<私の漫画史番外編その2>
『「白鳥少女」☆私の漫画史』の記事の中で、その作品の原作を中尾明氏が書いていたと知って驚いたと言うことを書きました。
その中でもほんの少し触れた事ですが、学校の図書室でこの本を見つけて読み、凄く面白くて心に残った作品だったのです。
その年の司書の先生がやる気があったのか、かなりの新しい本が図書室に補充されました。
この「黒の放射線」は「鶴書房盛光社 (SFベストセラーズ)」の中の一冊で、同じシリーズの中には筒井康隆氏の「時をかける少女」や光瀬龍氏の「夕映え作戦」、眉村卓氏の「なぞの転校生」などもあるのです。
中学生だった私には、世界は小さく世間からも疎いので、ただ単純にこの出版社の「お仕事」に喜び嬉しく思ったのです。なぜならその頃、SFと言えばコナン・ドイルやジュール・ベルヌとかH.G.ウェルズだったと思うのですが、それを国産で読ませてくれたのですから。
それにこの本のシリーズは、今では「SFジュブナイル」とか言われていますが、もちろん私たちが中学生の頃はそんな言葉などなく「少年少女のための」と分かりやすく言われていました。
「ジュブナイル」と言うのは「ティーンエイジャーを対象読者とする小説のこと。」
でもそれも21世紀になってからはあまり使われていなくて、ヤングアダルトと言うのが今では一般的で、図書館などでもそう言うコーナーがちゃんとありますよね。
まあ、「少年少女のためのコーナー」じゃ、やっぱり今はダメなのかも知れませんね。
「ださっ」とか言われてしまうのでしょうか。だけどそのような純日本語的なのって、分かりやすくていいと思うのだけれど。
それはともかくとして、「少年少女の為に」書かれたと言っても、文章の質が下がるわけではないのですよね。つまり主人公たちが感情移入がしやすい中学生や高校生だったりするのが特徴なのです。
感情移入してしまいましたよ、すっかりコンコンとね。
このシリーズは本当に好きでした。
でも・・・・・・
お話を覚えているのは、あまりないんです。もちろん「時をかける少女」は何度も映像化されたんで知っていますよ。他のものもあんなに面白いと思って読んだのに覚えていないとはこれ如何に・・・。
その中で覚えているのが、この「黒の放射線」だけなんです。なぜならこのシリーズの中で、私の一押しはこれだったからです。
映画化して欲しいななどとまで思っていました。
「時をかける少女」が映画化された時に、何でこっちが成るんだとも思ったのです。ドラマなら仕方がないと思うのです。スケールが違うから。
でも映画だったら、そのスケールも大きくパニックSFを作ることだってできるのになと思ったのでした。
ある日人々の間に「黒あざ病」と言うものが流行り出し・・・・・。
新興宗教・人々の暴動・その病の本当の秘密とは。ヒロインの恋の物語も絡んで、想像過多の中学生だった私は、物語を映画の大きなスクリーンに焼き直しながら読んでいたのかもしれません。
脳内再生映像として見ると、この物語が一番面白かったので忘れなかったのかもしれません。
どんなストーリーかと思われた方は、この本のタイトルで検索してみてください。
詳しくあらすじをあげながら感想を書いているブログや、挿絵などを載せているブログ、優しい視点で表紙とあらすじを書かれているサイトなどに出会うと思います。そしてまた辛辣な感想にも・・・・・。
もしかしたら今読んだら、私は違う感想を持ってしまうのかも知れません。
だからと言って、あの時に凄く好きだと思った過去の想いが消えてしまうわけではないのだと思います。
この本を手に入れようと思ったら、下に載せたAmazonからも古本として手に入れる事が出来ます。
でも図書館で借りようと思ったら、国会図書館での閲覧や全国で数館の図書館のみの扱いになってしまいます。
そう言えば学校の図書室には、色褪せたものが片隅に残っているのかもしれませんが。
何事も「残っていく」と言うことは至難の道なのかも知れません。
では先日もドラマ化された「時をかける少女」とどこが違うのかと、ふと思ってしまったのですが、それは他のメディアに取り上げられたか否かで明暗を分けたようにも感じたのです。
「時かけ」よりもこっちの方が断然好きだったと世界の片隅から叫んでも、もう中尾氏は2012年に亡くなっているので、その声が届く事がないのが残念のような気もします。
黒の放射線 (SFベストセラーズ) | |
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