京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

教えに学ぶ

2018年08月07日 | 講座・講演
夢枕獏さんの『おにのさうし』を読んで臨んだものの、お話は玄奘三蔵の旅をメインにしたものでした。玄奘がどの道を利用したかは未だに特定されていないとか。ご自身が最有力と考える氷河古道コースを歩いたときの写真を示されながら、旅の話を。そして、人はなぜ物語を必要とするかに及ぶのですが、…。肝心なところはどういうわけか記憶に残らずじまい。夜、宿坊で4人の相部屋の人に、今日のお話はどういうことだったのかと尋ねましたところ、「玄奘三蔵の後を追って旅をした、という話やない?」と一人が。単調な話しぶり、眠気との闘いでした。

日本の妖怪文化を研究される小松和彦さん。「本来は見えないはずの妖怪を、絵にしようとした努力から日本の妖怪文化の豊かさが生まれた」と説かれます。『おにのさうし』を読んだ私には多少なりとも関心が持てましたが、「人間の想像力が生み出した文化の中で、最も優れた傑作」も、何かしっくりこない妖怪文化と文学ではありました。『化け物の進化』という寺田虎彦のエッセイ(岩波文庫)を知る。


人と違う独自の考えを持つことが周囲と相容れなくて、人には自分を語らない、見せないで過ごした、引きこもった日々があったことを語り出された宮本亜門さん。交通事故で大怪我を負ったこと、母親の死、そうした体験がやがて人生観を変えた。あらゆるいのちを受け入れ、和の文化を好むようになっていく中で、世界に向けて「ニッポンを演出する」ことに工夫を凝らし活動する今を、お話に。生きよう! と声は弾み、さすがに人を引き付け飽きさせない時間でした。
大地真央さんは、今までの女優生活での出会いや経験、これからの更なる挑戦など。問われたことに応じる形での講演形式に期待は裏切られた。せめて一曲? ほんのさわりだけでも歌声を聞かせてほしかった。

プロ野球中日に入団後、初ヒットは3年後、初ホームランは5年後とか。本能のまま、人の言うことには一切耳を貸さずに来て、挫折も自暴自棄も味わうという山あり谷ありの野球人生。星野、野村監督との出会いなど振り返って、「三度のクビから現役27年間」の演題で山崎武司さん。面白く、聞き入った。
3歳年長の山本昌投手に一緒に野球をやめようと持ち掛けたとき、「自分にはまだ伸びしろがある」という言葉が返ってきたという。自分にはその思いがなかったと明かされた。それはそれとして、この昌投手の言葉が、私には今回のすべてを通して最も印象深く心に残った気がする。

「宗派を問わず、仏教の根幹は縁起による」と高野山真言宗教学部長さんのお話にもあった。無量無数の因縁によって私が成り立っている。人との出会いも、ひとつの出逢いが他の出逢いを呼び、また他の出逢いが追ってくる。巡り合い響き合い、重なり合う、ちょうど寂聴さんが聴かれたあの風鐸の連鎖する「妙音」のようか…。また、遺言を残そうとする人は多いが、この世に残していけるのは心だけです、ともお話に。

毎夜、同室の人と高野の空に火星と金星を見上げて一日を終えていた。
学んでときにこれを習う、という。聴きっぱなしで終わるのか、血肉としていけるのか。「まだ伸びしろはある」に励まされる思いがします。
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「見えないモノのエネルギー」

2018年08月07日 | 講座・講演
高野山の入り口にそびえ、一山の総門である大門を訪れた二日目(4日)の朝の気温は20.1度。肌寒かったが、いつ以来かとその感覚を楽しんだ。
五時半、前方に見えだした大門の二階部分南はしに朝陽が当たっているのがわかる。


自然と足は速くなる。後方、東の奥の院の方向から上がる太陽を、こうして西側に立って見たくってやってきた。


「高野山は見えないモノのエネルギーを感じやすい場所。風の音、水の音、木の音。月の力や日の力…」。宿泊した先の副住職さんは言われる。

京都府立大学で学ばれたという。娘さんも京都の大学に在籍中とか。若い素敵な梵妻さんからは「前にも一度お泊りでしたね」と声を掛けられ、3年前の春のことを覚えていて下さるという嬉しさを味わう。勿論、私も楽しみにしていたことをお伝えした。これが縁というものであり、人生の出逢いというものなのだろう。

日中は30度にも達し、強い日差しを浴びる。が、むっとした不快感はない。同室者と二人で女人堂まで、心地よい風の通り道を歩いた昼下がり。


以前うっかり素通りした蓮華定院。「六文銭」を見ながら、その玄関先をそっとのぞかせていただいた。真田家の菩提寺。九度山で過ごす真田信繁(幸村)がNHKの大河ドラマでも描かれた。



15時40分からの講演まで、今回こうして二人で山内見学を楽しんだ。霊宝館で観た、彫り物の涅槃図が興味深かった。動物もいるはずと目を凝らし、「あっ、猿がいる」「イノシシも」「蛇だわ」「カタツムリよ、これ」「猫はいる?」
猫が涅槃図を描く明兆さんのお手伝いをよくしたとかで、「お前も書いておいてやろう」と書き添えたという逸話を話してみた。

夢枕獏さんの陰陽師シリーズの中から一冊を読んできたというこの方。文学散歩の興味も重なり、やけに盛り上がった時間を過ごした。



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