田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

悩まされるポプラの綿毛

2016-06-30 17:12:45 | ボランティア
 ポプラの綿毛が幻想的だって!? そうだろうなあ…、ただ眺めるだけの人にとっては…。ところがその周りを清掃する私たちボランティアにとっては毎年悩みの種なのだ。過日の清掃ボランティアでは全員がマスクを装着し、漂い舞うやっかいな綿毛を掃き集めたのだった。 

          
    ※ 近代美術館の前庭に降ったポプラの綿毛です。見る人によっては“幻想的”にも見えるでしょう。

 道立近代美術館の前庭には巨大なポプラの木が屹立している。ポプラはたくさんの葉をたたえ、夏の陽を遮り、前庭を訪れた人たちに快適な日陰を提供してくれている。
 ポプラはまた、初夏の花の時期を終えると、綿毛を付けた種を大量に発生させる。
 ウェブ上ではそのことを次のように伝えている人もいた。

 札幌に訪れたとき街中に白いふわふわしたものが舞っていました。聞けば、ポプラの綿毛とのこと。東京在住の私にとってはとても幻想的で、まるで夏に降る雪のようでとてもきれいでした

 確かにその光景を見て、通り過ぎる人にとってはそうしたメルヘンチックな感想を抱く人もいるだろう。しかし、路上を清掃したり、花壇の花の維持管理などのボランティアをしている私たちにとっては、まったくの困りもののポプラの綿毛だった。
 毎年、毎年、大量の綿毛をまき散らすポプラは、花(草)文字を描くクサツゲという葉の間に絡みつき、またラベンダーの花を真っ白に覆い光をさえぎってしまうのだ。

          
          ※ 綿毛は写真のように花や葉にまとわりつくように絡み付きます。

 困りきっていた私たち会員の中から、「せめて花壇をネットで覆って綿毛から守りましょう」という意見が出され、今年はネットを購入して、花壇全体を覆うことにした。
 綿毛が盛んに舞う6月も終わりを迎えた。今のところネットは綿毛を遮断し、効果を発揮しているようにも見える。はっきりとした評価は7月に入り、ネットを外した頃にはっきりするかもしれない。

          
     ※ 見映えはけっして良くないのですが、今シーズンはこうして花壇をネットで覆いました。

 花壇のところはネットである程度解決しても、近美前の歩道は綿毛で覆われ、それが雨に濡れて固まり、路上は醜いばかりに悲惨な状況だった。
 先日、6月24日(金)、今シーズン第5回目となる「近美を愛するブリリアの会」の活動を呼びかけた。参加していただいた9名の会員は、舞い漂う綿毛を吸い込まぬよう全員がマスク掛けの重装備で清掃活動にあたった。
 大量に路上を覆っていた綿毛はたちまちのうちに掃き清められ、すっきりとした路上に変身した。

          
          ※ 清掃前の近代美術館前の様子です。綿毛の一部は雨のために固まったものもあります。

          

          ※ 写真のように全員がマスクを付けての活動となりました。

          

          
     ※ 清掃後の路上の様子です。綿毛の一部は濡れて固まり、竹ぼうきではお手上げの部分もありました。

 私たちが近美前の清掃ボランティアを止めないかぎり、これからもポプラの綿毛との付き合いは続くだろう。「これも自然現象の一つ」と割り切り、綿毛と付き合っていかねばなるまい…。

大都会の奇跡!北大植物園

2016-06-29 21:09:44 | 「めだかの学校」関連

 「大都会の奇跡!」と称することを聞いたことはないけれど、私はそう称する価値が十分あるように思う。大喧騒の札幌駅から徒歩10数分のところに、大木が生い茂り静かな雰囲気の別世界へと誘われる。それだけではない魅力に満ちた北大植物園を訪れてみた。 

          
          ※ 針葉樹林の大木が林立する光景は都心にいることを忘れさせてくれます。

 6月28日(火)午後、私は数年ぶりに「北海道大学植物園」を訪れる機会を得た。
 この日は、6月の「めだかの学校」の野外学習として、北大植物園が今回のフィールドとなったのだ。
 天候は晴れ、参加者は43名だった。私はこの日、参加者を2グループに分けた一方を引率する役割を担った。旗をもって、ガイドの後ろを付いていく、まるで旅行会社の添乗員のような役割だった。

