10数年ぶりに授業をした。といっても、本格的なものではなくシニアの方々10数名を前にした模擬授業である。模擬授業とはいっても久しぶりの授業で緊張した。授業は、私の若き日の体験を語るものであった。はてした評判は??
※ 50年前に制作したであろう私が歩いた足跡を記した世界地図が見つかった。なぜ作ったのかも判然としないが、大学祭において旅の報告をした際に作ったのではと思う。
「めだかの学校」では現在、「古典落語を聴く会」と「自らの体験や学びを語る会」を並行して実施している。
1月22日(月)は、その中の「自らの体験や学びを語る会」があり、私がその回の当番であった。
さて私は何を語ろうか?と思ったが、私は今から50年も前のことであるが、私の人生に大きな影響を与えてくれた
「若き日の欧亜貧乏旅行」のことを話そうと思った。
その体験をどのように話そうかと構想していた時、私がまだ現職中に卒業間近な子どもたちに対して私の体験を授業したことがあり、たまたまその授業案が残っていた。
そこで私は、通常の一方的に話す形式もいいが、少し変化をつけて授業の形で聞く側も参加する授業形式も面白いのでは、と考え模擬授業として実施することにした。
授業案は「道徳」の授業として行ったので、授業名は
「願いを抱け、夢を持て」というものだった。
授業に当たって準備したものは、世界地図、小田実著「何でも見てやろう」、私家本「母に贈る鎮魂歌」、そして旅の中で購入したバックパッカー用ザック、アフガンコート、セイロン(現スリランカ)で購入した太鼓を用意した。(よく50年前のものが残っていた!)
※ チェコスロバキア(現在のチェコ)の首都プラハで購入したバックパッカー用のザックです。国旗は私が縫い付けたもの。
私は授業の最初に、子どもたち次のように語りかけ、そして問うた。
「あるところにA君という若者がいました。A君は高校生の時、ある一冊の本に出合いました」(と言いながら小田実著「何でも見てやろう!」を提示する)
「この本にはどのようなことが書いてある本でしょうか?想像してノートに書きなさい」
ここで授業のすべてを再現することは難しい。
私は授業の形式を取りながら、子どもたちに私の体験を伝えていった。
ここでは、私が授業のポイントだと考えた二つの
〈教師の語り〉のみを再現したい。
※ アフガニスタンで購入したアフガンコート(羊の皮製)です。
〈教師の語り 1〉
夢もなく、漫然と大学生活を送っていた私は、このまま若さを浪費してしまっていいんだろうか、と悩みました。そんな時、高校時代に読んだ「何でも見てやろう!」の本のことを思い出しました。
「そうだ!とっても難しい夢だけど、夢に向かって挑戦してみよう!」と決心しました。
そう決心した私は猛然とアルバイトを開始しました。朝は4時に飛び起きて、寮から6km離れたバス会社まで走って向かいました。そこで大学の授業が始まるまでアルバイトをします。大学の授業が終わると夕方は家庭教師のアルバイトです。
それが終わると再びバスのアルバイトをしました。それで終わりではありません。今度は夜遅くまで開いていた深夜喫茶のボーイの仕事をしました。
とってもハードな毎日だったけど、「夢を実現するんだ!」という思いが強かったので、少しもつらいとは思いませんでした。
こうして私は、およそ一年半で約40万円の旅行資金を作り、夢を実現しました。1968年6月1日、私は横浜の港を発ち、翌年の1969年3月15日に横浜の港に帰ってきました。この旅で私は30の国と地域を巡ってくることができました。
そして授業の最後に小学校卒業を前にした子どもたちに次のように語りかけた。
※ セイロン(現在のスリランカ)で購入した民族太鼓です。
〈教師の語り 2〉
私はこの体験を通して、夢を抱いて努力することの大切さを学びました。夢に向かって頑張ることは人に大きな力を与えてくれると思いました。
多少つらいことがあっても、夢に近づいていると思うと少しもつらいとは思いませんでした。
今、小学校を卒業しようとしている君たちには、将来の夢をはっきり描いて、それに向かって懸命に頑張ってほしいと校長先生は心から思っています。
夢を持ち続けること、夢をあきらめないこと、そして夢に向かって努力し続けることは、きっとあなたたちの毎日を、そしてあなたたちの人生を素晴らしいものにしてくれると私は思います。
私もまた、今ひそかに夢を抱いて、その実現のために頑張っています。
こう語りかけ、授業を終えた。
さて、肝心の模擬授業を受けたシニアの感想はどうだったろうか?
シニアの方々は、私の発問や指示に従い、一生懸命授業に参加してくれた。
直接授業に対する感想は聞かれなかったが、私の体験にはとても興味を持ってくれたようだった。私の体験に次から次へと質問が寄せられた。
シニアたちから指摘された。この時の体験が今の私をつくってくれていると…。