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自衛隊哨戒艦-ジャパンマリンユナイテッド案に決定,中期防衛力整備計画四隻建造予定のOPV外洋哨戒艦

2022-07-14 20:01:31 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-自衛隊哨戒艦
 これまでどういった設計となるのかが謎に包まれていました自衛隊の哨戒艦建造に動きがありました。

 防衛省は6月30日、海上自衛隊へ配備させるOPV外洋哨戒艦について、ジャパンマリンユナイテッドが選ばれたと発表しました。これは昨年10月29日に防衛省が実施した計画提案公募として各社が提示したもので、防衛省からの要求は、乗員30名規模で将来の自律航行を念頭に置く、ISR紹介監視任務に対応する性能、また中口径機関砲を備えること。

 哨戒艦に関する要求は、上記に加え、多目的格納庫を有し、モジュール方式のモジュラーデッキスペースの確保とコンテナ化されたモジュール、そして低燃費である事と整備性などの面で運用負担の低さ、というもの。海上自衛隊は中期防衛力整備計画に4隻の哨戒艦建造を盛り込んでおり、防衛計画の大綱では哨戒艦12隻を整備する事が明記されています。

 自衛隊が哨戒艦を必要とする背景には、近年の中国艦とロシア艦による日本周辺海域の行動増大です、護衛艦も自衛隊には多数配備されていますが、護衛艦の任務は他国艦艇の監視ではなく有事の際の水上戦闘に打ち勝つ事、この為に年次訓練計画が立てられています。外国艦艇監視は片手間で行ってきましたが、頻度増加により負担が目立ってきたかたち。

 OPV外洋哨戒艦に期待されるのは、昨今、中国艦やロシア艦の警戒監視に護衛艦のみならず、掃海艇や訓練支援艦に補給艦まで動員している状況があり、哨戒艦はまさに平時における実任務の専用艦に当る事から、警戒監視任務を専従の艦艇に行わせる事にあります。将来的にはアフリカ沖での海賊対処任務なども護衛艦に代わる事となるかもしれない。

 哨戒艦について、概要は不明ですが長期間の行動を想定し、乗員の個室区画が多くなる可能性もあります。これは今年竣工した5000t型油船、海上自衛隊支援船として最大のものとなった、基地間の燃料輸送にあたる支援船が連続して結果的に長期間の航海となる事を想定し、幹部は勿論、曹士に至るまで全員が個室となっている設計が採用されています。

 乗員区画への配慮、任務が警戒監視であることから、母港に停泊できる期間は限られます。他方、哨戒艦は装備の面から水上戦闘を想定する必要がないと考えられ、この為にダメージコントロール要員などは海上保安庁の巡視船並みに抑えられる可能性もあり、すると船体規模に対して一人あたりの容積、乗員区画に余裕を持たせられる可能性もあるのですね。

 灰色の巡視船、自衛隊が導入するものは海上保安庁が運用する巡視船を灰色塗装としたものといえるのかもしれません。それならば海上保安庁が対応すれば良いと思われるかも知れませんが、海上保安庁法や海上保安庁組織規則では法執行機関である海上保安庁は公船を運行しており外国公船へ対応する事は出来ますが、国際法上の軍艦には対応できません。

 国際法上の軍艦と公船は異なるものであり、例えば海上保安庁にはかなり大型の巡視船が多数運用されているものの、軍艦に対しては国際法上の軍艦に当る自衛艦しか対応できません、この為に海上自衛隊が哨戒艦を運用する、ということになります。法的位置づけが同じならば、武装ではなく法的位置づけで相手に国際法上の義務を履行させる事が可能だ。

 警察も自衛隊もパジェロを採用していますし、公用車のクラウンと警察のクラウンパトカーももとは同じだが法的な位置づけが異なる、国際法と国内法が違いますので開設のためとはいえ簡略化しすぎた理念ではあるのですけれども、今回建造が決定した海上自衛隊のOPV外洋哨戒艦、巡視船と哨戒艦の違いはこう、考える事が出来るかもしれません。

 イギリスはリバー級哨戒艦をインド太平洋地域へ恒久的に配備する計画があります、これは2021年7月にイギリスのウォレス国防相が来日した際に表明された計画で、哨戒艦を中心にLRG沿岸即応隊を編成するとしています。リバー級哨戒艦は1700tのバッチⅠと2000tのバッチⅡがあり、30mm機関砲を搭載する他、乗員は34名規模となっています。

 リバー級哨戒艦は同時に海兵隊員50名が同乗可能で、必要に応じ権益保護等に当る艦です。場合によっては日英間の哨戒艦同士の訓練が恒常的に行われる可能性もありますし、特に我が国の同盟国であるアメリカは哨戒艇は保有しているものの、沿岸警備隊が事実上の海軍第一艦隊という位置づけであり、独自の哨戒艦はアメリカ海軍には配備されていません。

 LRG沿岸即応隊は日本やオーストラリアとの協力に当るともウォレス国防相は発言しており、例えば日本の哨戒艦運用についてもイギリスの支援を受けるということもあるのでしょうか。イギリスは海洋法執行任務も海軍の所管としており、これは日本の旧海軍と同じなのですが、戦後に海上保安庁へ移管した日本には大きな参考となるのかもしれません。


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1 コメント

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Unknown (Discotheque)
2022-07-24 06:01:02
基準排水量1900tでたった30mm機関砲1門かあ。せめてイタリア海軍のコマンダンテ級哨戒艦のようなフネにして欲しかったなあ。
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