一昨日、中国から通達された「日本産水産物の輸入禁止」。
中国のこの対応については、以前から言われていたことなので、驚くほどのニュースではなかった。
もちろん、海産物を扱う当事者ではないので、「驚くほどのニュースではない」と言えるのであって、当事者とすれば大変なことだろうと、想像することはできる。
実際、政府でもこの中国側の措置に対して、話し合いの場を設けるなどの呼びかけをするなどしているようだが、日本の思惑通りにはならないだろう。
確かに、マグロの初セリなどでは中国から資金を提供されている卸会社が、高額で競り落とすなどが毎年の話題となっていた。
中国では、日本産マグロが人気である、ということを示す一例だろう。
実際JETROのサイトで、対中国の輸出について今回の件も含めてリリースが出ており、主な水産輸出品が分かる。
JETRO HP:中国、日本産水産物の輸入を全面停止
:香港政府、福島原発ALPS処理水放出に伴い10都県の水産物輸入禁止措置を発表
このJETROが発表したリリースによると、対中国への輸出が一番多いものが「ホタテ貝」、次いで(意外な印象だが)「なまこ(調製)」、そして「カツオ・マグロ」となっている。
「なまこ」に関しては「調製」となっていることから、干しなまこか調理・加熱された物かもしれない。
干したなまこを「海参」と言い、高級料理や薬膳の材料として使われることがあるようだ。
古月(会席中国料理店):「海参」ー海参の歴史
確かに今回中国が水産物の輸入全面停止に至った理由が、東京電力福島第一原子力発電所事故の処理で溜まってしまった「処理水の海洋放出」だった。
そして「ホタテ貝」も「なまこ」も、東北近辺が一大産地だったと思う。
輸入品目の1位。2位が、処理水の放出の海域ということになれば、中国側は神経質になってしまうのかもしれない。
確かに、水産業者さんからすれば今回の輸出全面停止となれば、大打撃と言えるだろが、JETROの記事にあるように、中国への輸出で金額的に多いのは「ホタテ貝」で、次の「なまこ」は別にしても、カツオやマグロといった魚介類が中心だ。
イワシやサバ、サンマなどの「大衆魚」等が、大きな割合を占めているわけではない。
メディアの報道では、「日本の水産業に大打撃!」というようなニュアンスで受け止めてしまうのだが、限定された魚介類が中心である、と分かれば、対応そのものも変わってくるはずだ。
もちろん、昨今の世界的日本食ブームで、これまで「大衆魚」を言われていた魚介類を中国へ売りだそう!と、考えていたのだとすれば、それは大きな痛手だろう。
だからこそ、市場を国内に目を向ける必要があるのでは?
今回の「処理水の放出」によって、海が放射能に汚染されるという懸念はあるが、世界の原発によって排出されている「処理水」を考えれば、既に「世界中の天然魚介類は食べられない」ということになるかもしれない。
それほど、「原発の処理水」は既に海洋に放出されている、ということでもある。
「処理水」に対して嫌悪感を抱く方の考えを否定する気はないが、この機会に「産地ならではの美味しい食べ方。伝統食」のような情報を発信し、国内の水産物需要を高める、という政策を農林水産省が各地の漁協と協力しあって、情報発信をしてもよいのでは?
実際、時折SNSでは農協が発信した「料理」が話題になったりしている。
中国への輸出9割という地域では、不安が広がるのは分かる。
だからこそ、国内市場へ目を向けるチャンスなのでは?と、思うのだ。
最新の画像[もっと見る]