7/19の第54回原子力安全委員会で、『今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方』が示されましたので、こちらでも見ておきます。
ポイントは、
*環境モニタリングシステム(モニタリングデータの収 集・保存・活用について、国ないし地方自治体が一元的なシステムを確立)、個人線量推定システム(行動調査による予測値と個人線量モニタリングによる実測値の照合)、健康評価システム(放射線関連疾患だけでなく、メンタルな疾患なども含めた健康状態把握)の構築する
*各個人が、線量率が比較的高い場所を検知し、そこでの滞在時間を減らすこと、ほこりや特定の食物による内部被ばくの 可能性の有無を認識して適切に対処することなどの行動をとることで、被 ばくの線量を低減することができる
*防護方策の計画作成には、住民の代表者を参加させる
など。
*****原子力安全委員会ホームページより******
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan054/siryo4.pdf
今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について
平成23年7月19日 原子力安全委員会
原子力安全委員会は、平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原 子力発電所の事故に伴い、周辺住民等の放射線防護に関する各種の技術的助言 を行ってきているが、同年5月19日には、それまでの助言についての原子力 安全委員会としての考え方について説明責任を果たすべきとの認識から、「放射 線防護に関する助言に関する基本的考え方について」を公表したところである。 この度、その後の経緯を踏まえた各種放射線防護に関する取組の必要性に鑑み、 今後の避難解除や復興に向けた段階における放射線防護に関する基本的な考え 方を以下に示すこととする。
1.被ばく状況に応じた放射線防護措置
(1)緊急時被ばく状況
国際放射線防護委員会(ICRP)の定義に従えば、緊急時被ばく状況とは、原子力事故または放射線緊急事態の状況下において、望ましくない影響を回避もしくは低減するために緊急活動を必要とする状況である。福島第一原子力発電所事故の初期防護措置においては、「原子力施設等の防災対策について(昭和 55 年 6 月 30 日原子力安全委員会決定。以下、「防災指針」という。)」に規定された予測線量に関する指標〔屋内退避のための指標:10~50mSv(外部被ばくによる実効線量) または 100~500mSv(内部被 ばくによる小児甲状腺等価線量の予測線量)、および避難のための指標:50mSv 以上(外部被ばく による実効線量)または500mSv 以上(内部被ばくによる小児甲状腺等価線量)〕を参照しつつ、事象の進展の可能性や緊急性に基づく予防的観点から、本年 3 月 11 日から12 日にわたって避難・退避区域が設定、 拡大され、最終的に発電所から半径 20km以内が避難区域に、さらに、3 月 15 日 には半径 20~30km の範囲が屋内退避区域に設定された。
その後、半径 20km 以遠の一部地域において、放射性物質の地表面沈着による 積算線量の継続的な増加が観測されたため、4 月 10 日付の当委員会の意見を踏まえ、4 月 22 日、事故発生後 1 年間の積算線量が 20mSv を超える可能性がある 半径 20km 以遠の地域が計画的避難区域に設定された。また、これに該当しない屋内退避区域については、その一部が解除されたものの、それ以外の地域については、福島第一原子力発電所の状況がなお不安定であったことから、改めて緊急時避難準備区域に設定された。 ここで、現在の防災指針に規定されている指標は、短期間の避難や屋内退避を想定した国際機関の指標を参考に定めたものであり、わが国においては長期にわたる防護措置のための指標がなかったため、当委員会は計画的避難区域の 設定等に係る助言において、ICRP の 2007 年基本勧告において緊急時被ばく状況 に適用することとされている参考レベルのバンド 20~100mSv(急性若しくは年間)の下限である 20mSv/年を適用することが適切であると判断した。
(2)現存被ばく状況
現存被ばく状況とは、ICRP の定義によれば、緊急事態後の長期被ばくを含む、管理に関する決定を下さなければならない時に、既に存在している被ばく状況 である。わが国においては、原子力災害に伴う放射性物質が長期にわたり環境中に存在(残留)する場合の防護措置の考え方は定められていなかったが、当 委員会は、ICRP の 2007 年基本勧告に基づき、現存被ばく状況という概念をこのような場合に適用することが適切と判断した。
