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カリスマの存在101 【J特】

2011-12-24 00:55:26 | カリスマの存在

 やっと日経の特集を紹介できます。「柏革命 J1初制覇」というタイトルで日経新聞のスポーツ欄で12月4日から3日間にわたって特集されています。なかなかいい内容で、読んで欲しい顔がいくつも浮かんだので、抜粋して紹介します。ただし、今までよく出たキーワードやコメントなどは省略します。
   
 2009年にクラブが立てた4ケ年計画では、'10年にJ1復帰、'11年にJ1で9位以内、'12年に5位以内、'13年に優勝を目指すとしていたそうです。'11年の目標でクラブは1ケタ順位で監督は6位以内と自ら目標を修正したとか。
 すべての練習は勝つためにやり、練習試合も勝つためにする。監督は高校生相手でも、「巧みなパスを寸断するために、ここをこうしよう」と細かく指示。控え組のガス抜きや調整で練習試合はしない。過密日程になっても、次の試合のために主力を休ませることもなく、選手の意識を改革。「自陣ゴール前での確実なプレー」「悪い取られ方をしない」「切り替えを速くする」などの勝利の原則を守る。
 「我々のスタンダードを試合で出す事が大事」と繰り返し、柏のサッカーに強烈な特徴はなく、形容はしがたい。「勝つためにしなくてはならないプレーを集積したもの」が柏のサッカー。選手達は試合を読み、誰がフリーになりやすい状態か探り、その選手を有効に使う。組織守備が相手にはまるまでは無理をしない。これらのスタンダード、普遍性を獲得した事で優勝できた。

 監督の選手選考基準は、「過去の実績は考慮しない」「情を挟まない」「ムードメーカーをベンチに置かない」で、コンディションと、その1戦をどう戦うかを念頭に置き、最適の11人を先発させ、次の7人をベンチに置く。選手起用の基準が明確だから正しい競争がある。監督は控え選手をなだめるのではなく、「こういう役割を与えているのに、できていないんじゃないか」と問う。そう言われると外された選手も納得する。「体」のケアも含めて、非常にレベルの高いところで、個々が試合のための準備をしている」と大谷主将。控え選手が活躍するのは偶然ではなく、規律が保たれているから。
 監督は相手の個々の特徴、チームとしての狙いを説き、自分達の戦い方を授け、求められているのは、理解力と適応力という事で、以前に出た「考えるサッカー」になってきます。ただ頑張っているだけではダメで、頑張りの質とセンス。質の悪い頑張り(約束事から外れたプレー等)はマイナスに働く事もあると。

 '06年からクラブはフロント改革を断行。「チームが勝てないのは会社の責任と、全職員が認識する事から始めた」「どんなにいい選手がいても、クラブの器が整っていなかったら、力を発揮してもらえない」と。
 '06年から支持者の声を聞く場として、サポーターズカンファレンスとイエローハウスを開催。(問い合わせを受けて、サポーターに「やらないのか」とちょっと聞いてみただけでその話を終わらせたという他所の事例とは違います) この時にクラブが抱える課題を洗い出し始めたそうです。「サイン会などのイベントが減っている」「子ども連れが観戦しやすい席を設けて欲しい」「芝の状態が良くないのでは」「強化担当者は成績不振の責任を取らないのか」など。
 2ケ月に1度のイエローハウスの参加者は30人以上の時も1人の時もあったとか。議事録は公式サイトで公開する他に、「ご意見メール」も受け付けている。すべての要望に応えられないが、クラブが取り組んでいる事の成果の確認の場にもなるとしています。
J1柏公式HPイエローハウス議事録:http://blog.reysol.co.jp/news/2011/012722.html
 
 器の整備の軸は当然、経営基盤の強化になる。今シーズン予算の収入は約27億円で、J1では中規模。(予算で成績が決まるという考え方は当てはまらず) 「一般経費をできる限り削って、できれば30億円の売上で、その7割をチームに投じたい」という事で、グッズ直営店(レイソリスタ)の閉店、入場券の販路の限定(ローソンチケット)で、経費を半減。スカウト職を無くし、普及コーチを減らしたそうです。
 一時的なサービスの低下の懸念はあるが、「まずはコンパクトで効率的な経営を目指す。その中でチーム人件費を高く保って、魅力あるチームを作り、入場料収入を増やす。それからおもてなしの質を上げていきたい」と。

 この春には親会社から日立柏サッカー場を譲渡。現物出資という形で1億円に増資し、債務超過を解消。スタジアムの評価額を10億円としたため、資本金を除く9億円は資本準備金になった。スタジアムは現在工事中で、来春から大きくなります。
 監督はクラブに「自分達を卑下しないで欲しい」と諭したとか。かつてのクラブにあった「これくらいで十分」という中流意識を溶かした事が出発点になり、クラブの総合力が上がったと締めくくっています。
    
 現場の話は最近よく聞く話なので、ここで詳しく触れませんが、「チームが勝てないのは会社の責任」と自覚し、中流意識を捨てて、できる範囲から上を目指していったのはすごいと思います。ここでも思うのは「情報共有」。保身のためか情報を限りなく出したがらないクラブも見受けられる中、こちらのクラブはファン・サポーター目線で、地域全体と情報公開・共有をされています。サポカンの度合もJリーグナンバー1でしょう。商業の世界でも、顧客の声を積極的に聞くのは常識とされ、最近は行政でも「ご意見箱」を設置しています。(どこという訳ではありませんが)自由に投函できる「社長直行便 ご意見箱」をスタジアムに設置されてはいかがでしょうか。「メールだと、後が恐い」という声を聞いた事があります。(あくまでネット上です) あと、Jリーグでも、こういう意見を広く受け付けられる窓口を設けるべきだと思います。以前に実施された「Jリーグアンケート」では、有意義な意見が集まったと聞いているので。

 いい選手が来ないのはハード面が理由という話を聞いた事がありますが、これらの「クラブの器」も大きいと思います。選手同士の横の連絡で、あそこのクラブはどうのこうの、担当者がどうと情報が回っていると思います。J1川崎ではサッカー以外の活動が多くても、「クラブの器」を耳にして「行ってもいい」と思うのではないでしょうか。
 ちなみに、イコールではありませんが、当ブログでは「Jクラブの付加価値」という分析をしています。(また前の記事を探して下さい) これもクラブの器です。こういう「いい」クラブだから、応援したいという気持ちを集めるもの。例え故郷に帰って、地元に別のクラブがあっても、元々応援していたチームを応援する気持ちが減らない要因部分だと思います。器や付加価値が高ければ、問答無用で地元クラブだけに心が動くでしょう。その辺りが「根を張る」という表現でもあると思います。根が張れていない軽い存在であれば、「やっぱ、あっちのチームの方がいいぞ」と思われてしまうのではないでしょうか。いわゆる兼任サポの発生状況です。

 Jクラブさんもこのブログを観られている所がいくつもあると思いますが、ぜひ「ご意見箱」をスタジアムに設置してみて下さい。情報公開、共有を促進して下さい。地域に根を張って下さい。某黄色いチームは、親企業がありますが、限りなく開かれた市民クラブです。
 最後にネルシーニョ監督について、報道等では采配や選手起用法ばかり取り上げられていますが、実は「高度な戦術」が備わっている事をよく知っています。ネルシーニョマジックと言われていますが、マジックではありません。戦術に基づく采配です。戦術がない監督であれば、同じ事をやっても結果が出せず、選手が混乱するだけでしょう。ネル監督にぜひ、「考えるサッカー」の戦術を聞いてみたいですね。

コメント
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