文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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親鸞「四つの謎」を解く

2020-10-01 09:01:46 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 

 

 昨年初めに亡くなられた梅原猛さんが親鸞の謎に挑む。梅原さんは旧制中学校4年の時に、歎異抄を初めて読んだそうだからかなり早熟だったのだろう。「はじめに」に梅原さんが親鸞が亡くなった90歳になったと書かれているが、やらねばならぬことがたくさんあり、あと5,6年、できれば10年の時間が欲しいと言われている。残念なことに梅原さんは昨年亡くなられたが、この知的好奇心は見習いたいと思う。

 さてタイトルにある4つの謎とは、

1.出家の謎
2.親鸞が法然門下に入門した謎
3.親鸞結婚の謎
4.親鸞悪の自覚の謎
(pp15-16)



これらについて、簡単に説明しよう。1であるが、親鸞は中級貴族で藤原氏の流れをくむ日野氏の出身である。しかし親鸞の兄弟は誰も家を継がずに出家しているのだ。これはなぜか。

 2については、親鸞が比叡山に入った時、その師は摂政・関白も務めた九条兼実の同母弟で、四度も天台座主を務めた慈円であった。親鸞もそれなりの出世をするはずだったのに、なぜ乞食坊主同然の法然の弟子になったのか。

 3については、親鸞の妻は恵信尼とされているが、実はその前に九条兼実の娘の玉日姫を娶っていたとの伝承があるのだ。

 最後の4つ目であるが、仏教では五逆を犯した人は往生できないとされていた。しかし親鸞はいろいろな仏典を引用してなんとか五逆を犯した人も往生させようとする。

 これらの謎を解く鍵は、真宗高田派に伝わる。「親鸞聖人正明伝」と親鸞研究者の西山深草氏の著書「親鸞は源頼朝の甥-親鸞先妻・玉日実在説」(白馬社、2011)にあるという。「親鸞聖人正明伝」とは親鸞の玄孫に当たる存覚が書いたと言われるもので、本願寺系列の学者からは偽撰とされているものだ。

 浄土真宗と言うと本願寺を連想する人が多いと思うが、実はその他にも色々ある。高田派はもともと東国にルーツを持つものだ。

 梅原さんの学問の進め方には二つの特徴があるように思える。一つは、定説とされているものに疑問を持つこと。もうひとつはフィールドワークに重きを置くこと。本書は学問を志す人には参考になることが多いように思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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