京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

明日は解体キングダムを

2024年02月06日 | 日々の暮らしの中で
「人は流転し、消え失せ、跡に塔が残った。塔の名を瑠璃光寺五重塔という。」


こう書き出される『見残しの塔 周防国五重塔縁起』は、久木綾子さん89歳での作家デビュー作。取材・構想に14年、執筆に4年をかけたことなど、出版当初から話題になったようだ。
私がどういう経緯で手に取ったのかは今思い出せないのだが。

実は先日、何気なく目にしていたNHKのテレビ画面で、7日の「解体キングダム」という番組の1分もない?予告に目が留まった。解体修理でもしているような画面に、〈瑠璃光寺〉の文字も見つけた。令和の大修理でも進行中なのかしら。まだ目にしたことのない五重塔だけれど、これは見逃したくないと意識したのだった。

で、取り出した文庫本。ここには当時ネットから得た書評のコピーを挟み込んである。
〈村人たちが待ちに待った、椎葉ゆかりの本がついに世に出た)とある。
〈椎葉・十根川神社の宮司の次男として生まれた左右近(さうちか)が大工見習いから修行を積んで副棟梁になって、周防国瑠璃光寺の五重塔を建築するまでの数奇な運命をたどる物語である。〉
〈椎葉の血が流れている瑠璃光寺五重塔〉といった表現もあり、馴染み深い地名や方言の駆使を喜ぶ弾んだ胸の内、郷土人の誇りがにじんでいる。


「長い年月、塔を建てるために周防山口に参集した人たちがいた。膨大な量の木材を削り、部材を作り、百尺の塔をその手で組み上げた番匠たち。それを支えた数多の職人たち」
「彼らは、塔が、今日まで六百年近くも立ち続けると思っていただろうか。」

大正4年に解体再建工事が行なわれたとのことで、このとき墨書した巻斗(まきと・肘木の上にある小さい升形)が発見されて、年号、月日、時刻が明記されていたことから塔の建立時期が判明したのだそうな。ただ、「此のふでぬし弐七」とだけあって、名前はなかったと書いている。
誰が、何のために・・・。 

この最初の部分に触れるだけでも引き込まれずにはいられない。…でしょ?


私にはタカラモノのようなこの2冊。

明日は絶対に忘れずに〈解体キングダム〉を見るのだわ。

コメント (12)
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