綾戸智恵、上田正樹、熱帯JAZZ楽団、etc. etc.…。日本ジャズ界の巨星たちが揃ったステージは迫力満点だった。直射日光の強さに汗だくになったり、夕刻の肌寒さに震えたり、野外ステージの醍醐味も味わいながら、JAZZの世界に浸りきった7月22日(日)の午後だった。
※ 基本的に写真撮影はNGだったため、この日のブログの写真は全てHP上の写真を拝借しました。
PMFとともに札幌の夏の風物詩となっているSAPPORO CITY JAZZは、毎年野外で行うNORTH JAM SESSIONを行っている。しかし、ジャズの世界に縁遠い私にとっては出演陣がマニアックだったりしてなかなか参加する気持ちが湧かなかった。
ところが、今年は綾戸智恵、上田正樹という一般にも人気のシンガーがステージに登場するという。「これは参加せねば!」と思い、芝生席(3,500円)のチケットを購入した。
問題は野外ステージだから天気が問題である。その心配された天気の方は、最初の頃は曇り空で暑くもなく、寒くもなく絶好のコンディションだった。
ところが、14時ころだったろうか?上空の雲が去り、夏の直射日光が差し始めると猛烈な暑さに襲われた。「これはたまらん!」と持参していた雨傘を差したのだが、それほどの効果はなかった。
暑さに耐えながらもステージの音に耳を傾けていると、16時過ぎになり陽が西に傾いてくると、今度は肌寒さが襲ってきた。17時ころになると、我慢しきれず持参していたレインウエアを羽織ったほどだった。
というように、一日(いや半日)の中で気温が激しく変化した日だったが、これも野外ライブの醍醐味の一つなのかもしれない。
さて、肝心の出演者の方だが、私は全ての出演者のステージを楽しむことができた。出演順に紹介しながら私なりの短評を加えたいと思う。
◇札幌ジュニアジャズスクール 小学生クラス
札幌芸術の森を本拠地に、主として土・日に活動しているとのことだ。同じ小学生ということで先日のパークジャズライブで聴いた中の島小学校のBECONとどうしても比べたくなる。正直なところ技量的には中の島小学校の方が上かな?と思われた。学校内での活動の方が練習量が多くとれるから、その差はいたしかたないとも言えそうだ。しかし、元気いっぱいのステージは好感が持てた。
※ 青いユニフォームが小学生クラス、グレーが中学生クラスです。
◇札幌ジュニアジャズスクール 中学生クラス
中学生クラスになると、技量はグッと向上していることを感じさせてくれた。ほとんどの団員が小学生クラスからの継続と思われ、技量的にも、ジャズ音楽に対する理解も増していると思われる。
また、中学生まで継続しているということは、将来的に音楽の道に進むことを目ざしている団員も多いようだ。(事実、OB、OGの中からかなりのプロを輩出しているとも聞く)
◇マーサー・ハッシー楽団
楽団名が面白い。私は外国の楽団かと思っていたが、日本人ばかりである。どうやらバンドリーダー(あるいはバンドのオーナー?)がハシモトマサヒデさんということから、その名をもじって外国風の名前にしたようである。(確としたことではなく、あくまで私の想像である)
団員は高校生から大学生、一般人まで含めて、セミプロ的に札幌市内で活動しているようだ。ビッグバンドとしてNORTH JAM SESSIONに登場するくらいだから、その技量も確かなものだった。
◇ストックホルム・ジャズオーケストラ・クインテット
スウェーデン・ストックホルムで活動するプロのビッグバンドの選抜メンバーで構成されたクインテット(5人組)である。ところが何かの事情で二人が来日できなかったようで、ピアノとベースは日本人が担当し、トランペットとアルトサックス、ドラムスだけがストックホルムのメンバーだった。
日本人メンバーも含めて、ベテラン揃いで安定したモダンジャズをたっぷりと聴かせてくれた。
◇ジミー東原ルスターズ
このバンドは毎年夏に行われる「バンケイ・ミュージック・フェスティバル」でここ5年間、トリを取るバンドとして毎年聴かせてもらっているお馴染みのバンドである。
ブラスロックという分野の管楽器を前面に押し出した迫力あるサウンドを披露してくれた。
「あれっ?」と思ったことはリーダーのジミー東原がステージに登場しなかったことだ。ステージでは特に説明がなかったので心配になって帰宅して調べてみると、去年(2017年)の11月に亡くなっていたことが判明した。(合掌)それでも彼の名を冠してバンドを継続しているということのようだ。
◇上田正樹
それはもう上田ワールド満載だった!
英語の歌も、日本語の歌も、同じように聴こえる。それは〝上田語” といっても良いような、独特の上田ワールドだった。
上田ワールドは、この日の構成にも表れていた。彼の歌は「ブルース」のジャンルに属する。そのブルース(黒人霊歌)が発生した背景に思いを馳せ、メッセージ性の高い歌を中心に組み立てた構成だった。
虐げられた黒人に思いを馳せ、音楽家の中で「人は平等」と発したのはベートーヴェンが初めてだった紹介しながら、「第九」を歌い、「We Are The World」、「My Old Kentucky Home(ケンタッキーの我が家)」、「We Shall Over come」などのメッセージ性の高い歌を上田語で歌い上げ、会場内を上田ワールド一色に染めた感じだった。
なお、バンドの構成はピアノ+アルトサックス+女性バックコーラス+上田の4人構成だった。
◇綾戸智恵
こちらも上田に負けてはいない。大阪のおばちゃん&ジャズシンガーという摩訶不思議な綾戸ワールドの1時間だった。
小さな体から発するパワフルな歌で会場を魅了した。
バンドの構成は、オルガン(ピアノ)+ドラムス+ベース+綾戸という4人構成だった。もちろん時には綾戸がピアノを弾きながら歌うシーンもあった。
綾戸の場合は、いわゆるスタンダードジャズを綾戸流に翻訳したステージで、綾戸の笑いの世界と、本格的ジャズの世界が混然一体となった不思議な世界でもあった。
◇熱帯JAZZ楽団
熱帯JAZZ楽団は1995年にパーカッション奏者のカルロス菅野(元オルケスタ・デ・ラ・ルス)が結成したラテンジャズのビッグバンドである。
パーカッションが前面に出たラテンジャズは、私にはこの日最も心地よく聴こえてきた時間だった。
リズムをきっちり刻む演奏スタイルは、聴いていて体が自然に反応する。演奏する曲は分からずとも心地良さいっぱいだった。
NORTH JAM SESSIONのトリをとるに相応しいジャズバンドだった。
というように、ジャズ系の音のシャワーを浴び続けた8時間だった。
気温が激変するアウトドアでのライブだったが、そのことも含めて野外ステージを満喫することができた7月22日の午後だった。