          
          ※ ボランティアガイドの説明を聞く参加者たちです。

 最初に案内されたのは北方系の大木が林立する針葉樹林の林だった。きれいに整えられた芝生の間に大木が屹立している様は、もうそこが札幌の都心にいることを忘れさせてくれる。

 植物園は観光目的ではなく、あくまで研究目的であるため、北方民族植物標本園、草本文科園、バラ園、高山植物園、カナディアンロックガーデン、温室などに分かれて展示されている。栽培されている花や木の種は約4,000種だそうだ。
 さらに園内には、博物館、宮部金吾記念館、北方民族資料室などが配され、博物館的機能も備わっている。

          
          ※ 南極観測で活躍した樺太犬タロの剥製も展示されている植物園の博物館です。

          
          ※ 植物園内の建物にも歴史的価値を感じます。写真は宮部金吾記念館です。

 私が興味を抱いたのは「北方民族植物標本園」だった。資料によると「東アジアの北方民族、ことにアイヌ、ウィルタ、ニブフの3民族が利用した約200種の植物を、衣(染織を含む)、食、住(用材、器具材、生活用品)、薬、祭礼・祈祷、狩猟などの利用内容とともに展示しています」とあったが、北海道に普通に自生し、私も見慣れている草花がありとあらゆる形で先住民族たちの命を支えていたことが分かり、興味深かった。

          
          ※ 札幌の花でもあるライラックがアメリカから渡ってきた時の最古の株ということです。

 面積13.3haという広さはけっして大きくはないと思うが、たっぷり2時間の見学でも全てを見尽くしたという感じにはなれなかったほど、魅力がいっぱい詰まった植物園だった。
 さすがに植物園の周縁部に近づくと、園外を行き交うたくさんの車の音が耳に入るが、内部は木々が鬱蒼と茂り、都心にいることをすっかり忘れさせてくれるくらいの森の中だった。

          
          ※ 園内の花はほとんど咲き終わっていましたが、バラ園は花盛りでした。

 公の公園とは違いけっして安くはない入園料(420円)が徴収されるが、それがまた都心にあっても素晴らしい環境が保たれる一因なのかもしれない、と思った。
 頻繁に、というわけにはいかないが、「大都会の奇跡!」とも思える北大植物園に時おり訪れてみたいものである。


二人の鉄人に刺激を得て

2016-06-28 21:49:09 | その他

 私の知人に二人の鉄人がいる。その二人が揃って26日の日曜日にまた大きな金字塔を打ち立てた。sakagさんことSさんは、72歳にして初マラソンを見事に完走した。またフナさんことFさんはサロマ湖100キロウルトラマラソンをこれまた完走したとの知らせを受けた。二人とも私には真似することのできない鉄人である。 

          
  ※ 本日掲載の写真はいずれもウェブ上から拝借したものである。両氏の了解もいただいていないがお許しいただきたい。

 Sさんに関しては、最近の拙ブログに度々登場しているが、函館在住の登山愛好家として相当に有名な方である。
 Sさんにとってマラソンはあくまで余技であって、山登りや長距離ウォーク(彼は山旅、歩き旅と称している)を楽しんでいる方である。
 それが、函館マラソンが今年からフルマラソンも種目に加わったということで、マラソンが趣味の奥さまと一緒にエントリーされたそうだ。

               

 S氏は初フルマラソンに備えて、それなりの準備はしたようだが、フルマラソンに挑む人が必ずといって良いほど体験する30キロ走を一度も体験せずに本番を迎えたという。それなのに、なんと5時間を切るタイムで完走されたそうだ。
 S氏曰く、山パワー、歩き旅パワーの成せる技だったようだ。
 奥さんも三度目のフルマラソンをS氏よりは遅れたとのことだが、ほぼ同じ時刻にゴールされたとも聞いた。S氏は鉄人である。

         

 Fさんはマラソンを趣味としている方である。年齢は私と同年代であるが、早くから年間に3~4度もフルマラソンを完走している方だ。サロマ湖のウルトラマラソンにも過去何年間も出場している。初めのうちは関門制限で切られ、途中収容されることがあったそうだが、ここ数年は見事に完走を繰り返している。

