京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

萩花咲けり見に来ませ

2023年09月28日 | 日々の暮らしの中で
  わが宿の萩花咲けり見に来ませ
      いま二日だみあらば散りなむ


〈私の家の庭の萩が、花をいっぱいつけました。見にいらっしゃいませ。もう二日ほどしたら散ってしまいましょう〉(訳・伊藤博)

秋相聞の部に入る歌。きっと、待ち人はなかなかおいでになりませんのですね。萩の花が散ってしまう前には、懐かしいあなた様にお目にかかりたい。
そんなはるか古の万葉人の心情も、ようよう今に酌めます。


「萩、すすきに曼殊沙華も添えて瓶に挿し、月の出を待つ」前登志夫さんに倣ってみたいという気持ちはある。そして、月光に二つの椅子を並べ置こうか。
曼殊沙華を十数本束ねて花瓶に挿すなど私には経験のないこと。
「あら、死びと花なんかを家の中に飾るの!?」

そんな感覚が変わったのは、奈良の志賀直哉旧邸を訪れたときだった。行くところ部屋部屋に曼殊沙華が飾られていた。花の部分だけだったり、ほんの数本を茎は短くして。ちっともいやではなかった。

月に群雲だったが、周囲を群青に染めながら見事な輝きを放つ月が顔を見せた。
明日は中秋の名月。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする