田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北海道内の野生哺乳動物の変遷

2022-05-23 16:28:52 | 講演・講義・フォーラム等

 明治以降、北海道が開拓によって人々が道内全域に住むようになってから、道内に棲む野生の哺乳動物たちは人間の都合もあってずいぶん様相が変わってきたという。併せて哺乳動物たちを自動撮影する話を聴いた。   

 5月24日(土)午後、札幌市資料館において北海道自然保護協会が主催する「自然保護 講演会」が開催され参加した。講演は「野幌の哺乳類~自動撮影観測の18年~」と題して、北海道森林研究所の研究員として勤められていた平川浩文氏が講師を務められた。

 演題とリード文がずいぶん違うじゃないかと訝れる方もいるかと思うが、講演は前半が道内の哺乳動物の変遷について触れられ、後半が自動撮影観測のことを話されたのだが、私の興味が前半に傾いていたこともあり、リード文をそうさせていただいた。

 従来北海道内には在来種としてヒグマ、オオカミ、シカ、キツネ、ユキウサギ、タヌキ、クロテンなどがいたそうだ。その中からオオカミとカワウソはすでに絶滅してしまっている。オオカミが絶滅した要因はオオカミの餌だったシカが人間によって大量捕獲されたためにオオカミが牛や馬など家畜を襲うことになった。このことが主要因となり人間はオオカミを捕獲し絶滅へと追い込んだ。またカワウソは毛皮を利用しようした人間に捕獲されたことと、河川整備が進んでことによって絶滅したとされている。

 一方、北海道には本来棲息していなかった哺乳類が人間の手によって持ち込まれ野生化したものとしてイタチ、ニホンテン、ミンク、アライグマなどがいるそうだ。

 こうしてみると、人間は自然界においてずいぶん罪深い存在だなぁ、と思えてくる。

       

       ※ 平川氏の自動撮影観測の取組みの歩みを図示したものです。

 話は道内に棲息する哺乳動物たちの生息数の増減を推測から推し量るのではなく、もう科学的に捕捉する一手段として自動撮影観測に取り組んだお話をうかがった。自動撮影とは、ご存じかと思うがカメラを固定し、その前を動物などが通るとそれを感知し、自動的にシャッターを切る仕組みで、野生動物の生態を探るシステムである。最近では登山する人数を捕捉する方法として登山口に近いところにこうしたカメラが設置されている山があり、私も体験したことがある。

 講師の平川氏はその自動撮影観測のシステムを企業と一緒に開発した方だという。最初に開発したのは2000年頃でフィルム式カメラ(商品名Yoy Shot G1)だったそうだが、やがて2010年頃になってデジタルカメラ(商品名 Yoy Shot Digtal)を開発したことで記録性も向上したそうだ。但し、分からなかったことがあった。それはフィルム式は感知すると同時にシャッターが切られるのだが、デジタル式は感知してからシャッターが切られるまでに0.5秒程度のタイムラグがあるということだった。そのため、動きの速い動物を逃してしまう場合があるということだ。メカに弱い私には理解できないことだが、現代の機器にも弱点があるということか?

   

   ※ 自動撮影観測で撮影した野生生物たちです。

 平川氏は2000年から2020年にかけて、個人的に、あるいは組織(北海道野生生物観測ネットワーク)として自動撮影観測を続けられたそうだ。

 組織としては全道的な広がりの中で観測したが、平川氏は2007年から2019年にかけて野幌森林公園内にカメラを据えて観測したという。その結果、圧倒的に観測されたのはキツネだったという。また観測後半になりタヌキやアライグマが目立つようになったそうだ。さらには少数ながらシカの出没も見られるようになったのがこの間の特色だとお話された。

   

 最後に、自動撮影観測はその地域の野生生物全体の生態(数)を反映したものではない、と断られた。あくまでカメラの前を通過した数であることに留意する必要があると…。ただ逆に言えば、その地域における野生生物の密度が反映された結果とも言うことができそうだ。

 また、野幌のことではないが、現在北海道においてニホンテンとクロテンの攻防が繰り広げられているとも話された。ニホンテンがクロテンを道南方面から駆逐しはじめ、現在札幌近辺の山野がその境界線でもあると話された。このことが自動撮影観測の成果かどうかは聴き損ねたが、興味深い現象である。

 野生生物の生態が人間の都合によって、その盛衰が左右されてきたということは人間側から見ると仕方のないことと言えるかもしれない。しかし、動物たちにとっては自らの存亡が人間の手に委ねられてきたという厳しい現実があった。そうした意味もあって近年は野生生物保護の声が大きくなってきているのだと理解することができた講演会だった。