 100キロを走りとおすということがどれだけ凄いことなのか、未経験者には想像する術もないが、その凄さを少しだけ実感したエピソードがある。
 それは、現在は諸事情のために実施されていないが、札幌→支笏湖間を歩く「北海道を歩こう!」というイベントがあり、私は2回ほど参加したことがある。距離数33キロであるが、山坂の多い難コースを歩きとおした私の身体はもうボロボロだったのだが、私はそれなりに満足していた。ところがある時、F氏にお会いし、F氏はそのコースを往復する大会で完走したというではないか!もう驚くほかなかった…。

                             

 100キロもの距離を完走するということは、相当にストイックな毎日を送っているのではないか、と想像される。私は30代の頃、一度だけフルマラソンに挑んだことがある。(河口湖マラソン)その時は半年間毎日のように10キロ程度のランニングを欠かさなかったと記憶している。おかけでなんとか完走することができたのだが、それ以来何度か再起しようと思ったが、準備する段階でいつも心が折れてしまい、果たすことができぬまま今に至っている。
 そう考えると、F氏は相当に意志が固く、自分に厳しくノルマを課し、それを果たされているものと思われる。今年もF氏は北海道マラソンにエントリーされるのではと思われる。F氏は鉄人である。

 このような二人の鉄人を知人としてお付き合いいただいていることにいつも感謝している。
 私にはけっして二人のようなことはできないが、二人の鉄人ぶりが私に相当な影響を与えてくれている。
 二人から刺激を受け、私の身体と相談しながら、私にできる範囲で山登りや歩き旅に挑みたいと思っている。


「俳句王国がゆく」公開収録を観る

2016-06-27 19:05:48 | イベント
 「俳句って、意外に面白いかも?」と思わせてくれる公開収録だった。俳句などという風雅なものにはまったく素養のない私だが、司会者や解説者のユーモア、出演者の個性などが噛み合い、知的好奇心をくすぐられたひと時だった。 

          
     ※ 番組収録中の写真撮影はNGだったが、収録前のNHK札幌放送局長の挨拶の際に撮りました。

 6月25日(土)午後、石狩市の花川北コミセンにおいてNHK・Eテレの番組「俳句王国がゆく」の公開収録が石狩市で行われ、幸運にも立ち合うことができた。
 その幸運を呼び寄せてくれたのは、昨年私が「いしかり市民カレッジ」に登録し、いくつかの講座を受講したことだった。公開収録を前にして、石狩市は市民カレッジの受講生にも公開集録への参加を呼び掛けてくれたようだ。
 ダメモトで応募していたところ、招待券が舞い込んだということである。

          
     ※ 両チームのキャップテン兼司会役のU字工事の二人。NHKとあって、まだ少し硬かったかな?

 「俳句王国がゆく」とは、日本を代表する俳人・正岡子規の故郷であるNHK松山放送局が制作する番組で、松山だけではなく全国各地に出かけて、松山で活躍する俳人と、各地のふるさとを愛する俳人が俳句でバトルを展開するという番組である。
 今回の公開集録に立ち合い、石狩市が道内においては俳句が盛んなマチであることを初めて知った。今回は石狩市の市制20周年を記念するイベントの一つとして番組収録を招請したということだった。

               
※ 個性派俳優・蟹江敬三さんの息子でもある蟹江一平さんです。

 司会・進行は漫才コンビでお馴染みの「U字工事」と愛媛のアイドルの一人「谷尾桜子」の三人、解説者(番組では主宰と称していたが)は日本伝統俳句協会の理事「坊城俊樹」、そして出演者は松山チームの代表は俳優の「蟹江一平」(彼がなぜ松山代表なのかは不明)、地元石狩市の代表は北海道出身の元五輪スイマーの「田中雅美」、その代表にそれぞれの地で作句活動をしている二人の方が加わり、三人対三人の対抗戦形式をとった番組である。

               
          ※ 北海道出身のオリンピックメダリストの田中雅美さんです。         

 石狩市の名所を吟行して句を創ったり、即吟による勝負があったり、地元小学生や集録参加者が作句した句の披露があったりと、たくさんのコーナーがあったが、私が最も興味を抱いたのは、番組後半の出演者6人と主催の坊城俊樹氏による「句会」だった。
 「興奮」というテーマが与えられ、予めそれぞれが作句した句からそれぞれが自分以外の句を二つ選ぶという互選によって秀作を決定するという形式だった。

