■ファンボロー直前新報道
イギリスでのファンボロー国際航空ショー2022が間近となっていますが航空関係で驚きの報道が在りました。その報道の背景を考えてみましょう。

ロイター通信は7月14日“日英、戦闘機開発計画の統合検討-年内の合意を目指す=関係者”という報道を行いました、情報源は事情を知る日英の関係者3名とのことですが、日本のF-2戦闘機とイギリスのユーロファイター戦闘機の後継機を同一機種により更新するというもので、日本とイギリスは対等な開発となり、18日頃に新しい発表がある可能性も。

ファンボロー国際航空ショーが7月18日より開始され、テンペストに関して新しい施策が示されると考えられています。ただ、テンペスト計画にはスウェーデンやイタリアにトルコなど複数国が参画や部分参加を示しており、どの程度対等性が確保されるのかは未知数です、他方IHIとロールスロイス社が2017年より将来戦闘機共同開発の模索も進んでいる。

日英の対等、この意味するところは恐らく費用負担の面です、防衛省はF-2戦闘機後継機計画を総事業費で五兆円規模と概算していますが、イギリスからの視点ではこの総事業費の内開発費を考えた場合は両国が対等に参画できることを算定しているのでしょう、ただ、対等とはいえ、上記の通り他の開発国も参加する為、二カ国のみの開発とはなりません。

国際共同開発、しかし、日本にとり安心できる要素としては、イギリスは国際共同開発ではジャギュア攻撃機やトーネードADV戦闘機など、結局開発が空中分解しても途中の段階で妥協案に充分な性能の機体を開発しており、無理を圧しとおして開発計画そのものを破綻させるような悲劇を回避する経験に長けており、成功よりも軟着陸を得意としています。

テンペスト戦闘機、イギリスが開発する第六世代戦闘機ですが、第五世代戦闘機に対抗できる性能と共にイギリスでは第六世代戦闘機の定義を第五世代戦闘機よりも安価に開発し製造できるもの、としています。日英共同開発が急に強調された背景について、一つ留意したいのは日本がF-2後継機で必死なように、イギリスにも必至となる背景があるのです。

タイフーン戦闘機の寿命という問題、イギリス空軍はF-35B戦闘機とユーロファイタータイフーン戦闘機の国際共同開発に同時に参画し共に筆頭開発国となるなど、戦闘機の開発費用という面ではかなり無理を強いています、そして、タイフーン戦闘機は冷戦時代中期に設計されたアメリカ製F-15のような過度な強度を有するものとはなっていません。

後継機というものを必要とする背景には、タイフーン戦闘機の構造寿命が延長できるような設計ではなく、耐用年数というものが刻々と迫っている実情があります。開発計画の無理な遅延や仕様変更などは無く、ステイクホルダーとなり開発費用を捻出できる対等な開発参加国を探している、こうした視点で見ますと、日英の立場が類似している事に気付く。

ただ、第六世代戦闘機の開発は簡単ではありません、日本の製造業が、特に航空産業がどの程度、例えばボーイングが進めているメタバース環境という電子仮想空間での世界を結ぶ共同開発に対応するのか、そして日本の製造業が金属3DプリンターなどイギリスのBAEシステムズが2000年代から進めている部品製造技術に追随しているかが、未知数なのだ。

一方、日本は戦闘機こそF-2戦闘機製造終了から空白期がありますが、P-1哨戒機とC-2輸送機にUS-2救難飛行艇の製造は継続していますし、ボーイング787の部分製造など国際分業への経験はあり、そして武器輸出三原則の見直しも終わりました。日英共同開発は難しい道程なのかもしれませんが、分解せず軟着陸し無難な選択肢なのかもしれませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
イギリスでのファンボロー国際航空ショー2022が間近となっていますが航空関係で驚きの報道が在りました。その報道の背景を考えてみましょう。

ロイター通信は7月14日“日英、戦闘機開発計画の統合検討-年内の合意を目指す=関係者”という報道を行いました、情報源は事情を知る日英の関係者3名とのことですが、日本のF-2戦闘機とイギリスのユーロファイター戦闘機の後継機を同一機種により更新するというもので、日本とイギリスは対等な開発となり、18日頃に新しい発表がある可能性も。

ファンボロー国際航空ショーが7月18日より開始され、テンペストに関して新しい施策が示されると考えられています。ただ、テンペスト計画にはスウェーデンやイタリアにトルコなど複数国が参画や部分参加を示しており、どの程度対等性が確保されるのかは未知数です、他方IHIとロールスロイス社が2017年より将来戦闘機共同開発の模索も進んでいる。

日英の対等、この意味するところは恐らく費用負担の面です、防衛省はF-2戦闘機後継機計画を総事業費で五兆円規模と概算していますが、イギリスからの視点ではこの総事業費の内開発費を考えた場合は両国が対等に参画できることを算定しているのでしょう、ただ、対等とはいえ、上記の通り他の開発国も参加する為、二カ国のみの開発とはなりません。

国際共同開発、しかし、日本にとり安心できる要素としては、イギリスは国際共同開発ではジャギュア攻撃機やトーネードADV戦闘機など、結局開発が空中分解しても途中の段階で妥協案に充分な性能の機体を開発しており、無理を圧しとおして開発計画そのものを破綻させるような悲劇を回避する経験に長けており、成功よりも軟着陸を得意としています。

テンペスト戦闘機、イギリスが開発する第六世代戦闘機ですが、第五世代戦闘機に対抗できる性能と共にイギリスでは第六世代戦闘機の定義を第五世代戦闘機よりも安価に開発し製造できるもの、としています。日英共同開発が急に強調された背景について、一つ留意したいのは日本がF-2後継機で必死なように、イギリスにも必至となる背景があるのです。

タイフーン戦闘機の寿命という問題、イギリス空軍はF-35B戦闘機とユーロファイタータイフーン戦闘機の国際共同開発に同時に参画し共に筆頭開発国となるなど、戦闘機の開発費用という面ではかなり無理を強いています、そして、タイフーン戦闘機は冷戦時代中期に設計されたアメリカ製F-15のような過度な強度を有するものとはなっていません。

後継機というものを必要とする背景には、タイフーン戦闘機の構造寿命が延長できるような設計ではなく、耐用年数というものが刻々と迫っている実情があります。開発計画の無理な遅延や仕様変更などは無く、ステイクホルダーとなり開発費用を捻出できる対等な開発参加国を探している、こうした視点で見ますと、日英の立場が類似している事に気付く。

ただ、第六世代戦闘機の開発は簡単ではありません、日本の製造業が、特に航空産業がどの程度、例えばボーイングが進めているメタバース環境という電子仮想空間での世界を結ぶ共同開発に対応するのか、そして日本の製造業が金属3DプリンターなどイギリスのBAEシステムズが2000年代から進めている部品製造技術に追随しているかが、未知数なのだ。

一方、日本は戦闘機こそF-2戦闘機製造終了から空白期がありますが、P-1哨戒機とC-2輸送機にUS-2救難飛行艇の製造は継続していますし、ボーイング787の部分製造など国際分業への経験はあり、そして武器輸出三原則の見直しも終わりました。日英共同開発は難しい道程なのかもしれませんが、分解せず軟着陸し無難な選択肢なのかもしれませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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