<私の漫画史、番外編その1>
この記事の背景なるモノは「私の漫画史」などをお読みくださると助かります。
私が姉の病室に行きそこにある漫画本を手に取ると、母の母、つまり祖母はそこに母の一番下の弟などがいると、
「読んでやれ。」と必ず言いました。
幼稚園を出る頃には文字は読めて書けて当たり前のような今の時代とは違って、それは小学校で習うものと言うような呑気な時代でした。姉が入院したのは、私が小学校に上がる前だったので、祖母が叔父に「読んでやれ。」と言ったのは当たり前の流れだったのだと思います。
だけど私は、幼少の頃は近所に一緒に遊ぶ友達と言うものが皆無で、姉が学校に行ってしまって帰って来るまでは、一人だけのごっこ遊びか〈いわゆる妄想世界に遊ぶ。〉絵本のような本を友にするしかなかったので、小学校に上がる頃にはひらがなカタカナはかなりスラスラと読めた方だと思います。
読んでやると言う行為が面倒に感じた叔父などは
「読めるよな。」と言うので、私は「うん。」と頷くしかありませんでしたが、本当の事を言うと読んでもらえるのは嬉しかったのです。なぜならその当時も漫画の漢字にはルビがふってあったと思うのですが、スラスラ読めると言っても、漢字も混ざる文字を読み続けるには私は幼かったのです。
だけど祖母は、叔父と私がそんなやり取りをしていても、必ず怖い顔をして「いいから読んでやれ。」と言いました。
私はシメシメと思いながら読んでもらいましたが、いつもすぐに後悔しました。
なぜなら叔父の読み方は棒読みだったからです。
私の脳内には可愛らしく歌うように話すヒロインが、叔父が読むと
「は・は・は。ダカラマユチャンハ→」みたいな一本調子です。がっかりして
「もうイイ。」などと私は言い、叔父を怒らせていたのではないでしょうか。
ところがある日、「読んでやれ。」と言う者もいなくて、祖母が読んでくれることになりました。私が「読んで~。」とねだったのかもしれません。
ただやっぱり祖母が読み始めて、私は吃驚しそしてがっかりしました。祖母の読み方って言ったら下手くそな叔父の比ではありません。
もう漫画のヒロインキャラの破壊者レベル。
私の祖母は口の悪い人で、私はこの人にどれだけ言葉では傷つけられたか分かりません。だけど言ってることに悪意がなくて、本当に口が悪いだけなのです。言いかえそうと思ったらいくらでも言い返すことが出来るレベルです。
それに昔の事ですが、母曰く、私はああ言えばこう言うの達人だったのです。
だけど、それでも私はこの祖母に何かを言いかえした事は一度もないのです。
祖母は歳を取っていたから。理由はそれだけなのですが、だから私が彼女に「もうイイ。」などと言うわけはありません。
だけど祖母はセリフを読むときに、指で横をなぞりながら読み進めていきました。私はそれを目で追い、頭の中で読み直しながら祖母と一緒に読み進めていきました。読み直された言葉は、ヒロインの可愛らしい声に変換されて脳内でイキイキと響きました。
一つ読んだら目がしょぼしょぼしてしまうのか、それとも飽きてしまうのか、それが限界だった祖母。でも私の方も、限界だったかもしれません。それでも祖母の読み聞かせは、どんなに下手でも嫌だとは思えずに、むしろ懐かしく、そしてなんとなく微笑んでしまうような想い出になりました。
ところで今の仕事を始めて、時々
「うちの子、本を全く読まないのです。」などと相談を受ける事がありました。その都度、大真面目に答えてきましたが、あまり意味がなかったように思います。
だいたいお話を聞くと、家に親が読んだ本が一冊もない、一緒に図書館に行った事がない、もしくは本屋に家族で買い物に行った事がない、親が本を読んでいる姿を見せた事がない、そして本の読み聞かせって、そりゃ何ですかとなれば、どうやって本好きな子が出来るのか、むしろ私が聞いてみたいです。
子供を本好きにするには、まずこの「ない」を「ある」に変えてみて、そこからがスタートではないかと思います。
と言いましても、このような私のブログにお立ち寄りくださるあなた様には、まったく関係のないお話だったかもしれませんね^^