京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 「負けんときや」

2012年01月09日 | こんな本も読んでみた

玉岡かおる著『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』(上巻)を、時どき居眠り付きで読書三昧に過ごした成人の日でした。

「滋賀県近江八幡市」にある「メンソレータム」で知られる「近江兄弟社」「ヴォーリズ」と聞けば多少の知識はある。だが、このアメリカ人の建築家ウイリアム・メルレ・ヴォーリズの妻、満喜子さんの生涯については知るところではなかった。
播州小野藩の最後の大名の娘として生まれた一柳満喜子(1884~1966)の、夫を支え教育に情熱を注いだ生涯が描かれる。

満喜子15歳、小野藩の元江戸屋敷の「我が家」から当時の女子最高学府とされる女子高等師範学校に通い、新任教師の津田梅子との出会いの場面から始まっていく。富や地位があっても満たされることがない満喜子に、生き甲斐は感じられない。自分の思いを殺し、自ら何も求めることをしないではないか。幼馴染との恋もなくし、傷心のまま明治42年25歳の夏、一歩を踏み出して一人アメリカ遊学に発った。

人の一生は一筋縄ではない。誰にでも唐突で予想外のことが訪れるし、思いもかけない出会いがある。
「負けんときや、おマキさん」
「あのな、勝とうとしたらあかんのどす。大阪は勝たへんのが華。相手を勝たしてなんぼが商売どす。けどな、負けへんのどす。絶対自分に負けんと立っとるのどす」
満喜子傷心の時、兄嫁の母・廣岡浅子がかけたことばは生涯の指針となったという。

この続きを楽しみに、明日には下巻を買いに行かなくては。

 
コメント (4)
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