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ウクライナ情勢-戦場衛生基盤限界による四肢喪失多発と両軍が戦果主張のクピャンスク・スヴァトヴェ間の激戦

2023-08-09 07:00:44 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 本日は長崎原爆慰霊の日ですが平和祈念とはかけ離れた状況がウクライナでは続いています。そして戦場衛生基盤については自衛隊も学ぶべき点があるのでしょうか。

 ウクライナ国内では四肢喪失事例が既に数万件に上っているとみられる、ウォ-ルストリートジャーナルが報じました。これは戦闘により生じた重傷者や応急措置の遅れによる壊疽などから四肢切断を余儀なくされる状況で、広報とされる西部のリヴィウ医療機関だけでも過去1年間に5万3000件以上もの四肢切断手術が行われているという。

 イラク戦争やアフガニスタン治安作戦において、戦闘防弾チョッキや個人用応急措置装備の普及により、過去の戦争であれば救命が叶わなかった事例でも生存救命に成功した事例とともに、しかしその代償として四肢切断を余儀なくされる事例が報告されています。そしてウクライナでの医療切迫は四肢切断が有力な外科手術手段となっている状況だ。

 ウォールストリートジャーナルによれば、第一次世界大戦の数字を引用し、ドイツでは6万7000名とイギリスでは4万1000名が四肢切断を余儀なくされた点を紹介、第一次世界大戦では戦傷者の救命率も戦死者数も根本から異なりますが、ウクライナの戦後復興を考えるうえで、少なくない規模の四肢喪失退役兵は厳しい影を落とすことでしょう。
■クピャンスク-スヴァトヴェ
 ウクライナでは大規模な地上戦闘が続いています。

 クピャンスク-スヴァトヴェ間の攻防戦が激化している、8月2日付ISWアメリカ戦争研究所戦況報告が分析結果を公表しました。ロシア側はこの地域での攻撃前進を発表し、ウクライナ軍もこの地域での反撃を発表しています、しかし双方ともに顕著な前進が確認されていません。これは双方ともに激戦により前進を果たせていない証左です。

 クピャンスク-スヴァトヴェ間が激戦となる背景には、南部でのウクライナ軍反撃に対する揺動という側面はありますが、それ以上に南部地域はクリミア半島との鉄道輸送路が断続的に橋梁破壊を受け頓挫しており兵站線が寸断されている状況にあり、ロシア本土からの補給線を維持することができる地域でのロシア軍行動が活性化しているのでしょう。

 バフムト、東部戦線のもう一つの焦点は昨年からロシア側が攻撃を継続しているバフムトでの戦闘ですが、第57自動車化狙撃旅団がバフムト地域において部分的に攻撃に成功したとロシア側一部報道が示唆しています。しかし顕著な前進は確認されず、旅団は横溢戦闘加入ではなく、分散投入若しくは逐次投入されている可能性があるようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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