緊急時被ばく状況にある地域は、原子力発電所からの放射性物質の放出が制御された状態となり、さらに、残留した放射性物質による被ばくが一定レベル 以下に管理可能となった段階をもって、現存被ばく状況へ移行すると考えることができる。一方、このような地域とは別に、放出された放射性物質の残留に より、緊急時被ばく状況を経ることなく現存被ばく状況に至ったと考えられる 地域がある。すなわち、現段階においては、福島第一原子力発電所の周囲に、 依然として緊急時被ばく状況にある地域と現存被ばく状況にあると考えられる 地域が併存している。
緊急時被ばく状況から現存被ばく状況への移行は、避難等の解除のための必要条件である。現存被ばく状況にある(すなわち残留した放射性物質による被ばくが一定レベル以下に管理可能である。)ことについての判断の「めやす」を 設定するに当たっては、予想される全被ばく経路(地表面沈着からの外部被ばく、再浮遊物質の吸入摂取による内部被ばく、飲食物等の経口摂取による内部被ばく等)からの被ばくを総合的に考慮しなければならない。この「めやす」 の設定においては、空間線量率(μSv/h)、土壌の放射能濃度や表面沈着濃度 (Bq/kg、 Bq/m2)を使用することも考えられる。
現存被ばく状況への移行に当たっては、あるいは緊急時被ばく状況を経るこ となく現存被ばく状況に至ったと考えられる地域においては、新たな防護措置 (その一環としての除染・改善措置を含む。)をとる必要のある範囲を選定し、 適切な防護措置を適時に実施しなければならない。防護措置の最適化のための 参考レベルは、ICRP の勧告に従えば、現存被ばく状況に適用されるバンドの 1~20mSv/年の下方の線量を選定することとなる。その際、状況を漸進的に改善するために中間的な参考レベルを設定することもできるが、長期的には、年間1mSv を目標とする。ここでは、防護措置の一環として、予想される被ばくのレベルに応じて、住民による生活や社会活動に一定の注意や管理を必要とする場合がある。これらの放射線防護措置の計画立案は、住民の生活や産業活動等の 支援に関連した総合的な対応の一環として行われるべきである。放射線防護に 関わりをもつ行政判断において、関係省庁や地方自治体等は、必要に応じ、健 康、環境、社会、経済、倫理、心理、政治等の側面から検討を加えるとともに、 検討プロセスの透明性を確保しつつ、関係者と充分な協議を行うことによって、 放射線防護が適切かつ合理的に行われることを確実にすべきである。
2.環境モニタリングシステム、個人線量推定システム、健康評価システムの構築
防護措置およびその一環としての除染・改善措置の展開ならびに避難解除等 の行政判断のためには、その科学的根拠となる環境モニタリングおよび個人線 量推定のためのシステム構築が重要である。また、これらに基づいて健康評価 システムが構築されるべきである。
(1)環境モニタリングシステムの構築
環境モニタリングの主要な目的は、放射線レベルおよび放射性物質濃度レベルに関する状況の経時的な変化を把握することによって、以下のための基礎資料を与えることである。
・影響を受けた地域における住民等の健康管理、居住(避難、退避、再居住を含む)、社会活動、産業活動等のあり方などについて、放射線防護の観点を踏まえた行政上の判断を行うこと。
・被ばく量を管理し低減するための方策(防護措置、除染・改善措置、 特定の被ばく経路に係る制限措置)を決定すること。
・影響を受けた地域における住民等の被ばく(外部被ばく及び内部被ばく)のレベルを評価し、現在および将来の被ばくを推定すること(個人線量推定)。
環境モニタリングにより、これらの目的のために有効な情報が適時に提供さ れるためには、モニタリングの計画段階において、評価・分析のニーズを把握 したうえで、モニタリング結果の利用の道筋を明確にしておくことが必要であ る。また、実効的なモニタリング体制・システムを構築するためには、とりまとめ省庁の下、国・地方自治体・民間の専門機関や研究所、大学等の能力を効率的、機能的に活用することが必要である。さらに、モニタリングデータの収 集・保存・活用については、国ないし地方自治体が一元的なシステムを確立することが必要である。
(2)個人線量推定システムの構築
個人の被ばく線量の推定は、各個人の行動に大きく依存しているため、事故発生以後の行動調査結果を環境モニタリングの結果と照合することによって被ばく線量を推定するとともに、個人線量モニタリングによる実測値との照合が 必要である。これら推定値データと実測値データを組み合わせることにより、 より精度の高い被ばく線量の推定が可能になる。
長期的な汚染状況においては、住民の生活や産業活動等の支援に係る判断、 避難の解除を行うに当たり、環境モニタリングの結果および現実的な被ばく線 量推定の結果に基づいて、適切な防護対策と除染・改善措置を策定することが 必要である。
(3)健康評価システムの構築
