
韓国海軍の新型輸送艦『トクト』が注目を集めている。基準排水量14000t、満載排水量19000tの大型輸送艦で、所謂LCACではなく小型のエアクッション揚陸艇を搭載し、その他10機のヘリコプターを搭載するという。
日本のマスメディアは韓国が同艦によって対馬や隠岐にでも侵攻しそうな論調が見受けられるが、現代の揚陸戦の苛烈さを考慮すれば効した主張はナンセンスであり、両国の国際関係を傷つけるだけであろう。
さて、東ティモールでは900名規模、イラク派遣では3000名規模の部隊を派遣する韓国軍にとり、独立した作戦展開能力は是非とも必要であるが、空中機動の中枢たるヘリ搭載艦が、『クワンデドデワン』級3隻、『チュムンゴンイスンシン』級3隻(建造中のものも含む)で、リンクス級の哨戒ヘリを最大で6機運用できるだけであった。これでは水上戦闘艦を応急のヘリ母艦とするには心もとない。そこで、状況を打破すべく大型ヘリ輸送艦の建造に踏み切ったものであると言えよう。
一方で、海上自衛隊は3機搭載可能の『はるな』型2隻、『しらね』型2隻、最大で2機搭載可能とされる『たかなみ』型5隻(建造中のものも含む)、『むらさめ』型9隻、『あさぎり』型8隻(練習艦に区分変更のものも含む)、1機を搭載する『はつゆき』型12隻(練習艦に区分変更のものも含む)で、合計68機の運用能力が存在する。また、3隻配備されている『おおすみ』型輸送艦も、大型ヘリ等5機程度を運用可能であることは、インド洋津波災害派遣の際に実証された。同任務ではローターを取り外していたが、SH-60のようにローターを折畳める機種であればそのまま戦車格納庫に収容も可能であろう。
しかしながら、やはり輸送艦は数である。韓国海軍は従来型の輸送艦である『ウンポン』級揚陸艦(4100t)を12隻程度保有するものに加え、今回の新型間建造に至った訳である。
日本もスーダンへのPKO派遣が想定される中において、多数の輸送艦が必要となろうが、やはり大型艦とはいえ『おおすみ』型3隻では心もとない。例えば、デンマークの多目的支援母艦(3000t級、フリゲイトや機雷敷設艦、兵員輸送艦、ミサイル艇母艦等にモジュールを換装するだけで転用可能)のような艦艇を10隻単位で建造する必要があるのではないだろうか。
船体を海上保安庁の巡視船のように商船規格とし、速力を20ノット前後に抑え、乗員の半分以上を予備自衛官により運用させ、地方隊に配備しておけばコストは最小限に抑えられる。ちなみに、参考までに海上保安庁の3000t級巡視船の建造費はミサイル艇と同程度のものである。
新防衛大綱に国際貢献任務の位置づけを従来より高めたのであるから、相応の能力を整備し、責務を完遂するべきであろう。
HARUNA