京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 七転げ 八起き

2013年07月08日 | こんな本も読んでみた
なんとも異常なほどの蒸し暑さに見舞われて、早く送ってしまいたくもあった梅雨終盤でしたが、近畿地方も本日梅雨明けしました。市内では最高気温が36.9度というではありませんか。驚くなかれ、明日の予報は37度です。

    私はと言えば、『星と祭』(井上靖著)のページを繰る、日盛り。
存在は早くから知っていながら先送り、今、図書館で借りて読んでいます。昭和46年からほぼ1年、333回にわたって朝日新聞朝刊に連載され、単行本は細かな文字で2段組みの読み応えある長編小説です。

竹生島の南方、琵琶湖でもいちばん深い、120メートルぐらいの深さがあるあたりで、突風によりボートが転覆。17歳だった娘のみはるは、一緒にいた青年と共に琵琶湖の底に沈んでしまいます。娘に対して縁薄く生まれついた父親は、7年が経ってようやく娘が眠る琵琶湖を訪れることができるのでした。
湖畔の十一面観音を訪ねて回ります。渡岸寺の十一面、石道寺の十一面、福林寺の…。精神の安定を感じる不思議さ。葬儀ができない苦しみに、死者を悼むために設けられた殯(もがり)の期間を思い、娘との“対話”は、挽歌を詠むことにつながっていくと感じる父親。

 ― 今夜は満月だよ。
 ― 知っています。わたしもいま満月の光を浴びています、
   ……
 ― 少し散歩したいな。
 ― それはだめ。おとうさんは湖の上にいらっしゃるけど、私は湖の中。

「ほかの星にもう一人の俺がいる。そして、この俺はそいつの影!」「遠い星のもう一人の俺」
「みはるよ、遠い星のもう一人のみはるよ」

ずっと琵琶湖に通い続け、愚痴をこぼし、泣いたり、観音に訴えたりして過ごしてきたのが青年の父親。二人の違った悲しみの現し方、死の弔い方などを感じながら、どうしようもなかった悲しみの処理をどのようにみいだしていくのか…、星と祭。あと少し。


7月8日、「本ばかり読んでいないで」の声に、七転げ、八起き。梅雨明けの暑さを避けてのウォーキングにちょいとだけ。
コメント (8)
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