子供の声というのは、なにやらどんな演技より強い説得力があるときがある。泥人形が壊れる時「止めてくだされ」と呟くようにいったとき、不用意に涙が出た。
司が外で男から丸太を預かってくる。赤目が登場してきた。その木の塊は、凶事しか占わない占い師に姿を変えて、母、絹が三日以内に死ぬと言う。その言葉に翻弄されて、司はろくでもない妖魔を自分で引きずり込んでしまう。
律は、木の塊と同時に現れた泥人形によって、その占い師は凶事しか口にせず、気にかけるなと忠告されていた。土人形は何か使命を持っているが忘れてしまっている。事が動き出せば、自然に全てが動き出すと言った。
司の引きずり込んだ妖魔は追い払い、律は心配ないとは言ったものの、実は思い切り気になっていた。
その三日目。絹は階段で泥人形を見つける。そこに泥人形がないことに気がついた律は事は動き出したと感じ母の姿を探すと、その背後に占い師が剣を抜いて襲い掛かるところだった。
「危ない」と言って、そこに割り込もうとする律だったが、その剣は振り下ろされてしまった。
「やめてくだされ」と呟くような声と共に泥人形が転がった。
「見つけたばかりなのに、壊れてしまって可哀相。」とは絹は立ち去るが、そこにはかぶりを取った占い師とその幼い息子の姿があった。
その昔。
凶事しか語らない占い師は、その占いがあたって欲しいばかりに生霊になって、占った相手を殺していた。そんな母の行いを諌めようと、息子は、身代わりになって死んでしまう。母は悲しみのあまり、山で首を括って死んでしまうが、悲しみのあまり、自分に起きたことを忘れてしまい、その悲しみだけが、首を括った木の中に封じ込められてしまっていた。その想いを解放したものがいた。それが赤目だった。
また、再び同じことをしようとしていた母を、また同じように身代わりになって諌めた息子。二人は抱きあって消えていった。
絹は泥人形の墓を丸太で作って供養していた。
律は思う。この母は時には何でも知っているのではないだろうかと。
と言う、お話でした。
短いのによくまとめたなと思う人には面白く、ものたりなーいと言う人には、深みのないと言ったところでしょうか。