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池袋ウエストゲートパーク (文春文庫) |
石田 衣良 | |
文藝春秋 |
昨年の最後に読み終わった本の感想を簡単に書きたいと思います。
「11月15日図書館にて」と言う記事の中で、その時図書館から「本の福袋」なるもののを借りたことを書きました。あまり読書時間を取ることが出来ない生活をしていて、すこぶる遅読。その福袋の中には三冊の本が入っていたのですが、たぶん期間内に読めるのは、そのうちの一冊だと思いました。
上下巻物のようだった「剣豪将軍義輝」は候補から外し、もう一冊の「推理小説」はパラパラと読んでみたら、ドラマの「アンフェア」の原作であることが分かりました。それで私は、なんだか名前だけは知っているような気がする「池袋ウエストゲートパーク」を選んだのでした。
読み終わってから、ドラマの事を調べたのですが、クドカンシナリオの、またキャストが今からの視点で見ればチョーが付くほどのリッチさ(主演長瀬智也・窪塚洋介・山下智久・坂口憲二・佐藤隆太・阿部サダヲ・妻夫木聡・高橋一生など)でファンも多かったと思います。ああ、今からでも見たいです。
でもこれって2000年の作品なんですよね。
強烈な個性を放つクドカンのシナリオ。これを先に見て、その魅力に惹きつけられた人が原作を後から読んでどう思うのだろうかと、そこの所もちょっとだけ興味があるところです。
ただ私はドラマ知らずで、この本で初めてこの物語を知ったのです。
結論から言うと凄く好きです!
この物語は推理小説のようであってもそれだけではなく、主人公である誠のほろ苦くもある青春の物語だなと思います。
ある出会いを通して、クラシック音楽に嵌っていく誠、本を読み始める誠、文を書き始める誠。
仲間たちに信頼されている彼でしたが、その魅力は回を重ねていくたびに増していったように思います。
彼は私の中では長瀬君ではないー。
じゃあ誰かと言えば、誰でもない。私の世界の中だけの彼が構築されて行きました。
そしてまた、ちょっと語り口がサリンジャーぽいナと感じました。
その推理小説版。
たぶん筆者の脳裏には、この文の背景には誠が聞いているような音楽が奏でられているのかもしれませんが、どちらかと言うとラップのような気がしないでもないのです。
えっ ?
抽象的過ぎて、何を言ってるのか分からない ?
まあね。かもね。そんな感じ。
って、ことで。
面白かったです。これはよほどヒットしたのか、ずっとずっと続編があるんですね。続けてではなくてもボチボチと読んでいけたら楽しいかなと思いました。
お気楽な楽しい青春推理小説なのですが、泣き虫であり、かつ感動をすぐする人なので、ある文章で不覚にも涙がにじみました。
好きだと思っても、それでもメモでも取らないと忘れてしまうかなと思いましたが、反則技で写真を撮ってしまいました。
胸を締め付けるような一瞬の、またはひと時の想い出。それは別に愛の行為だけではなくても、例えば喫茶店で一緒にお茶を飲んだと言う想い出にしても、何か心をえぐるような想いが生じることだってあるじゃないですか。
その時間は繰り返される事のない、その時だけのもの。たとえその後何回も同じようにお茶を飲んだとしても。ふと思い出してはひとりで笑い、または涙ぐむ。時には走り出したいような衝動に駆られて、あてもなく街を彷徨う。
そんな想いに囚われた事ってないですか。
さてさて、このワタクシはと言えば・・・・
あああ、青春ってやつは遠い昔かもな。