北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊は如何にあるべきか

2005-07-30 23:47:55 | 国際・政治
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 国際政治学上や外交史の関係上、日米安全保障体制維持は前提とならざるを得ない。というのも現代社会に生きる以上、何らかの形でアメリカとの政治的軍事的関係が必至となり、ゼロサムで、敵味方に区分されるならば、関係維持以外に方策は考えられない。
 非武装中立や対中軍事同盟は空想主義者の言う事であるのは、曲がりなりにも経済大国として、これらの方策を採りえた国が無い事で証明される。例外的に小国でコスタリカの事例があるが、同国は対ニカラグアのCIA拠点であり中米におけるアメリカの拠点たる地位を得る事で非武装を勝ち得た。従って、主権国家としての権能を放棄している事になるように感じる。
 さて、ゲオポリティクス論的には単一地域内に存在できる地域大国は一つのみといわれる。このため、東アジアにおける大国は日本か中国と言う事になるが、大陸国家と海洋国家としての区分が地域内に存在するとすれば、大国は二つ存在しえるといえる。潜在的海洋国家である中国は、2004年だけで6000t級駆逐艦3隻を完成させるなど急激にその海軍力の増強を推し進めているが、独自技術開発力が幸いにして低い為、日中海軍力バランスは少なくとも2020年までは逆転しないと言える。この点日本の防衛努力は独自に航空機や護衛艦、レーダー、戦車や火砲、潜水艦までを国産出来る水準を維持した事は大いに評価されるべきだ。
 しかし、政治的な背景から、日本は領海内に封じ込められ今日に至る。
 海洋国家たるには、アメリカとの同盟関係を維持しつつも、独自防衛力を整備する必要がある。この点、航空母艦への需要が特に大きいにもかかわらず、単なる海上戦略の一環であるはずの事案をあたかも、究極的国家戦略に絡めて空母機動部隊再建に反対した野党や与党一部勢力の責任は大きいが、過去の事を論じるのは建設的ではないため。割愛する。
 さて、ここで言うところの航空母艦とは必ずしも米海軍が保有する航空母艦ではない。米海軍の航空母艦に匹敵する艦艇を整備するには財政的に無理がある。過去には、欧州の海軍関係の造船各社がハリアーを運用する軽航空母艦を提案し、中には6000t級のものも掲げられていた、流石にこれは小さすぎ、非現実的ではあるが、小型空母という概念は重要である。
 航空母艦とは格納庫に六割、四割を甲板に係留するのが普通であり、ロッテ戦法を行うのに必要な2機×三交代分で、6機のVSTOL戦闘攻撃機、哨戒ヘリ2~3機を搭載する程度であれば、『こんごう』型(満載排水量9400t)程度の船体で充分である。上部構造物を全通飛行甲板とし、艦尾にエレベータを配置する事で、完成する。主機と船体価格で、最も高価なイージスシステムを除けば、800億円程度、『たかなみ』型の650億円よりも高価であるが、現実的価格である。
 現行の護衛隊群方式では旗艦用に計4隻となるが、可能であれば各隊群に2隻程度を配備し、計8隻体制を望みたい。そうすれば、一個護衛隊(2~3隻)にイージス艦1隻を加え、タスク編成での機動部隊を有する事が可能だ。また、インド洋対テロ派遣任務のように作戦海域のグローバル化を考慮すると、後方安全海域における航空機整備母艦の必要性が生じる。25000~40000t程度で、速力は艦隊行動を考慮せず22ノット程度、商船規格の航空母艦(英海軍のオーシャン拡大型と理解されたい)を稼働率を考え2隻程度建造する。独自に10機程度の予備航空機を搭載し、前線の艦艇乗員の休養や航空機整備を担う艦艇で、大規模戦闘を考慮しなければオーシャンのように265億円と言うのは無理にしても、800億円以下に収まるのではなかろうか。
 少なくとも米海軍の太平洋における露払いでもいい、太平洋において常時米空母に随伴できる部隊の編成が同盟関係を更に進展させ、引いては有事の際における独自作戦能力の整備にもつながると考えたい。
 いわば、軽空母とは航空機数を制限すれば現用のDDHと大差ない予算規模で運用が可能である。従って、こうした超小型軽空母の多数整備は考慮すべき提案である。
 人員確保の観点から極力自動化を進めることはどの程度可能か、また、VSTOL機としてハリアー機は生産が終了しており、後継たるF-35引渡しは2015年以降となる為、繋ぎのハリアーをライセンス生産するのか中古機を探すか、問題の多い提案だが、ミクロ的問題であり、独自作戦能力整備というマクロ的命題に勝る問題ではない。
 究極的には、地方隊・自衛艦隊の艦艇を再編し、三つ乃至二つの艦隊に分け、必要に応じて部隊を捻出すると言う旧海軍の鎮守府と連合艦隊の関係が理想となろうが、第一に、洋上航空作戦能力の充実実現という現実目標の整備を強く提唱したい。
 HARUNA

