12月2日
大曲駅から奥羽本線の各駅停車で30分、十文字と言う駅で降りる。
ここから今度はバスに乗って10分、横手氏増田町へ行く。
バス停前にはありがたいことに休憩所とコインロッカーがあるのでここに荷物を預け、早速町歩き開始。
まずは毎月2、5、9の付く日に開催されるという朝市へ。
ちょうど2の付く日だったのはラッキーだが、早朝からお昼までの市場、11時半にはもう店じまいしてしまったところが多くてお客さんの姿もなく、はなはだ寂しい。
それでも箱いっぱいのハタハタやら山菜やらを見て歩けば、優しげなおばちゃんがいぶりがっこの試食をさせてくれたりして、ここはもっと早い時間に来たかった。
朝市通りの前に伸びるのは中七日町通り。
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車もさほど通らない狭い道だが、この通り沿いに古い建物が立ち並び、その中に全国でも珍しい内蔵というものがあって、いくつかが一般公開されているというのでやってきたのだ。
まずお邪魔したのは「佐藤又六家」。
表には小さな「マタロク・カメラ店」と言う看板が出ているが、ごめんください、と引き戸を開けるとすぐにご主人が出てこられ、見学料200円を払うとすぐに先に立って案内を始めてくださる。
内部は勝手に見られるのだと思っていたが、実はこの町の建物はすべて住人の案内付き。それも道理で、これらの建物はどこも現在居住中のところばかりなのだ。
特にこの佐藤さんのお宅の場合は、大きな蔵の周りに普通の家の壁、屋根が作られ、居住部分は蔵の中。
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しかも奥へ奥へと細長い造りで、表からはわからないがとんでもなく広い。
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2階に上がれば太い梁に手斧の跡も見え、明治前期に建てられたままなのがよくわかる。
又六さんの並びにあるのは佐藤三十郎さんのお家。
表はこの通り、ごくありふれた古い商店風なのだが、ここも案内されて細長い住居部分を通り過ぎると、一番奥に内蔵の入り口がある。
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そしてこの中の壁がなんともモダンな印象のストライプ。白い漆喰部分は磨き上げられ、木の部分との対照が実にいい。
正面の床の間や、一番奥の扉の意匠もすばらしいが、案内してくださったご主人によると、この町の内蔵に文化庁の調査が入り始めた数年前まではここはがらくたがあふれる物置で、こんなに凝った作りになっているとは家の人たちも知らなかったのだそうだ。
さらに通りを歩き、ちょっと離れた谷藤家。
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こちらは表がごく普通の民家風で、玄関からお邪魔すると品のいい年配の女性が出てきてくださった。
住居部分は昭和になってから建て直したが、内蔵は明治中期のものとのこと、磨き上げた黒漆喰の壁がすばらしいが、蔵の正面は天井が吹き抜けになっていて高く、「夏は涼しくていいんですけど、冬は寒くてねえ」と苦労していらっしゃるようす。
いろいろお話を伺って、帰る時には玄関の外までお見送りしてくださり、なんだか知り合いのお家にお邪魔したみたい。
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町にはまだまだ面白そうな建物があるが、家ごとに思いのほか時間がかかるのであと一軒だけ見せていただこう。
と入らせていただいたのは山吉肥料店さん。
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こちらも表は店舗になっているが、この部分は明治後期のものだそうで天井がとても低い。
しかしその奥へと伸びる住居部分は天井が高く
さらにその奥の内蔵部分では2階分が吹き抜けになっている。
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この蔵扉の前は台所になっていて、親からは何も作るなと言われたけれど、あまりの寒さに台所に壁と天井を作ってしまった、とご主人は笑われながら、今も使っているという井戸まで見せてくださった。
こちらの内蔵は増田町でも最大で細工も凝っているが、作られたのは昭和8年でおそらく一番最後のものとのこと。しかも用途は冠婚葬祭の際の座敷なので、使われるのは何年、何十年に一度だけとか。なんとも贅沢なことだ。
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ご主人には裏の味噌蔵や来客用の離れまで見せていただき、ここにはすっかり長居をしてしまったが、おかげでとてもためになった。
最後は観光物産センターである「蔵の駅」でタクシーを呼んでもらい、待っている間に若いおねえさんとお話すると、この町には45軒ほど内蔵のある家があるが、表からは見えないし、人に言うことでもなかったのでつい最近までみんな他の家の存在は知らず、増田町でも内蔵を見たことのない人が大勢いるのだそうだ。
そんな内蔵が最近になってテレビや雑誌で取り上げられ始め、実際自分がこの町の存在を知ったのも「大人の休日倶楽部」の会報誌のおかげ。そのためまだ来訪者は少ないらしく、東京から一人で来たと言うとどの家でも驚いてとても喜んでくださった。
しかし歴史的建造物の残る町でもこんなに居住者とお話しできるところは他にはないだろう。観光客が多くなったら難しくなるかもしれないが、このふれあいの楽しさはぜひとも残していただきたいところ。
公開されている15軒のうち4軒しか拝見できなかったし、ここはぜひまたもっとゆっくりと来てみたい。
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待合室まで蔵のような作りの十文字駅からはまた大曲まで戻り、スーパーこまちで今度は東京まで。
計画では十文字の道の駅で横手焼きそばを食べようと思っていたのだが、時間が無くなってしまったので大曲の売店に一つだけ残っていた駅弁で遅いお昼。
「こだわり鶏めし」950円は比内地鶏の歯ごたえがよく、特にごまがたっぷりのそぼろがおいしい。でもそれ以上にご飯がおいしくて、やっぱりあきたこまちはおいしいな。
列車に駅弁、温泉に観光と、5日間の大人の休日、めいっぱい楽しませてもらった。
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大曲駅から奥羽本線の各駅停車で30分、十文字と言う駅で降りる。
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バス停前にはありがたいことに休憩所とコインロッカーがあるのでここに荷物を預け、早速町歩き開始。