原子力災害と地震・津波災害という未曽有の複合災害に伴う長期間の避難、また、屋内退避、集団生活、ストレス等による現在の健康状態への影響を低 減することと同時に、将来の潜在的な健康影響に関する懸念に対して、住民 等の不安を軽減することが重要である。このためには、長期的な健康評価シ ステムを確立することが必要となる。ここでは、放射線との関連が明らかな 疾患だけでなく、メンタルな疾患なども含めた健康状態を把握することが基 本となる。
前述の環境モニタリングに基づく個人線量推定は、放射線に関連 した健康評価の基盤となる。
3.防護措置の展開
効果的な放射線防護措置を展開するにあたっては、放射線防護技術と社会的因子、経済的因子等の調和を図りながら実施することが必要である。
(1)除染・改善措置について
除染・改善措置の実施を決断し、どの技術を選択するかを判断する際には、費用や社会的要因を考慮するとともに、IAEA の安全基準文書(”Remediation Process for Areas Affected by Past Activities and Accidents”; WS-G-3.1) 等を参照して綿密な計画を立てることが必要である。種々の除染技術に関しては、適用した場合に回避される線量を評価するだけでなく、費用や除染作業者 の累積被ばく線量、除染による廃棄物の発生に伴う影響等を含め、個々の技術 毎に総合的な評価を行うことが必要である。
また、除染計画の中では、各々の現場の環境に応じて、個々の手法に優先順 位を付け、長期的に、種々の除染・改善措置の方法を組み合わせることが推奨 される。
(2)放射線防護への人々の参加
関係省庁や地方自治体等は、必要な情報や資材、指導・訓練、専門的アドバイザー等を提供することによって、関係する地域で居住または勤務される方々の 放射線防護活動への参加を支援すべきである。これらの方々が、生活環境に関 するきめ細かい環境モニタリングや個人モニタリング等に関わり、それらの結 果を理解することによって、自身及びその周囲の方々の放射線防護に積極的な 役割を担って頂くことが重要である。
被ばくのレベルは個人の行動に大きく影 響されるものであることから、多くの方々が、線量率が比較的高い場所を検知し、そこでの滞在時間を減らすこと、ほこりや特定の食物による内部被ばくの 可能性の有無を認識して適切に対処することなどの行動をとれば、各個人の被 ばく線量が低減できるものと期待される。さらに、除染や改善措置を含め、関係省庁や地方自治体等による防護措置をきめ細かで効率的なものとするため、 防護方策の計画作成には、住民の代表者を参加させることが肝要である。
ポイントは、
*環境モニタリングシステム(モニタリングデータの収 集・保存・活用について、国ないし地方自治体が一元的なシステムを確立)、個人線量推定システム(行動調査による予測値と個人線量モニタリングによる実測値の照合)、健康評価システム(放射線関連疾患だけでなく、メンタルな疾患なども含めた健康状態把握)の構築する
*各個人が、線量率が比較的高い場所を検知し、そこでの滞在時間を減らすこと、ほこりや特定の食物による内部被ばくの 可能性の有無を認識して適切に対処することなどの行動をとることで、被 ばくの線量を低減することができる
*防護方策の計画作成には、住民の代表者を参加させる
など。
*****原子力安全委員会ホームページより******
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan054/siryo4.pdf
今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について
平成23年7月19日 原子力安全委員会
原子力安全委員会は、平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原 子力発電所の事故に伴い、周辺住民等の放射線防護に関する各種の技術的助言 を行ってきているが、同年5月19日には、それまでの助言についての原子力 安全委員会としての考え方について説明責任を果たすべきとの認識から、「放射 線防護に関する助言に関する基本的考え方について」を公表したところである。 この度、その後の経緯を踏まえた各種放射線防護に関する取組の必要性に鑑み、 今後の避難解除や復興に向けた段階における放射線防護に関する基本的な考え 方を以下に示すこととする。
1.被ばく状況に応じた放射線防護措置
(1)緊急時被ばく状況