 七つの俳句を列記してみると…、(テーマは「興奮」です)
 ◇指先に 水よ絡まれ 夏の夢
 ◇喧嘩して ひとり夕焼(ゆやけ)を もてあます
 ◇皐月晴れ 蛇皮を脱ぐ 四十路かな
 ◇待ち合わせ 浴衣で行くと メールきて
 ◇夏祭り 余剰次元の 恋を知る
 ◇薫風や 乗り手我が子の 草競馬
 ◇校歌斉唱 汗まみれなる 顔上げて

さて、この7句の中で秀作に互選された句はどれだと思いますか?
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 それは………、一句目の「指先に 水よ絡まれ 夏の夢」だった。
 作句は誰だと思いますか?
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 お分かりになった方もいるのではないだろうか?
 この句からは、私は直ぐにリオ・オリンピックの水泳競技の興奮を連想した。
 そうです!作句者は田中雅美さんだったのだ。
 彼女は、吟行の作句においてもなかなかの句をものにし、センスの良さを感じさせてくれた。
 ちなみに次作は「夏祭り 余剰次元の 恋を知る」という句を作句した石狩市の高校生辻君が獲得した。出演者は「余剰次元」という言葉を理解してはいなかったのだが、その言葉に「興奮」を感じ取ったようだった。
 ちなみに「余剰次元」とは、4次元を超える次元のことを指す物理用語のことらしい。若い高校生にとっては、夏祭りの独特の雰囲気がこれまで考えられなかったような形で恋が生れたことを詠った句のようである。

               
          ※ 今回の番組の主宰者役を務めた坊城俊樹氏です。ユーモアたっぷりの方でした。

 さて、肝心の主宰者である坊城氏の句だが、「喧嘩して ひとり夕焼(ゆやけ)を もてあます」という句で、かろうじて一票を獲得して面目を保った(?)形となった。
 その他の句も、それぞれが作句の意図を作句者からの説明を受けると、「なるほど」と唸らせてくれる奥の深さを感じさせてくれた。
 「作句って、意外に面白いかも?」…、そう感じさせてくれた「俳句王国がゆく」の公開収録だった。
 なお、収録された番組は7月17日(日)15:00~16:00にEテレにて放送されるそうである。U字工事、そして坊城氏が独特の面白みを醸し出してくれた。番組で確認していただければと思う。

花フェスタ2016を覗く

2016-06-26 20:06:21 | イベント
 雨が上がった昼下がり、「花フェスタ2016」が開催されている大通公園に出向いた。フェスタの中で毎年開催されている「ガーデニング甲子園」の出来栄えを見るために…。しかし、私の関心度は以前と比べると確実に低くなってしまった…。 

          

 今日(6月26日)は、以前に制作した「縄文土器」を野焼きして完成する日だった。ところが降り続く雨のため、主催者(北海道博物館)から来週に延期するという連絡が入り、スケジュールにポッカリと穴が開いてしまった。

 午前中はグータラ、グータラしていたのだが、これではならじと、雨が上がったのを幸いに「花フェスタ2016」を覗いてみようと思った。
 現職時代の私は、この「花フェスタ」に大きな関心を寄せていて、このフェスタに合わせて北見から車を走らせてきたこともあった。その頃は、職場でも、家の庭でも、花壇を美しく飾ることが生きがいの一つでもあったのだ。
 しかし、退職後に札幌へ出てきて、マンション住まいとなり、花への関心が急速に薄れてきてしまった。今はボランティアで多少の繋がりはもってはいるが…。

 さて「ガーデニング甲子園」だが、私の記録によると2010年の花フェスタから始まっている。
 その1回目は7校8チームが参加して行われている。今年は7回目ということになるが、11校15チームが参加しているということだから、チーム数でいうと倍増していることになる。農業高校を中心に、高校生たちがこの「ガーデニング甲子園」に関心を寄せている証拠なのだろう。今回見させてもらって、レベルも確実に上がってきていることを感じさせてくれた。
 優勝した新十津川高校の作品は、狭いスペースの中に見事なイングリッシュガーデンを完成させていた。

