夕方郵便受けを見ると、先般提出した秋田大学通信教育の「地球科学コース」のうち「火山」が返ってきた。結果は85A。試験問題が同封されていたので、また折を見て解いて提出しておこう。しかし、終了が確定している「一般科学技術コース」に3学習単位分の共通科目があるので、終了要件を満たすためには、7学習単位を3年間のうちにとればいいから気が楽である。
夕方郵便受けを見ると、先般提出した秋田大学通信教育の「地球科学コース」のうち「火山」が返ってきた。結果は85A。試験問題が同封されていたので、また折を見て解いて提出しておこう。しかし、終了が確定している「一般科学技術コース」に3学習単位分の共通科目があるので、終了要件を満たすためには、7学習単位を3年間のうちにとればいいから気が楽である。
泉鏡花の外科室。医学士・高峰と貴船伯爵夫人の秘めたる恋を描いたものだ。しかし、不倫を描いた作品という訳ではない。二人は、9年前、まだ高峰が医学生だったころ、小石川植物園でほんの一度きりすれ違っただけなのである。しかし、2人はこの一度きりの出会いで恋に落ちた。そして、その秘めた恋を大事に守ってきたのだ。
高峰はかの婦人のことにつきて、予にすら一言をも語らざりしかど、年齢においても、地位においても、高峰は室あらざるべからざる身なるにもかかわらず、家を納むる夫人なく、しかも渠は学生たりし時代より品行いっそう謹厳にてありしなり。予は多くを謂わざるべし。
そして時代は巡り、伯爵夫人は、業病に侵され手術することになる。その手術をするのが高峰医師というわけだ。しかし、伯爵夫人は、手術に麻酔をかけることを拒否する。麻酔をかけられると、夢うつつのうちで、秘めたる思いを暴露してしまうかもしれないと思ってだ。
「そんなに強しいるなら仕方がない。私はね、心に一つ秘密がある。痲酔剤は譫言を謂いうと申すから、それがこわくってなりません。どうぞもう、眠らずにお療治ができないようなら、もうもう快らんでもいい、よしてください」
そして、とうとう麻酔なしの手術となる。しかし、伯爵夫人は無茶苦茶な行動をする。
「痛みますか」
「いいえ、あなただから、あなただから」
かく言い懸かけて伯爵夫人は、がっくりと仰向つつ、凄冷極まりなき最後の眼に、国手をじっと瞻りて、
「でも、あなたは、あなたは、私を知りますまい!」
謂うとき晩し、高峰が手にせるメスに片手を添えて、乳の下深く掻き切りぬ。医学士は真蒼になりて戦きつつ、
「忘れません」
その声、その呼吸、その姿、その声、その呼吸、その姿。伯爵夫人はうれしげに、いとあどけなき微笑を含みて高峰の手より手をはなし、ばったり、枕に伏すとぞ見えし、脣の色変わりたり。
青山の墓地と、谷中の墓地と所こそは変わりたれ、同一日に前後して相逝けり。
文語体なので読みにくいが、昔はこんな恋もあった。直ぐエッチなことをしたがる今の恋人たちには、爪の垢でも煎じて飲ませたいと思う。ところで、麻酔なしで骨を削るような手術は、気絶でもしない限り、絶対と言ってもいいほど不可能だと思うのだが。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。
本書は、昔テレビで放映されていた「必殺仕掛人」の池波正太郎による原作小説をコミカライズしたものだ。「必殺仕掛人」というのは、緒形拳、林与一主演で、後継の「仕事人」シリーズの嚆矢となったものだ。
実は同じ時間帯で、他局であの中村敦夫主演の「木枯し紋次郎」(原作:笹沢左保)をやっていたので、どちらを見るか迷ったものだ。今なら録画して両方見るということもできるが、当時はまだまだビデオは一般的ではなかったし、テレビも一家に一台というのが普通だった。
この「仕掛人」というのは、要するに殺し屋のこと。藤枝梅安の表の顔は鍼医者。そしてその相棒の仕掛け人は、彦次郎という楊枝職人である。
テレビドラマの「必殺仕掛人」では、緒形拳の演じる梅安の相棒として林与一が演じる西村左内という浪人が出てくるが、この作品には出てこない。調べてみると、どうも左内は、池波の短編「殺しの掟」に出てくる登場人物のようだ。
そして、これも「殺しの掟」の登場人物らしいが、テレビドラマではもっぱら山村聡演じる音羽屋半右衛門が元締めだった。しかしこちらでは全く出てこず、代わりに色々な人物が元締めとして出てくる。
収録されているのは次の作品。
・おんなごろし
・殺しの四人(前後編)
・秋風二人旅(前後編)
梅安は、女性に対してものすごい不信感を持っている。これは梅安の言葉だ。
男の方がまだしも可愛げがある。そこへゆくと女なんて生き物はまるで化け物だよ(p49)
いったいどんなトラウマがあるんだと思うが、本書を読むと、梅安がそう思うのも分かる気がする。描かれるのは、梅安の子供時代、梅安や彦次郎が仕掛人になったいきさつなど。
同じ藤枝梅安を描いていても、テレビドラマとは大分違うので、ドラマを視ていた人も楽しめると思う。
☆☆☆☆
※初出は「風竜胆の書評」です。