国際放射線防護委員会(ICRP)の定義に従えば、緊急時被ばく状況とは、原子力事故または放射線緊急事態の状況下において、望ましくない影響を回避もしくは低減するために緊急活動を必要とする状況である。福島第一原子力発電所事故の初期防護措置においては、「原子力施設等の防災対策について(昭和 55 年 6 月 30 日原子力安全委員会決定。以下、「防災指針」という。)」に規定された予測線量に関する指標〔屋内退避のための指標:10~50mSv(外部被ばくによる実効線量) または 100~500mSv(内部被 ばくによる小児甲状腺等価線量の予測線量)、および避難のための指標:50mSv 以上(外部被ばく による実効線量)または500mSv 以上(内部被ばくによる小児甲状腺等価線量)〕を参照しつつ、事象の進展の可能性や緊急性に基づく予防的観点から、本年 3 月 11 日から12 日にわたって避難・退避区域が設定、 拡大され、最終的に発電所から半径 20km以内が避難区域に、さらに、3 月 15 日 には半径 20~30km の範囲が屋内退避区域に設定された。
その後、半径 20km 以遠の一部地域において、放射性物質の地表面沈着による 積算線量の継続的な増加が観測されたため、4 月 10 日付の当委員会の意見を踏まえ、4 月 22 日、事故発生後 1 年間の積算線量が 20mSv を超える可能性がある 半径 20km 以遠の地域が計画的避難区域に設定された。また、これに該当しない屋内退避区域については、その一部が解除されたものの、それ以外の地域については、福島第一原子力発電所の状況がなお不安定であったことから、改めて緊急時避難準備区域に設定された。 ここで、現在の防災指針に規定されている指標は、短期間の避難や屋内退避を想定した国際機関の指標を参考に定めたものであり、わが国においては長期にわたる防護措置のための指標がなかったため、当委員会は計画的避難区域の 設定等に係る助言において、ICRP の 2007 年基本勧告において緊急時被ばく状況 に適用することとされている参考レベルのバンド 20~100mSv(急性若しくは年間)の下限である 20mSv/年を適用することが適切であると判断した。
(2)現存被ばく状況
現存被ばく状況とは、ICRP の定義によれば、緊急事態後の長期被ばくを含む、管理に関する決定を下さなければならない時に、既に存在している被ばく状況 である。わが国においては、原子力災害に伴う放射性物質が長期にわたり環境中に存在(残留)する場合の防護措置の考え方は定められていなかったが、当 委員会は、ICRP の 2007 年基本勧告に基づき、現存被ばく状況という概念をこのような場合に適用することが適切と判断した。
緊急時被ばく状況にある地域は、原子力発電所からの放射性物質の放出が制御された状態となり、さらに、残留した放射性物質による被ばくが一定レベル 以下に管理可能となった段階をもって、現存被ばく状況へ移行すると考えることができる。一方、このような地域とは別に、放出された放射性物質の残留に より、緊急時被ばく状況を経ることなく現存被ばく状況に至ったと考えられる 地域がある。すなわち、現段階においては、福島第一原子力発電所の周囲に、 依然として緊急時被ばく状況にある地域と現存被ばく状況にあると考えられる 地域が併存している。
緊急時被ばく状況から現存被ばく状況への移行は、避難等の解除のための必要条件である。現存被ばく状況にある(すなわち残留した放射性物質による被ばくが一定レベル以下に管理可能である。)ことについての判断の「めやす」を 設定するに当たっては、予想される全被ばく経路(地表面沈着からの外部被ばく、再浮遊物質の吸入摂取による内部被ばく、飲食物等の経口摂取による内部被ばく等)からの被ばくを総合的に考慮しなければならない。この「めやす」 の設定においては、空間線量率(μSv/h)、土壌の放射能濃度や表面沈着濃度 (Bq/kg、 Bq/m2)を使用することも考えられる。
現存被ばく状況への移行に当たっては、あるいは緊急時被ばく状況を経るこ となく現存被ばく状況に至ったと考えられる地域においては、新たな防護措置 (その一環としての除染・改善措置を含む。)をとる必要のある範囲を選定し、 適切な防護措置を適時に実施しなければならない。防護措置の最適化のための 参考レベルは、ICRP の勧告に従えば、現存被ばく状況に適用されるバンドの 1~20mSv/年の下方の線量を選定することとなる。その際、状況を漸進的に改善するために中間的な参考レベルを設定することもできるが、長期的には、年間1mSv を目標とする。ここでは、防護措置の一環として、予想される被ばくのレベルに応じて、住民による生活や社会活動に一定の注意や管理を必要とする場合がある。これらの放射線防護措置の計画立案は、住民の生活や産業活動等の 支援に関連した総合的な対応の一環として行われるべきである。放射線防護に 関わりをもつ行政判断において、関係省庁や地方自治体等は、必要に応じ、健 康、環境、社会、経済、倫理、心理、政治等の側面から検討を加えるとともに、 検討プロセスの透明性を確保しつつ、関係者と充分な協議を行うことによって、 放射線防護が適切かつ合理的に行われることを確実にすべきである。
2.環境モニタリングシステム、個人線量推定システム、健康評価システムの構築