          
          ※ 大賞を獲得した新十津川農業高等学校の作品です。

          
          ※ 準大賞を獲得した剣淵高等学校の作品です。

          
          ※ 私が気になった岩見沢農業高等学校の作品です。

 今回、私は「ガーデニング甲子園」と共に、園芸店など専門家が造成する花壇コンクールにも注目してみた。各賞を受賞した花壇を紹介するが、さすがに専門家らしく花の色を意識した構成に洗練された素晴らしさがあった。

          
          ※ 札幌市長賞を受賞した花壇です。

          
          ※ もう一つ札幌市長賞を受賞した花壇です。

          
          ※ 小道具を駆使した組合長賞を受賞した花壇です。 

 フェスタは、その他にもランのコーナーやハンギングバスケットのコーナーなど様々なコーナーがあったが、もう一つのメインは園芸業者が花を販売する花市場だった。こちらは残念ながら私には関心を持つことのできないコーナーで、マイハウス(マイガーデン)を持つ人たちが、購入した花苗を手に持っているのを羨ましく眺めるだけだった。

          
          ※ 会場ではこうした園芸店の販売テントが目立ちました。

          
          ※ 西6丁目の野外ステージではフラダンスのグループのダンスが展開されていました。

 花の季節が到来したこの時期に「花フェスタ」を開催するのはグッドタイミングである。大通公園の西12丁目広場のバラ園は満開の時を迎え、まるで「花フェスタ」とコラボレーションしているようだった。

          
          ※ 西12丁目のバラ園は満開の時を迎えていました。

失速したロシア経済の回復はあるのか?

2016-06-25 22:25:55 | 大学公開講座
 好調だったロシア経済は油価の下落、西側諸国の経済制裁によって、2013年以来急速に失速したという。その現状を学びながら、はたして回復はあるのか?スラブ・ユーラシア経済の専門家から話を聞いた。

           

 6月24日(金)夜、北大スラブ・ユーラシア研究センターの公開講演会があり、参加し受講した。講演はスラブ・ユーラシア経済を専門とする同研究センターの田畑伸一郎教授「縮小するロシア経済:回復はあるのか?」と題しての講演だった。

 田畑氏はまず2000年以降のロシアのGDPと一人当たりGDPを表すグラフを提示した。するとそこには2000年以降のロシア経済の急激な伸びと、一時リーマンショックによる落ち込みはあったものの、それ以降も伸び続けていたものが2013年を境にして急激に落ち込んでいることが如実に表されていた。(グラフを写した写真を参照ください)

          
   ※ 出来の悪い写真ですがお許しを!青線が国のGDT、赤線が一人当たりGDPです。見事にリンクしています。

 こうした経過を辿ったのは、ロシア経済が偏に石油頼みだったことを表している、と田畑氏は指摘する。2000年代初頭は石油需要が順当で、石油資源国であるロシアは急激に経済成長し、2013年には2000年当初と比較し、GDPも一人当たりGDPも実に8倍もの成長を示している。
 それが2013年以降わずか3年で1/2にまで縮小してしまっているのである。

 その原因は世界の石油需要がだぶつき気味のため油価が低迷したこと、さらにはウクライナ問題で西側諸国が経済制裁に踏み切ったことが影響しているという。
 特に油価の低迷はロシア経済を直撃したようである。というのも、ロシアが経済成長を続けていたとき、国の経済を牽引する製造業が伸びなかったことが今の事態を招いているとした。これは「オランダ病」とも言われる現象とのことだった。
 「オランダ病」について説明すると多くの紙幅を必要とするため、興味のある方はウィキペディアあたりで調べていただきたい。

 しかし、ロシアも油価が落ち込み、「オランダ病」に罹っている現状に甘んじているわけではなく、そこからの脱却を図り「輸入代替」により製造業の発展に舵を切ってもいるようだ。その成果も徐々には現れているが、油価の落ち込みをカバーするには遠く及ばない現状だということだった。

                 

 さて、そうしたロシア経済の現状からの回復の見込みはあるのか、という問いについてだが、田畑教授は次のような見立てをした。
 油価の低迷は今後3~5年は続くだろう。そうすると、好むと好まざるにかかわらず、輸入代替の道を歩まざるを得ないのではないか、とした。その輸入代替が好ましい方向に進むには、ロシア国内の経済環境の改革が不可欠であるとした。
 その改革とは、市場メカニズムの強化と外国からの投資環境を改善することだとした。
 市場メカニズムの強化とは、国有企業の占める割合を縮小すること、独占構造を改革すること、中小企業の競争力を付けることなどだという。つまり、先進諸国のような市場メカニズムが実現することが鍵だとした。

