国際政治学上や外交史の関係上、日米安全保障体制維持は前提とならざるを得ない。というのも現代社会に生きる以上、何らかの形でアメリカとの政治的軍事的関係が必至となり、ゼロサムで、敵味方に区分されるならば、関係維持以外に方策は考えられない。
非武装中立や対中軍事同盟は空想主義者の言う事であるのは、曲がりなりにも経済大国として、これらの方策を採りえた国が無い事で証明される。例外的に小国でコスタリカの事例があるが、同国は対ニカラグアのCIA拠点であり中米におけるアメリカの拠点たる地位を得る事で非武装を勝ち得た。従って、主権国家としての権能を放棄している事になるように感じる。
さて、ゲオポリティクス論的には単一地域内に存在できる地域大国は一つのみといわれる。このため、東アジアにおける大国は日本か中国と言う事になるが、大陸国家と海洋国家としての区分が地域内に存在するとすれば、大国は二つ存在しえるといえる。潜在的海洋国家である中国は、2004年だけで6000t級駆逐艦3隻を完成させるなど急激にその海軍力の増強を推し進めているが、独自技術開発力が幸いにして低い為、日中海軍力バランスは少なくとも2020年までは逆転しないと言える。この点日本の防衛努力は独自に航空機や護衛艦、レーダー、戦車や火砲、潜水艦までを国産出来る水準を維持した事は大いに評価されるべきだ。
しかし、政治的な背景から、日本は領海内に封じ込められ今日に至る。
海洋国家たるには、アメリカとの同盟関係を維持しつつも、独自防衛力を整備する必要がある。この点、航空母艦への需要が特に大きいにもかかわらず、単なる海上戦略の一環であるはずの事案をあたかも、究極的国家戦略に絡めて空母機動部隊再建に反対した野党や与党一部勢力の責任は大きいが、過去の事を論じるのは建設的ではないため。割愛する。
さて、ここで言うところの航空母艦とは必ずしも米海軍が保有する航空母艦ではない。米海軍の航空母艦に匹敵する艦艇を整備するには財政的に無理がある。過去には、欧州の海軍関係の造船各社がハリアーを運用する軽航空母艦を提案し、中には6000t級のものも掲げられていた、流石にこれは小さすぎ、非現実的ではあるが、小型空母という概念は重要である。
航空母艦とは格納庫に六割、四割を甲板に係留するのが普通であり、ロッテ戦法を行うのに必要な2機×三交代分で、6機のVSTOL戦闘攻撃機、哨戒ヘリ2~3機を搭載する程度であれば、『こんごう』型(満載排水量9400t)程度の船体で充分である。上部構造物を全通飛行甲板とし、艦尾にエレベータを配置する事で、完成する。主機と船体価格で、最も高価なイージスシステムを除けば、800億円程度、『たかなみ』型の650億円よりも高価であるが、現実的価格である。
現行の護衛隊群方式では旗艦用に計4隻となるが、可能であれば各隊群に2隻程度を配備し、計8隻体制を望みたい。そうすれば、一個護衛隊(2~3隻)にイージス艦1隻を加え、タスク編成での機動部隊を有する事が可能だ。また、インド洋対テロ派遣任務のように作戦海域のグローバル化を考慮すると、後方安全海域における航空機整備母艦の必要性が生じる。25000~40000t程度で、速力は艦隊行動を考慮せず22ノット程度、商船規格の航空母艦(英海軍のオーシャン拡大型と理解されたい)を稼働率を考え2隻程度建造する。独自に10機程度の予備航空機を搭載し、前線の艦艇乗員の休養や航空機整備を担う艦艇で、大規模戦闘を考慮しなければオーシャンのように265億円と言うのは無理にしても、800億円以下に収まるのではなかろうか。
少なくとも米海軍の太平洋における露払いでもいい、太平洋において常時米空母に随伴できる部隊の編成が同盟関係を更に進展させ、引いては有事の際における独自作戦能力の整備にもつながると考えたい。
いわば、軽空母とは航空機数を制限すれば現用のDDHと大差ない予算規模で運用が可能である。従って、こうした超小型軽空母の多数整備は考慮すべき提案である。
人員確保の観点から極力自動化を進めることはどの程度可能か、また、VSTOL機としてハリアー機は生産が終了しており、後継たるF-35引渡しは2015年以降となる為、繋ぎのハリアーをライセンス生産するのか中古機を探すか、問題の多い提案だが、ミクロ的問題であり、独自作戦能力整備というマクロ的命題に勝る問題ではない。
究極的には、地方隊・自衛艦隊の艦艇を再編し、三つ乃至二つの艦隊に分け、必要に応じて部隊を捻出すると言う旧海軍の鎮守府と連合艦隊の関係が理想となろうが、第一に、洋上航空作戦能力の充実実現という現実目標の整備を強く提唱したい。
HARUNA