防護措置およびその一環としての除染・改善措置の展開ならびに避難解除等 の行政判断のためには、その科学的根拠となる環境モニタリングおよび個人線 量推定のためのシステム構築が重要である。また、これらに基づいて健康評価 システムが構築されるべきである。
(1)環境モニタリングシステムの構築
環境モニタリングの主要な目的は、放射線レベルおよび放射性物質濃度レベルに関する状況の経時的な変化を把握することによって、以下のための基礎資料を与えることである。
・影響を受けた地域における住民等の健康管理、居住(避難、退避、再居住を含む)、社会活動、産業活動等のあり方などについて、放射線防護の観点を踏まえた行政上の判断を行うこと。
・被ばく量を管理し低減するための方策(防護措置、除染・改善措置、 特定の被ばく経路に係る制限措置)を決定すること。
・影響を受けた地域における住民等の被ばく(外部被ばく及び内部被ばく)のレベルを評価し、現在および将来の被ばくを推定すること(個人線量推定)。
環境モニタリングにより、これらの目的のために有効な情報が適時に提供さ れるためには、モニタリングの計画段階において、評価・分析のニーズを把握 したうえで、モニタリング結果の利用の道筋を明確にしておくことが必要であ る。また、実効的なモニタリング体制・システムを構築するためには、とりまとめ省庁の下、国・地方自治体・民間の専門機関や研究所、大学等の能力を効率的、機能的に活用することが必要である。さらに、モニタリングデータの収 集・保存・活用については、国ないし地方自治体が一元的なシステムを確立することが必要である。
(2)個人線量推定システムの構築
個人の被ばく線量の推定は、各個人の行動に大きく依存しているため、事故発生以後の行動調査結果を環境モニタリングの結果と照合することによって被ばく線量を推定するとともに、個人線量モニタリングによる実測値との照合が 必要である。これら推定値データと実測値データを組み合わせることにより、 より精度の高い被ばく線量の推定が可能になる。
長期的な汚染状況においては、住民の生活や産業活動等の支援に係る判断、 避難の解除を行うに当たり、環境モニタリングの結果および現実的な被ばく線 量推定の結果に基づいて、適切な防護対策と除染・改善措置を策定することが 必要である。
(3)健康評価システムの構築
原子力災害と地震・津波災害という未曽有の複合災害に伴う長期間の避難、また、屋内退避、集団生活、ストレス等による現在の健康状態への影響を低 減することと同時に、将来の潜在的な健康影響に関する懸念に対して、住民 等の不安を軽減することが重要である。このためには、長期的な健康評価シ ステムを確立することが必要となる。ここでは、放射線との関連が明らかな 疾患だけでなく、メンタルな疾患なども含めた健康状態を把握することが基 本となる。
前述の環境モニタリングに基づく個人線量推定は、放射線に関連 した健康評価の基盤となる。
3.防護措置の展開
効果的な放射線防護措置を展開するにあたっては、放射線防護技術と社会的因子、経済的因子等の調和を図りながら実施することが必要である。
(1)除染・改善措置について
除染・改善措置の実施を決断し、どの技術を選択するかを判断する際には、費用や社会的要因を考慮するとともに、IAEA の安全基準文書(”Remediation Process for Areas Affected by Past Activities and Accidents”; WS-G-3.1) 等を参照して綿密な計画を立てることが必要である。種々の除染技術に関しては、適用した場合に回避される線量を評価するだけでなく、費用や除染作業者 の累積被ばく線量、除染による廃棄物の発生に伴う影響等を含め、個々の技術 毎に総合的な評価を行うことが必要である。
また、除染計画の中では、各々の現場の環境に応じて、個々の手法に優先順 位を付け、長期的に、種々の除染・改善措置の方法を組み合わせることが推奨 される。
(2)放射線防護への人々の参加
関係省庁や地方自治体等は、必要な情報や資材、指導・訓練、専門的アドバイザー等を提供することによって、関係する地域で居住または勤務される方々の 放射線防護活動への参加を支援すべきである。これらの方々が、生活環境に関 するきめ細かい環境モニタリングや個人モニタリング等に関わり、それらの結 果を理解することによって、自身及びその周囲の方々の放射線防護に積極的な 役割を担って頂くことが重要である。
被ばくのレベルは個人の行動に大きく影 響されるものであることから、多くの方々が、線量率が比較的高い場所を検知し、そこでの滞在時間を減らすこと、ほこりや特定の食物による内部被ばくの 可能性の有無を認識して適切に対処することなどの行動をとれば、各個人の被 ばく線量が低減できるものと期待される。さらに、除染や改善措置を含め、関係省庁や地方自治体等による防護措置をきめ細かで効率的なものとするため、 防護方策の計画作成には、住民の代表者を参加させることが肝要である。