玄関脇の植え込みに水を遣っている。バケツで雑巾をゆすぎながら大きなガラス窓をふきあげている。遠目からでも一人一生懸命に働く彼女の姿は目に入る。
大抵は急ぎ足で、軽い会釈で朝のあいさつを交わす日が多い。二年ほど利用している校舎の入り口での今朝、彼女は微笑みを越えて、豊かな愛情いっぱい?の気持ちがこもった笑顔をたっぷりと私に向けてくれた。思わず立ち止まり、「おはようございます」
美しい笑顔!きれいな人だな~と、なぜか珍しく意識してしまったが、これが最後の朝となってしまった。
いくつもの仕事を同時進行でテキパキとこなす。上手に家事をこなす知恵も持ち合わせていることだろう。さすが、おばあさん仕込みなのかと想像してみる。
人を迎える入口を美しく整え、気持ちよく過ごせる環境作りに心配る。彼女の人柄は、仕事の内容ではなく、機敏ながらも物腰の柔らかさを感じさせ、人を心地よくさせる術、おもてなしの心さえそこには見え隠れするかのような所作、そして、あの魅力ある笑顔が物語っている。
案外、年齢差を超え慕ってくれた彼女は、午後、子どもの授業参観とその後の役員決めなどが待つ学校へ向かうのだという。顔を見ると「ほっこりする」といってくれたHさん、私もあなたの若さが、柔らかさが好きでした~。
幼いころ、ご両親の仕事が忙しく実家を離れ京都のお婆さんに育てていただいたという。これからは大阪のご両親の仕事を手伝うのだと。
最近よく目が霞んで困ります。寂しくなります……。
いつか友人を誘ってお尋ねします。おいしい焼き鶏を前に話も弾むことでしょうね。