知人から電話がかかってきた。今朝母親が亡くなったという知らせだった。
白い萩の花がこぼれ、芒の穂が秋風になびく。うつろう風情の美しさにひたっているときだった。
はるかに昔。道で出会って立ち話をしているとき、「あがってスイカを食べていきなさい」と誘ってくれたことがった。「家で食べているか?」と聞かれたことを覚えている。嫁いだ翌年ぐらいだったろうか。義母が畑で作ったスイカを遠慮なく食べていたことをタミさんは知らなかったのだ。
うつろいは、まさに人生の真髄。また一人消えていった。人は死んだらどこへ行くのだろうか。
良い日だなあと思っていたのに、なにか寂しさを感じる日になった。
芒澄む人を遠しとおもへる日 岸秋渓子