まずは毎月2、5、9の付く日に開催されるという朝市へ。
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ちょうど2の付く日だったのはラッキーだが、早朝からお昼までの市場、11時半にはもう店じまいしてしまったところが多くてお客さんの姿もなく、はなはだ寂しい。
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それでも箱いっぱいのハタハタやら山菜やらを見て歩けば、優しげなおばちゃんがいぶりがっこの試食をさせてくれたりして、ここはもっと早い時間に来たかった。
朝市通りの前に伸びるのは中七日町通り。
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車もさほど通らない狭い道だが、この通り沿いに古い建物が立ち並び、その中に全国でも珍しい内蔵というものがあって、いくつかが一般公開されているというのでやってきたのだ。
まずお邪魔したのは「佐藤又六家」。
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内部は勝手に見られるのだと思っていたが、実はこの町の建物はすべて住人の案内付き。それも道理で、これらの建物はどこも現在居住中のところばかりなのだ。
特にこの佐藤さんのお宅の場合は、大きな蔵の周りに普通の家の壁、屋根が作られ、居住部分は蔵の中。
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しかも奥へ奥へと細長い造りで、表からはわからないがとんでもなく広い。
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2階に上がれば太い梁に手斧の跡も見え、明治前期に建てられたままなのがよくわかる。
又六さんの並びにあるのは佐藤三十郎さんのお家。
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表はこの通り、ごくありふれた古い商店風なのだが、ここも案内されて細長い住居部分を通り過ぎると、一番奥に内蔵の入り口がある。
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そしてこの中の壁がなんともモダンな印象のストライプ。白い漆喰部分は磨き上げられ、木の部分との対照が実にいい。
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正面の床の間や、一番奥の扉の意匠もすばらしいが、案内してくださったご主人によると、この町の内蔵に文化庁の調査が入り始めた数年前まではここはがらくたがあふれる物置で、こんなに凝った作りになっているとは家の人たちも知らなかったのだそうだ。
さらに通りを歩き、ちょっと離れた谷藤家。
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こちらは表がごく普通の民家風で、玄関からお邪魔すると品のいい年配の女性が出てきてくださった。
住居部分は昭和になってから建て直したが、内蔵は明治中期のものとのこと、磨き上げた黒漆喰の壁がすばらしいが、蔵の正面は天井が吹き抜けになっていて高く、「夏は涼しくていいんですけど、冬は寒くてねえ」と苦労していらっしゃるようす。
いろいろお話を伺って、帰る時には玄関の外までお見送りしてくださり、なんだか知り合いのお家にお邪魔したみたい。
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町にはまだまだ面白そうな建物があるが、家ごとに思いのほか時間がかかるのであと一軒だけ見せていただこう。
と入らせていただいたのは山吉肥料店さん。
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こちらも表は店舗になっているが、この部分は明治後期のものだそうで天井がとても低い。
しかしその奥へと伸びる住居部分は天井が高く
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さらにその奥の内蔵部分では2階分が吹き抜けになっている。
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この蔵扉の前は台所になっていて、親からは何も作るなと言われたけれど、あまりの寒さに台所に壁と天井を作ってしまった、とご主人は笑われながら、今も使っているという井戸まで見せてくださった。
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こちらの内蔵は増田町でも最大で細工も凝っているが、作られたのは昭和8年でおそらく一番最後のものとのこと。しかも用途は冠婚葬祭の際の座敷なので、使われるのは何年、何十年に一度だけとか。なんとも贅沢なことだ。
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ご主人には裏の味噌蔵や来客用の離れまで見せていただき、ここにはすっかり長居をしてしまったが、おかげでとてもためになった。
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そんな内蔵が最近になってテレビや雑誌で取り上げられ始め、実際自分がこの町の存在を知ったのも「大人の休日倶楽部」の会報誌のおかげ。そのためまだ来訪者は少ないらしく、東京から一人で来たと言うとどの家でも驚いてとても喜んでくださった。
しかし歴史的建造物の残る町でもこんなに居住者とお話しできるところは他にはないだろう。観光客が多くなったら難しくなるかもしれないが、このふれあいの楽しさはぜひとも残していただきたいところ。
公開されている15軒のうち4軒しか拝見できなかったし、ここはぜひまたもっとゆっくりと来てみたい。
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待合室まで蔵のような作りの十文字駅からはまた大曲まで戻り、スーパーこまちで今度は東京まで。
計画では十文字の道の駅で横手焼きそばを食べようと思っていたのだが、時間が無くなってしまったので大曲の売店に一つだけ残っていた駅弁で遅いお昼。
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列車に駅弁、温泉に観光と、5日間の大人の休日、めいっぱい楽しませてもらった。
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