 こうして聞くと、ロシア国民も大変だなあ、という感想を抱いたのだが、講演後の質疑応答において、意外とも思えることを聞いた。
 それは、今後さらにロシア経済が落ち込んだとしても、国債発行などで国の経済が破たんすることはないだろう、という。それはロシアが国としてどこかの国のような負債を抱えていないからと説明された。どこかの国って、どこ?
 遥か遠い他国のこととして聞いていた私は「はっ」と現実に戻された思いだった…。

映画 165 TAKAMINE~アメリカに桜を咲かせた男~

2016-06-24 16:42:30 | 映画観賞・感想

 主人公の高峰譲吉は明治時代にアメリカに渡り、タカジアスターゼを発見したり、アドレナリンを抽出したりするなど、科学者として名声を高めたほか、実業家としても腕を振るった。その高峰が私財を投じてワシントンに桜を寄贈したという実話を映画化したものである。 

               

 6月23日(木)午前、ちえりあ(札幌市生涯学習センター)で6月の「ちえりあ映画会」が行われたので参加した。今回取り上げられた映画は、タイトルどおり「TAKAMINE~アメリカに桜を咲かせた男~」という映画である。

 私はワシントンのポトマック河畔に日本から寄贈された桜が咲いていることは知っていたが、その寄贈者が高峰譲吉という科学者であり、実業家だったとは寡聞にして知らなかった。恥ずかしい限りである。

 日本の桜をアメリカに移植しようという発想は、日本の桜に感激した一人の米人女性(ナショナルジオグラフィック協会初の女性理事であったエリザ・シドモア)の提案だった。
 その考えに共鳴した高峰が日米両政府に働きかけ、私財を投じて桜の木をアメリカに寄贈することを実現させたという。しかし、一度目は病害虫の問題で焼却処分されるという悲惨な結果となったのだが、それにもめげず二度目の寄贈によって、現在ポトマック河畔では毎年、全米桜まつりが開催さるほど日本の桜が根付いているというストーリーである。

          
          ※ ポトマック河畔に咲くサクラの様子です。

 映画は、その桜の寄贈の過程を描きながら、高峰譲吉の生涯も描いている。そのあたりが映画の出来としてはどうだったのか?疑問が残るところである。簡単にいうと、映画としては焦点ボケの感が否めないのである。
 つまり科学者であり、実業家であった高峰譲吉という方は、単なる科学者として素晴らしい実績を残しただけでなく、日本とアメリカを繋いだ慈善家でもあった、ということは理解できたが、映画の描き方があまりにも拡散的なために、観る者に感動を与えるような仕上がりにはなっていなかった、というのが私の正直な感想である。

 映画は日本の桜が寄贈された1912年から100年経つのを記念して2011年に制作・公開されたようであるが、映画としては必ずしも成功したとは言い切れないものだったのではないだろうか?

               

 なお、高峰譲吉役を演じた長谷川初範が北海道の紋別出身だと初めて知った。


道産小麦の実状を学ぶ

2016-06-23 18:31:47 | 大学公開講座
 俗に北海道の畑作産品(ジャガイモ、ビート、小麦)の一つとされる小麦だが、その生産量は国内の7割を占めているそうだ。その道産小麦の品種改良に取り組んできた北海道農業試験所の研究員、さらには小麦を製品化・販売する側の方からの話を伺った。 

            

 6月21日(火)夜、北大農学部が主催する「時計台サロン」が時計台ホールで開催され参加して話を聞いた。
 この日のテーマは「進化する道産小麦」ということで、二人の講師の話を伺った。
 一つは、「おいしさ求める品種改良」と題して、北海道農業研究センターの田引正氏がお話した。
 二つ目は「意外に楽しいコムギな生活」と題してコムギケーション倶楽部を主宰する佐久間良博氏がお話した。

