かくして彼女は宴で語る 作:宮内悠介
日本の文芸サロンとして、実際に存在したのか、
パンの会と呼ばれる、文人詩人画家など、芸術人が集まって、
うまいものを食べながら、あーだこーだと美を語るという集まりを舞台にした、
テーブル推理劇でありました
毎回、誰かが、どっからか聞いてきた不思議な事件の話をあげて、
あーだこーだと、文人たちが推理をひねり出しつつ
最終的にはその店の給仕の女性が、さらっと言い当てると
そういう組み立てでできているものなんだが、
もうちょっと、出てくる文豪なり、文人なりに知識があると
よりいっそう楽しめたのかもなと思うほど、
どうやら、かなり、当時のあれこれを調べて、
実際にその時分に、そういう会合で、そんな話ができたかもしれないと
作り上げられているらしいことが、あとがきめいたところでわかるのが
また面白いと思ったのでありました
推理劇自体は、しょせん他人事といってはあれなんだが、
そういう会での余興といった扱いなので、
割と悲惨というか、悲しい事件も取り扱われたりするんだが
それを肴に酒を飲んでいるなんていうことばかりで、
白秋やら、啄木やら、ニヒルというか、正直ヤなやつだなと思わせる
様々な文人たちが、自分なりの矜持とともに、
少しばかり楽しんでいく、そういう姿が見られるのが
なかなか魅力的な物語でありました
印象的だったのは、浅草のタワーの話で、
いだてんとかで、出てきてたなと思って感慨深く読んだんだが、
あのふもとあたりは、存外治安がよろしくなかったのか
その頃の市井描写が面白くて、文人サロンという
ちょっとした金持ちの余興めいたそれながらも、
実際の世相なんかの凝った描写が面白く、ガス灯の世界なんかを思い浮かべると
いい感じの楽しさがあると思えたのでありました
話としてのまとまりをつけるためにと言うと雅美がないが
社会風刺ではないけども、何かしらのそういった批評めいた目的が
事件に組み込まれているかのようでもあるのが、
最後の話につながっていくというのは
ややできすぎだけど、そういう風に考えたくなる、あるいは
考えなくてはならないというのが、あの頃の文人の使命のようにも思えて
違和感なく読み終えたのでありました
日本の文芸サロンとして、実際に存在したのか、
パンの会と呼ばれる、文人詩人画家など、芸術人が集まって、
うまいものを食べながら、あーだこーだと美を語るという集まりを舞台にした、
テーブル推理劇でありました
毎回、誰かが、どっからか聞いてきた不思議な事件の話をあげて、
あーだこーだと、文人たちが推理をひねり出しつつ
最終的にはその店の給仕の女性が、さらっと言い当てると
そういう組み立てでできているものなんだが、
もうちょっと、出てくる文豪なり、文人なりに知識があると
よりいっそう楽しめたのかもなと思うほど、
どうやら、かなり、当時のあれこれを調べて、
実際にその時分に、そういう会合で、そんな話ができたかもしれないと
作り上げられているらしいことが、あとがきめいたところでわかるのが
また面白いと思ったのでありました
推理劇自体は、しょせん他人事といってはあれなんだが、
そういう会での余興といった扱いなので、
割と悲惨というか、悲しい事件も取り扱われたりするんだが
それを肴に酒を飲んでいるなんていうことばかりで、
白秋やら、啄木やら、ニヒルというか、正直ヤなやつだなと思わせる
様々な文人たちが、自分なりの矜持とともに、
少しばかり楽しんでいく、そういう姿が見られるのが
なかなか魅力的な物語でありました
印象的だったのは、浅草のタワーの話で、
いだてんとかで、出てきてたなと思って感慨深く読んだんだが、
あのふもとあたりは、存外治安がよろしくなかったのか
その頃の市井描写が面白くて、文人サロンという
ちょっとした金持ちの余興めいたそれながらも、
実際の世相なんかの凝った描写が面白く、ガス灯の世界なんかを思い浮かべると
いい感じの楽しさがあると思えたのでありました
話としてのまとまりをつけるためにと言うと雅美がないが
社会風刺ではないけども、何かしらのそういった批評めいた目的が
事件に組み込まれているかのようでもあるのが、
最後の話につながっていくというのは
ややできすぎだけど、そういう風に考えたくなる、あるいは
考えなくてはならないというのが、あの頃の文人の使命のようにも思えて
違和感なく読み終えたのでありました