森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

その時、彼女は「ライン」と言った。

2017-03-12 20:47:21 | インド旅行記

インドで、今となっては日本であまり見なくなった珍しいものを見ました。かつては日本もそうだったもので、今の若い人には良く分からない習慣ではないでしょうか。言うなれば「一列並びではない並び方」と言うものです。

昔は、トイレとか銀行のATMとかコンビニのレジとか、そこには今の一列並びは存在していなくて、こっちの列が早いかと選んだところで自分の運の良し悪しを思い知らされると言う事象が発生しました。何を言っているのかと言うと、お若い人の為に言い直しますと、自分の並んだところが前から二番目で隣に並んだ友達が前から4番目であっても、前の人たちのご用の進み具合はその内容にもよるもので、自分の番が早く回って来るかは運次第だったのです。

いろいろな所で、進歩と言うものは訪れます。空いた所から並んでいる人が振り分けられ待ち時間の平等が確保できる、この「一列並び」は並び方の画期的な進歩だったと思います。

 

                       

 

それはインドでのドライブインのトイレでのお話ー。

日本人の観光客がバスから降りて行くと、当たり前のように一列並びでトイレの入り口近くから並びます。スムーズに流れ始めていたその時に、インドの女性さまご一行がかなりの人数でやって来ました。

何やら不満げにワシャワシャ言いながら並んでいました。

ワシャワシャと言うのは、私にはヒンディー語は理解できないからそう聞こえてきたのです。

 

そのうち一人の中年女性がその列から飛び出て来て並んでいる私たちの前に来ました。一列並びなのですからトイレの前は誰も立っていません。

いかにヒンディー語は分からないと言っても、そこからの彼女の会話は、私にはぐるっとまるっとお見通しさと言うぐらい分かってしまいました。

これはデジャブのように見た事のある光景だったからです。

 

彼女はこう言ったのです。

「何よ。凄く混んでいるかと思ったら中はガラガラじゃないの。」

そして

「みんなも来なよ。空いてるわよ。」と仲間を手招きして誘う・・・・。

戸惑う仲間に

「速く、はやく!!!」と手招きをする。

 

と手招きしている間に目の前のドアが開いて入ろうとすると、一番前に並んでいた方がすかさず素早くイン。

驚いて

「なんなの !?」と逆に切れる・・・・。

 

申し訳ないけれど、心の中でニヤニヤしてしまいました。だって、これもまた心の中で私の言っているアフレコと態度と動作が完全に一致してるんですよ。

肌の色も言葉も違うけれど、人間の心は皆似たり寄ったりなんですよね~。

 

でもここから彼女が頑張って、後ろに並んでいるインドのご婦人方を前に引っ張られては困ります。

これは郷に入ったら郷に従えと言うお話ではありません。

 

昔もいました。

自分の知らない状況を目にしても、一目瞭然で何が起きているのか「一列並び」は普通なら理解できます。これを無視して「なんだ、中はガラガラじゃない。」と言って前に入ってしまうのは、わざと並んでいる列とそこに並んでいる人間を見ようとしない人なのです。こういう方は何処にでもいるのだなと思いました。大概の人は並んでいる人はちゃんと人に見えて、いつもと違う状況でも「どう言う事なんだろう。」と考えるのです。だから人の先頭に出た人が仲間を呼んでも、躊躇したのだと思います。だけどあまりにもそのインドの女性が急かすので、後ろにいる人たちもちらほらと動き出してしまいました。

みんなわずかな時間の出来事です。

「並んでいるわよ・・・」って日本語で言ってもねえ…・って、それ私の事。情けない事にとっさに出ないのです。なんだっけなあ、英語で「並んでください。」って・・・と思っていたら、いきなり大きな声で『ライン!!!』と聞こえてきました。

すると出掛った人たちはぶすぅっと元の列に戻りました。

 

インドのトイレには大概、そのトイレをお掃除したり管理したりする方がいるような気がしました。その女性が大きな声で言ったのです。その人は私たちに笑いかけると、列に戻った人たちに追い打ちをかけるように注意し直していました。

ここから先は何を言っているのか分かりません。だからワシャワシャと聞こえてきました。

 

ああ、でもきっとこのワシャワシャも、私には通訳できます。

彼女は後ろに並んでいたインドの方々にガミガミと言っていました、となるのです。

 

手を洗って、そのトイレの部屋の前を過ぎる時、もうそこには外国人は誰もいない事が分かりました。インドの方々はみなそれぞれにトイレのドアの前に並んで狭い部屋はぎゅうぎゅうになっていました。

それは昔々の小学校の休み時間の時を思い出させるようなシーンで、チョピッと懐かしく感じた私です。

 

ところでトイレの守り神の彼女は、英語で『ライン アップ』、「並んで」と言ったのかと、私は思っていました。

でもなんだか腑に落ちなくて、家に帰ってから調べてみました。ヒンディー語で「並ぶ」は「अप लाइन 」と書いて、なんと「アプ ライン」と言うのですって。

 

ヒンディー語は「नमस्ते」、「こんにちは」の「ナマステ」しか知らなかったけれど、これで2つは覚えた事になります。

但しいつまで覚えていられるかは、悲しいけれどわからない事です。

 

 

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする