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新しい88艦隊と反撃能力整備【1】八月八日は88艦隊の日-護衛艦隊護衛隊群隷下の護衛隊編成を統一すべきだ

2023-08-08 20:08:11 | 北大路機関特別企画
■八月八日は88艦隊の日
 北大路機関毎年恒例の”88艦隊の日”ですが本年は昨年末の国家防衛戦略に"反撃能力"が明記され国民と共に国土での本土決戦主義の防衛戦略から政府が決別の覚悟を示して最初に迎える八月八日です。

 新しい88艦隊、八月八日は88艦隊の日です。毎年のように提唱していますが、現在海上自衛隊の護衛艦隊を構成する4個護衛隊群には第1護衛隊群に第1護衛隊と第5護衛隊、第2護衛隊群に第2護衛隊と第6護衛隊、第3護衛隊群に第3護衛隊と第7護衛隊、第4護衛隊群に第4護衛隊と第8護衛隊がおかれています。この編成を統一してはという案だ。

 88艦隊、これは旧海軍が最新鋭の戦艦八隻と巡洋戦艦八隻から成る決戦兵力を中心とした一大艦隊を整備しようと試みた八八艦隊、毎年長門型戦艦同等以上の巨大戦艦を2隻建造し巡洋艦や艦隊駆逐艦と航空機や潜水艦も大量建造する、8年間で第一線を退役させ最新鋭艦で置換え続けるという、夢か財政破綻かという案を海上自衛隊が細やかに継承したもの。

 八八艦隊と異なり、海上自衛隊の構想は護衛艦隊を構成する四個護衛隊群を、護衛艦8隻と哨戒ヘリコプター8機から構成させ、護衛隊群だけでの外洋での独立した作戦能力を付与させる構想で、これは、はるな型護衛艦、はつゆき型護衛艦などの建造により完成しています。しかし、今回提案するのは、護衛隊に、外洋での独立作戦能力を保持するのが狙い。

 護衛隊群の隷下護衛隊編成を統一して、具体的に言えば現在各護衛隊群に1隻のみが配備されているヘリコプター搭載護衛艦について、すべての護衛隊に配備する必要性を毎年八月八日に提唱しているものです。特に現在のヘリコプター搭載護衛艦は全通飛行甲板型護衛艦であり、種別こそDD,駆逐艦ですが多数の航空機を運用できる大きな能力があります。

 ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、海上自衛隊には現在4隻のヘリコプター搭載護衛艦があり、この4隻を、率直に言えば8隻体制としたうえで、護衛隊の編成をヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦、そしてこれを支援する汎用護衛艦2隻という4隻の編成に転換する、編成の統一とは、こうした提案です。もちろんこれは簡単なことではありません。

 ヘリコプター搭載護衛艦4隻を建造するには、汎用護衛艦枠を削る必要があり、具体的に言えばまもなく艦齢30年を迎える護衛艦むらさめ型後継艦枠を9隻から4隻間引いた5隻体制とする必要が出てきます。同時にヘリコプター搭載護衛艦と汎用護衛艦では乗員数が200名多く、4隻増強は単純計算で800名の増員が必要となるのです。単純に言えば苦しい。

 ヘリコプター搭載護衛艦の増強にはもう一つ、海上自衛隊で近年問題となっている岸壁や桟橋の接岸能力という問題もあり、特に浮き桟橋の場合は大きなヘリコプター搭載護衛艦の接岸には限界があり、呉基地などでは不便な沖留めを強いられる状況も散見されます。つまり、これは既存の防衛力延長線上では簡単には実現できない。政治決断が無ければ。

 政治的に海上自衛隊には新しい88艦隊が必要だ、という認識がなければ実現は、特に人員面で難しいのですが、台湾海峡の緊張とロシアウクライナ戦争、この緊張が過去一年間と比較してもその増大が顕著であり、防衛に関する、防衛費が増額されるとはいえ無駄遣いの許されないリソースを88艦隊に集約させる正当性とはならないか、無理してでも、と。

 台湾海峡について。中国は台湾海峡有事を決断する場合に、どの程度アメリカや日本、そして世界の関心を想定しているのか中国指導部の意志は未知数です。しかし、ロシアウクライナ戦争について、アメリカのバイデン大統領が、米軍をウクライナへ展開させることはないと明言し関心が薄いとプーチン大統領に誤解させた可能性から始まったのでは、と。

 中国指導部がアメリカの本気度を見誤り、つまり、限定戦争であり核兵器を使わなければ黙認されるのではないか、という誤解を与えてしまえば、その瞬間に台湾海峡有事から台湾有事へ問題が大きく拡大し、手に負えない、第二次世界大戦以来の規模での空母同士の海上戦闘や潜水艦戦、人類が経験したことのない規模のミサイル戦闘に繋がる懸念がある。

 新しい88艦隊は、こうした状況において、一つは単純にF-35Bの母艦能力を有する艦艇が増える、としたF-35B代替滑走路的な運用という利点があるのですが、実のところそれ以上に、戦争というものを意識させ抑止力を行使するという用途に用いられる数少ない装備です。たとえば、これはマハン的な視点、そう海洋権力行使論的な視点で考える必要が。

 シーレーンをどこで遮断されると厳しいのか。日本は太平洋戦争において、戦争遂行能力ではなく国土保全を第一に軍事戦略を立て敗北しました。マリアナ以遠でくい止める絶対国防圏の発想がまさに当てはまり、南方資源地帯と本土を結ぶシーレーンの維持こそが戦争遂行能力、艦艇や航空機を増産する生命線という視点が抜け落ちていたように思えます。

 台湾海峡有事を画策する側において、その生命線はどこなのか。中東からの石油シーレーンか、東南アジアとの多国間国際分業のネットワークを司るシーレーンか、もちろん穀物輸送路の場合は鉄道というシーレーンに依存しない選択肢もあるにはあるのですが、どこを遮断されると厳しいのか、という視点を、憲法の神学論争を越え海軍戦略から考えたい。

 インド洋やアラビア海、いや大西洋地域までのパワープロジェクションを考える場合、無論同盟国の航空基地を用いて作戦部隊を展開させる手法が無いわけではないのですが、相手が遮断されたらば痛い、もしくは対策を考えなければならない地域へ作戦部隊を長期間展開させる手段は艦隊、そして航空機を兼ね持つ部隊でなければ任務には対応できません。新しい88艦隊が必要なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
新しい (砂浜次郎)
2023-08-09 10:29:16
そして、F35Cや国産戦闘機も考慮した、いずも型より新しいDDHも建造するべきです。
返信する
 (砂浜次郎)
2023-08-09 10:30:15
そして、国産戦闘機やF35Cも考慮した、新たなDDHも必要です
返信する

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