森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

植木等の「花とおじさん」

2007-03-28 10:55:54 | 同じ時代の船に乗る

植木等さん死去 80歳 「無責任男」で一時代(朝日新聞) - goo ニュース

 

昔、ラジオの深夜放送のリクエストの企画で、一枚しか来なかった葉書の曲をかけると言うものがあった。

出さなかったのだが、出したらかかるかも知れないと思ったのが、この「花とおじさん」だ。この曲は、他の女の人が歌ってヒットしたが、もともとは植木等の曲だ。だから、もちろんその葉書には「植木等の」という文字を忘れてはいけない。

 

私は、この植木等が歌う「花とおじさん」が大好きで、初めて聞いたときからそれ以後いつも、まるで条件反射のように涙が出て来てしまう。

 

「サラリーマンは気楽な家業と来たもんだあ~」と、外では、明るく元気に頑張っている男達。でも、ひっそりとした家に帰って来ると、心を癒してくれるのは、自分を無言で励ましてくれる一輪の花。

その花は、本当の自分を知っていてくれる。優しくて責任感の強い自分のことを・・・

その花に水をあげていると、花は「うん、うん。」と頷いてくれているような気がしてしまう。

 

私は植木等が、大好きだった。だって、彼はスリムでハンサムだったから。私の父より年上だが、イメージが父と重なったのかも知れない。子供の時、いつも行っていた二番館の映画館で「日本一のゴリガン男」と言うのを見た。あんなふうに、智恵を生かして強気で生きてみたいものだなと子供心にも憧れた。

 

 お気楽無責任男を演じていた彼は、実は真面目な責任男だった。でも、たぶん彼のことが好きだった人は、みんなその本当の人柄を知っていたような気がする。

 

 「なんである、アイデアル」
「お呼びでない。」「はい、それまでよ~。」と言う言葉や「スーダラ節」など、たくさんのものを持っていた植木等だが、今私の心を通り過ぎていくのは、この「花とおじさん」だ。

 

この「花とおじさん」ってどんな曲と思われる方は→■

 (もう、リンクしてないともいます。音源が見つかりません。ここにあるよと教えて頂けたら幸いです。)

 

この曲を聴いていると、いつもこんな物語が頭に浮かんできていた。

―  男は(もちろん、キャストは若き日の植木等)、会社ではテキトーに調子良く遣っている会社員だ。ある日路地裏で、足を怪我している少女を助けてしまう。

酔っ払っていた男は、とりあえず家に連れて帰って手当てをしてあげるのだが、少女は自分の事は何も言わない。代わりに、小さな声でこう言った。

 

『あの、治るまでここにいてもいいですか。』

 

 最初は戸惑った男だったが、清楚な感じの少女に、何か事情でもあるんだろうと思い、自分の事もそのうち話すだろうと、何も聞かず置いてあげる事にした。

 

 でも、少女が家に待つ生活は、男にとっても予想以上に楽しいものだった。足を怪我している少女はこれといって何もしてくれるわけではないが、一緒に食事をし、今日あったことを話す。少女は微笑みながら聞いている。

 

男はだんだん、生活に張り合いが出てきた。

 

 だけど、そんな矢先。家に戻ると、少女が部屋の中で倒れていた。驚いて抱きかかえ
『どうしたんだよ。』と声をかけると、少女はやっぱり、小さな声で
『ごめんなさい、あたし本当は・・』と言って、息だえてしまった。

 

少女の事は、警察にも届けたが、結局何も分からないままだった。死因さえ、突然死と言われただけで、本当の事は何一つ分からなかった。

 

 ある日男は、スィトピーやデイジーや、マーガレットなどの花を買って不器用に花瓶に入れ、少女がいつも座っていた場所の近くに飾った。その花を見ていたら、涙が込み上げてきて、男は大きな声を張り上げて泣いた。

 

 ある日の会社。通りがかりに課長が男の肩をぽんと叩いて
『例の件、またテキトーによろしく頼むよ。』と言うと、男は
『俺、遣りませんよ。』と言っている。
『えっ。』課長は驚くが
『俺、テキトーになんか遣りませんよ。一生懸命に遣りますから。』
そんな風に呟く男の姿があった。 ―

 

植木等さん、楽しい時代をありがとう。


 

 

コメント (2)
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