 しかし、私は田引氏の話はほとんど私には理解できなかった。というのも、専門の話を専門的にそのまま話すのである。そのうえ発音が不明瞭なためマイクを通した声は何を言っているのかまったく分からない場面が多すぎた。一般市民を対象とした講座の場合、もう少し専門的な話は噛み砕いて話をしてくれることはできないものなのだろうか?
 私が田引氏の話から理解できたことは、小麦には硬質小麦と軟質小麦があるということ。これまでは国内産小麦はうどんなどに供する軟質小麦が主であったが、国民のパン志向などもあって硬質小麦の生産も盛んになってきた。その硬質小麦は田引氏など関係者の努力によって品質が相当に向上してきたということである。
 しかし、それでもまだカナダ産やオーストラリア産と比較すると、品質的にそのレベルには至っていないということだった。

                     

                

 品質で追いついていないうえ、生産量では国内消費量の1割しか生産できていない国内(道産)小麦に未来はあるのだろうか?

 そのことについて一つの答えを提示してくれたのが、次に話された佐久間氏のお話だった。佐久間氏は江別市にある製粉会社の営業を担当していたようだが、同時に小麦の消費拡大を目ざしたさまざまな取り組みを展開されてきた方との紹介があった。
 佐久間氏は言う。小麦は世界中で約7億トンが生産されていて、穀物生産としては最大生産量であり、世界各地の食文化を形成している食物である、と強調された。
 氏によると、小麦にはさまざまな楽しみ方があるという。「育てて」、「調理して」、「食べて」、「読んで、観て」、「買って、交流して」とそれぞれの楽しみ方があると話された。
 そして今、道産小麦に魅せられた人たちが北海道へ移住し、道産小麦を材料としたさまざまなレシピづくりに挑んでいるという。
 コムギケーション倶楽部とは、小麦をキーワードとしてさまざまな業種、業界を結びつけて交流を図り、小麦の消費拡大を目ざして活動している団体のようだ。

                   

               

 佐久間氏の話から見えてくるのは、小麦を介して食文化の向上を図り、そのことで国内産小麦の生産拡大に寄与したいということなのだと私は解釈した。
 TPPが実施されることで、最も打撃を蒙るのではと思われる小麦であるが、田引氏たちの研究によって、外国産を凌駕するような高い品質の小麦生産を実現させ、佐久間氏たちのような活動によって諸外国が及ばないような美味しい料理を開発し、海外に発信する。 
 そうしたことで、収量的には外国産に及ばないまでも、高級化路線に舵を切ることによって国内小麦生産の灯を守り続けてもらいたい、と私は思ったのだが…。

映画 164 FAKE

2016-06-22 20:37:49 | 映画観賞・感想

 2014年にゴーストライター騒動で日本中の注目を浴びたあの佐村河内守氏を追ったドキュメンタリーである。騒動の後、メディアの前から姿を消した佐村河内氏を気鋭の監督・森達也が佐村河内氏の自宅での彼を追い続けるドキュメントである。 

               
            
 数日前の新聞でこの映画のことを知り、俄然興味が湧いて今日の午後、シアターキノに出向き観てきたものである。
 FAKE…、直訳すると「偽造する」、「見せかける」、「いんちき」、「虚報」などと訳される。
 このFAKEの意味するところが深いように私には思われた。つまり、佐村河内氏が今なおFAKEし続けているのか、あるいは森監督が観客に対してFAKEをしかけたのか?そのあたりが観る者によってさまざまなのかな?と思わせるところにある。

           

 森監督は、佐村河内氏に対して「信頼している」と語る。しかし、画面から伝わるのはどこか懐疑的な森監督の思いが滲み出てくるように思われた。
 佐村河内氏は言う。問題を暴露した新垣氏は佐村河内氏の耳は聴こえていたと嘘の証言をしていると…。画面での会話は、絶えず妻の手話通訳を介してのものだった。

                

 その佐村河内氏の独白には耳を貸さねばならない点も数多くあるように思われた。つまり私たちは、当時のマスコミ情報によってかなり刷り込まれていた点も確かにあるように思える。
 しかし、それでもなお映画を観終えた私としては、佐村河内氏はいまだにFAKEし続けているのではないかという疑念を拭い去ることができなかった。
 それは主として次の2点にある。
 一つは海外メディアのインタビューを受けた場面だった。佐村河内氏が曲のコンセプトを書き、それを図表のような形で示したのに対して、インタビュアーは「その図表から音楽に変わる瞬間を見せてほしい」と要求したことに対して、彼はその要求に応えることができなかった。
 さらに、ドキュメントの最後の場面で森監督は「いまぼくに隠していることはありませんか」と問うた場面で、佐村河内氏は沈黙してしまうのである。

