―まるで、昨日の出来事のように―と言う言葉があるけれど、君の入学式の事を思い出すと、そんな感じがするね。三年間と言う日は、本当にあっという間だった。その三年間、私は何をしていたのだろう。
とにかく、入学式のために気合を入れて買った服は、付いてしまった脂肪のせいで着ることは出来なくなってしまったことだけは、確かだけどね。
お着物で気合の入っているお母様も何人かいたけれど、寒いからコートすら脱がない方も大勢居て、高校の卒業式ともなると、本当に保護者は添え物みたいなものかも知れない。だけど、平日だって言うのに、御夫婦で来ている方も多くて羨ましかったな。うちのパパさんなんか、休みだって来やしないわよ。
500余名もいるから、もちろん一人ひとりに卒業証書の手渡しはない。でも、一人ひとりの名前は呼ばれる。自分の子供の返事を耳を済まして聴いていた。親ばかなので、とっても大人っぽい声に聴こえてきた。その声に、彼の三年間を感じたような気がした。
校長先生の話
―志を持て。この志と言うのは、夢を叶えろとかそんなことではなくて、地球のために人類のために、自分は何ができるのかと言う熱い想いを持てと言う意味だ。―と言うような事をおっしゃった。
「熱い想い」・・・この学校の先生には、それがある。
一年の時の三者面談の時、一人一時間の間、私は口を挟む余地がなかった。そういう面談がいいのかは分からない事だが、一時間、先生は勉強をしなければならない、勉強はしなければならないと、熱く熱く語り続けた。私はその熱さに共鳴した。
また、
―レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」の中に・・・―
知ってるわ、「相棒」でお勉強済みよ。
―人は優しくなければ、生きていく資格がないのですよ。―様々な今の時代の有り様に、生きる資格を持てと言う話。
ああ、校長先生は話が巧い。最後に、子供達が生まれた年に生まれた歌は、今も歌い続けられているとおっしゃった。いわば同級生のような、その曲。
―なんだと思いますか。・・・・
それは、長渕剛の『乾杯』と言う曲です。その歌詞の言葉を君達に送って最後の祝福の言葉とします。―と結ばれた。
校歌に引き続いて「仰げば尊し」が歌われたが、この学校の先生方は、この歌を歌われるに相応しいと思った。
生徒退場の時、「一組」と呼ばれると、雄叫びが起こった。「二組」と呼ばれても、「ウォー」と聞こえる。何かと思ったら、クラス名を呼ばれると、子供達は立ち上がり大きな声で「ありがとうございました。」と声を限りに言っていたのだ。
そう言って子供達は学び舎を去っていった。卒業の重みは、後からやってくるものである。
卒業式の前日、ルート君に聞いた。
「三年間、楽しかった?」
「うん、まあまあ。」
まあまあは、彼にとっては充分な合格点だと思っている。
♪かたい絆に想いをよせて語りつくせぬ青春の日々
時には傷つき時には喜び 肩を叩き合ったあの日
・・・・・・
・・・・・・
乾杯!
今君は人生の大きな大きな舞台に立ち
遙かな長い道のりを歩き始めた
君に幸せあれ ♪
長渕剛「乾杯」
とにかく、入学式のために気合を入れて買った服は、付いてしまった脂肪のせいで着ることは出来なくなってしまったことだけは、確かだけどね。
お着物で気合の入っているお母様も何人かいたけれど、寒いからコートすら脱がない方も大勢居て、高校の卒業式ともなると、本当に保護者は添え物みたいなものかも知れない。だけど、平日だって言うのに、御夫婦で来ている方も多くて羨ましかったな。うちのパパさんなんか、休みだって来やしないわよ。
500余名もいるから、もちろん一人ひとりに卒業証書の手渡しはない。でも、一人ひとりの名前は呼ばれる。自分の子供の返事を耳を済まして聴いていた。親ばかなので、とっても大人っぽい声に聴こえてきた。その声に、彼の三年間を感じたような気がした。
校長先生の話
―志を持て。この志と言うのは、夢を叶えろとかそんなことではなくて、地球のために人類のために、自分は何ができるのかと言う熱い想いを持てと言う意味だ。―と言うような事をおっしゃった。
「熱い想い」・・・この学校の先生には、それがある。
一年の時の三者面談の時、一人一時間の間、私は口を挟む余地がなかった。そういう面談がいいのかは分からない事だが、一時間、先生は勉強をしなければならない、勉強はしなければならないと、熱く熱く語り続けた。私はその熱さに共鳴した。
また、
―レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」の中に・・・―
知ってるわ、「相棒」でお勉強済みよ。
―人は優しくなければ、生きていく資格がないのですよ。―様々な今の時代の有り様に、生きる資格を持てと言う話。
ああ、校長先生は話が巧い。最後に、子供達が生まれた年に生まれた歌は、今も歌い続けられているとおっしゃった。いわば同級生のような、その曲。
―なんだと思いますか。・・・・
それは、長渕剛の『乾杯』と言う曲です。その歌詞の言葉を君達に送って最後の祝福の言葉とします。―と結ばれた。
校歌に引き続いて「仰げば尊し」が歌われたが、この学校の先生方は、この歌を歌われるに相応しいと思った。
生徒退場の時、「一組」と呼ばれると、雄叫びが起こった。「二組」と呼ばれても、「ウォー」と聞こえる。何かと思ったら、クラス名を呼ばれると、子供達は立ち上がり大きな声で「ありがとうございました。」と声を限りに言っていたのだ。
そう言って子供達は学び舎を去っていった。卒業の重みは、後からやってくるものである。
卒業式の前日、ルート君に聞いた。
「三年間、楽しかった?」
「うん、まあまあ。」
まあまあは、彼にとっては充分な合格点だと思っている。
♪かたい絆に想いをよせて語りつくせぬ青春の日々
時には傷つき時には喜び 肩を叩き合ったあの日
・・・・・・
・・・・・・
乾杯!
今君は人生の大きな大きな舞台に立ち
遙かな長い道のりを歩き始めた
君に幸せあれ ♪
長渕剛「乾杯」