以前にもレポートしたことがありますが、北海道立総合研究機構(略称:道総研)は定期的に道庁ロビーにおいてランチタイムセミナーを開催しています。
ランチタイムセミナーの名のとおり、昼休みを利用して道総研の研究成果の一端を市民に分かりやすく解説するセミナーです。
今回は二日間にわたって、三人の講師からお話を聴くことができました。その三人のテーマと講師の名前を紹介します。
◇「快適な暖房環境をつくるために」 建築研究本部 月館 司 氏
◇「温水を利用した暖房システム」 産業技術研究本部 白土 博康 氏
◇「木から生まれたエネルギー」 森林研究本部 小林 裕昇 氏
の三人でした。
三人の話の中から特に興味深かった事柄を列挙すると…。
◇人間の深部体温37℃を維持するためには皮膚温が33~34℃のときが最も快適である。(冬は暖房だけではなく、衣服による調節が大切だということになります)
◇日本の暖房エネルギー事情を過去30年間にわたって調べると、産業用は減少傾向、業務用・運輸用が横ばい傾向なのに対して、家庭用だけ2.5倍にも増加し、家庭の生活環境がエネルギーを消費する割合が大きくなってきている。
◇暖房のシステムとしては、ファンなどによって暖気を送るより、温水によってラジエターからの放熱、床暖房による放熱と熱伝導のシステムの方が快適性に優れている。
◇木質ペレットを燃焼させるペレットストーブは化石燃料と違いCO2の削減に威力を発揮するが、ストーブの価格、燃料の確保、メンテナンスの煩雑さなど、普及するためには解決しなければならない問題がまだ多い。などなど…。
ところで最近は大学をはじめとして、こうした研究機関などが市民向けの講座やセミナーを開催することが目立ってきたように思います。
このこと自体はとても歓迎すべきことだと思っています。各研究機関が研究成果を広く発信していくことで機関の存在意義が社会に伝わっていくことになるし、研究者の不得手としている“伝える力”も鍛えられると思うからです。
一方で、主たる任務である研究の方にも力を注いでいただきたいとも思います。私たちに市民に分かりやすく伝えることに腐心するあまり、肝心の研究がおろそかになってしまっては本末転倒というものです。
日本の、北海道の科学技術の進展を期待したいと思います。