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亡国のイージス

2005-07-30 22:55:24 | 映画
 本日公開の映画、『亡国のイージス』を評論する。
 いい作品とは言えるが、少々厳しい評論をすると、原作の雰囲気を大きく損なっている為テーマ性が薄れてしまっている。原作を読まれた方には周知と思われるが、『亡国のイージス』とは新型射撃指揮装置FCS-3(通称ミニイージス)を全護衛艦に装備させ、ミサイル防衛を行おうとしたものである。
 しかし、アメリカの盾としてのイージスに矛盾を感じた際に執筆した論文が発端となっている。しかし、原作は新防衛大綱や同時多発テロ以前のものであり国際情勢は大きく異なっている。この部分を映画に反映させる事に若干の相違があったようである。
 少なくとも、原作では『はたかぜ』型の改良型という設定であった事がドラマ性にサスペンスの要素を加えていた。だが、作品では、ポスターにあるように『みょうこう』が『いそかぜ』として出ている。そうすると、元の『はたかぜ』型を知る先任伍長との駆け引きのシーンが、新型艦ではとれなくなってしまった。まあ、セットの関係からは致し方ないことなのか。
 転勤のある幹部自衛官と艦を根城とする曹士との関係が描かれていた。しかし、この点の説明が充分為されていなかった為、海上自衛隊の特質をかなり理解していなければ本質が見えないのではなかろうか、と思った。自衛隊の弁護をするとすれば、映画に出た宮津学校出身の幹部自衛官は、元は曹士出身であったのが、励まされ幹部試験を合格したと言う設定である。無理して幹部になったというイメージであった。防衛大学校出身の海上自衛隊幹部と何度も会ったが、いい意味で海軍の伝統を引き継いでいる。
 さて、アクション映画としての本作を評価すると、まあ、先任伍長が若すぎた点を除けば合格である。銃撃戦のシーンも遮蔽物確保といったところは海上自衛隊であるし、その意味リアルである。F-2を登場させたのは原作とは異なるが、逆に自然であったし、何よりも海上自衛隊全面協力である。この点を一番評価したい。さて、先任伍長とは、海曹のなかで最もその艦の経験が長い者に与えられる名誉で、給与には反映されないが、その艦の長老であるといえる。西田敏行か、山崎努あたりを期待したかった。
 ちなみに、公開初日、岐阜の450席ある映画館では、1250時上映の回で客席は33名であった。
 HARUNA

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日本の一番長い日

2005-07-30 09:40:12 | 映画
 7月22日にDVDとして発売された『日本の一番長い日』
 東宝映画創設35周年の大作として製作された作品で、岡本喜八監督の作風の分岐点であり、東宝815シリーズの第一作である。
 ポツダム宣言受諾と終戦の日が一日時差があることは中学受験でも知られる事象であるが、それは何故かと聞かれれば明確な答えは大学院生でも出せないものである。ある人は国際法上の条約締結と国内法に基づく発効の差異であるといい、またある人はただ単に時差であるという。
 ポツダム宣言受諾は戦後歴史観では、一大転換点であり日本民族が滅亡から逃れたという好意的印象から見られているが、逆に歴史上異例の、国家の無条件降伏であった。即ち、当時の人々にすればそれまでの人生を全て否定した瞬間であり、第一線兵士は先立つ戦友への申し訳なさ、銃後の人々は結果的に生きる喜びを実感したわけだが、空虚の極みであったといえる。
 さて、映画を見ると、その終戦は今でこそ8.15は国民周知の事実として受け止められているが、終戦に決まったのは偶然の重なりであった事が判る。作品そのものは群場劇であり、いうならば劇場で観る大河ドラマといった向きがある。
 二木柳寛演じる大西軍令部次長が『日本人の二千万を特攻に出せば、必ず、必ず勝てますッ』と絶叫するのは戦争の狂気を感じる。また、本土決戦という一大会戦を行うまでは戦争継続を叫ぶ陸軍省と、その利益代表といった立場をとる三船敏郎演じる阿南陸相が、天皇や重臣の説得との板挟みになるシーンは、ただ単に戦争を終わらせる事が以下に難しいかをしめした。海軍きっての和平派で山村聡演じる米内海相との激論や、和平を声高に叫び反乱軍に自宅を襲われる笠智衆演じる鈴木総理、そしてついに起こる近衛師団決起将校による叛乱、これらを描いた本作は、大日本帝国最後の日を示す一大大作といえる。
 さてさて、戦後60年というまたまた区切りが刻まれた本年、本作の鑑賞を是非薦めるものである。

 HARUNA

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