが高齢者宅を訪れ、「じゃ、お願いしようかしら」と応じると、次にごつい強面の男が現れ、「古い布団を引き取るために新しい布団を買ってくれ。とても身体に良い布団だ」と何十万もする布団を置いていく。実家のバアさんは、翌日われに返り、クーリングオフの電話をして、何とか被害は免れた。が、古い布団は玄関先に投げ捨てられていたという。

 まあ、バアさんも悪いよ。人恋しいのか、セールスマンと喋っちゃうんだ。

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