京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

秋の心は

2023年09月09日 | 日々の暮らしの中で

きのう初めて狐の剃刀(キツネノカミソリ)をみた。

       ぽっと日の当たるきつねのかみそりよ    石田郷子

あたりの草がきれいに刈り込まれたガードレールの向こうに、オレンジの色をした花だけが残っていた。よくぞ! 一律に刈り取ってしまわなかった配慮を思った。

ヒガンバナ科で、葉はとうに枯れている。その幅1センチ、長さ3、40センチの葉が剃刀のようだというところからの命名らしい。
横倒れして、すくっとした花茎が目に入らなかったが、この色。歳時記で写真を見てから日も浅く、もしかするとという程度で帰宅後確かめた。


       名を知りてよりのきつねのかみそりぞ    大石悦子


もう「白露」だ。冷感をもたらす字面も、響きも、美しい言葉だ。
あまりに冷ややかな空気に、開けた窓を閉めた朝。
今日は重陽の節句。もうずいぶん前になったが、上賀茂神社で節句の神事とそれに続く小学生の相撲大会をのぞいたことがあった。もちろん「相撲」も古来より神事である。

この日はナス料理を食べて、不老長寿や無病息災を祈るのも定番の習わしだそうだ。「中風」(発熱や悪寒、頭痛などの病状)にならないという言い伝えもあると。
好みのナス料理はいくつかあるが、主菜に油を使うので、半分に切って切れ目を入れたものをさっと湯がき、冷やしておいたものに作り置きの山椒の甘だれ、あるいはニラの万能ダレを好みでかけていただいた。

暮らしの中の小さなことにも心が向いて、丁寧に過ごせる季節になっていく。
またボチボチ歩きに出られるようにもなる。それだけで嬉しい。
そうして、しみじみくつろぐ秋の夜には、前登志夫のエッセイに手をのばそう。
 
夜ごとに増してくる秋の虫の声。
コメント (2)
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