京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 見残す塔の名は…

2013年07月18日 | こんな本も読んでみた
「ふらんすへ行きたしと思へども / ふらんすはあまりに遠し / …… 」 

そこで、朔太郎をなぞってみた。
 
   羽黒山へ行きたしと思へども
   羽黒山はあまりに遠し
   せめて図書館で本を借りて
   久木綾子ワールド『禊の塔 羽黒山五重塔仄聞』の旅にいでてみん。


著者89歳でのデビュー作は『見残しの塔 周防国五重塔縁起』(2008年)。
 「人は流転し、消え失せ、跡に塔が残った。塔の名を瑠璃光寺五重塔という。 ……中略…… 塔は、今日も中空にのびのびと五枚の翼を重ね、上昇の姿勢を保ちつづける。」

周防山口に塔を立てるために参集した番匠たち。彼らにかかわる人々の、交錯した運命が描かれた作品はこうして始まっている。

「谷底に這いつくばるような椎葉の明けくれは、彼の胸に高いものへの憧れを駆り立てた。」 九州の隠れ里、椎葉村の描写がやけに心に残ったものだった。久しぶりに文庫本を手にとってみたが、おそらく再読するであろうお気に入りの一冊に。

四条通の書店で、久木さんの2作目『禊の塔』があるのを見つけておいてからだいぶん経っている。文庫化を待ってはいられず、図書館で借りて読見始めている。芭蕉の歩いた細道を辿ってみたいなどと憧れたものだが、今や学生時代の夢で終わりそう。「死と再生の聖なる山」出羽三山のひとつ羽黒山。その羽黒山五重塔をこの目でと願うには、いかにも遠いのだ。

作品の冒頭部分はこうだ。
 「雪は「もつ、もつ」と降りはじめ、「もっつ、もっつ」と地に落ちる。天からの下されものなのである。
   庄内の言葉は奥が深い。
   出羽国田川の見渡す限り広い野面に、昼から、雪がもつ、もつ、と落ちはじめた。」

二日の予定がパワーみなぎらずで、休養日は一日長引いてしまった。ひととおりの事をすませば、フリータイム。
たっぷり充電!? そう暗示にかけるには、ごろごろとお粗末な3日間だったような気もする。でも、まあこれもまたよし、ということに…。




コメント (8)
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