                

 それまで能弁であった彼が、肝心の問い掛けに対して答えに窮してしまうところに、私は彼への疑念を拭い去ることができなかったのだ。しかし、これはあくまで私の感想であり、ドキュメントの要素としてはまだまだ考えらせられる点がたくさんある映画だった。
 特に、ドキュメントの最後になって、森監督が佐村河内氏に「作曲してみたら」とけしかけたところ(あまり良い言葉遣いではないですな)、それまで数か月以上音楽から離れていた彼が、シンセサイザーを用いてそれなりの曲を完成させるのだが、それすらも本当に彼が作曲したものかどうか、私には信じられない思いで画面を見ていたのだった…。

 はたして誰が、何が、FAKEだったのか??


高齢者の生涯学習の目的って?

2016-06-21 21:44:35 | 講演・講義・フォーラム等
 高齢者が生涯学習に取り組む目的は? 高齢者の生涯学習を実践している先達から話を聞いた。また、高齢者の生涯学習を指導する立場の方からの話も伺った。 

             

 毎月受講している「かでる講座」の6月講座は「特別講演」と銘打って、「道民カレッジ生」の取得単位数で常に先頭を走っている榎本聰子氏の講演を聴いた。
 榎本氏は道民カレッジの単位取得数が1万単位を突破したという方で、先日は高橋知事(道民カレッジ学長)から表彰を受けたという方である。(私などは榎本氏の足元にも及ばない)
 その榎本氏は現在78歳ということだが、放送大学に学び、その卒業論文として「高齢者の生涯学習の現状と課題」と題する論文をまとめたものを発表された。
             
 その内容は、私たち道民カレッジ生100人に対してアンケート調査を実施したものを分析・考察したものであった。(ちなみに私は被アンケート者にはなっていない)
 榎本氏は、論文などを書くことは初めての経験だと自ら吐露していたが、アンケートの内容、その分析・考察ともに私には目新しいものではなかった。しかし、78歳にして未だ学び続け、論文作成にも果敢に挑戦する姿勢には敬意を表したい思いである。

 アンケート結果から見えてくるものは、「道民カレッジ」で学んでいる方々は、人生を前向きにとらえ、より良く生きようしていることをはっきりと表す結果だったということである。
 榎本氏の分析で「道民カレッジで身につけた知識等が社会的評価を受けているか」という問いに対して73%が否定的であったとし、このことに対して榎本氏は「北海道の高齢者にとっては重要な学びの場であるが、社会的にはあまり評価されていないことが確認できる」と述べるにとどまっている。

 私が道民カレッジで学んでいることは、せいぜい雑学の知識を増やす程度ことだと心得ている。つまり頭の体操であり、老化防止なのである。
 いくら単位をかき集めたとしても、そのことで誰かを指導したり、あるいは集団のリーダシップを取りえたりするほどの技量が備わるわけではない。
 もし、そうした社会的評価を得たければ、正式な教育機関などで学んで資格等を取得すれば良いのである。
 
 その後にお話された町井名誉教授は、「道民カレッジ」の設立当初からかかわり、その後の運営にも関与されたそうだ。その町井氏が、「当初は道民カレッジの学びを北海道のために役立てたい」という理想を掲げたのだが、その後推移する中で「道民カレッジは『学び』に喜びを、生きがいを感じる」学びとすべきだと方向転換したことを明かされた。

             
         ※ こちらの町井名誉教授の写真もウェブ上から拝借した。写真の講義も私は拝聴している。
  
 私の皮膚感覚ではあるが、高齢者の学びに対する欲求はますます高まっているように感ずる。いろんな講座に集う高齢者がますます増えてきたように感じられる。
 そうした状況にあって、学びの幅にも、深さにも、多様性が出てくるだろう。しかし、それは社会的評価を受けるためでなく、偏に自らの生き方を豊かにするためのものであることを個々人が自覚することが必要なのではないかと、今回の講演を拝聴して思ったことだった。