田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 193 火垂るの墓

2017-08-31 23:48:44 | 映画観賞・感想

 ご存じ焼跡闇派を標榜して作家活動を続けた野坂昭如原作の実写映画である。幼い妹・節子が栄養失調で悲劇的な死を看取る兄・清太の無念さに、改めて戦争の悲惨さ、残酷さをあぶり出した映画だった…。


                 
 
 8月29日(火)午後、清田老人福祉センターで映画「火垂るの墓」の上映会があると知って遠路40数分をかけて駆け付けた。
 さすがに老人福祉センターである。地域のお年寄りたちがたくさん詰めかけていた。

 映画のあらすじは次のように紹介されている。
 「1945年、神戸の街を大空襲が襲う。清太(14歳)と節子(4歳)は空襲で母親を亡くし、父親は戦地にあり生死不明の中、二人は西宮に住むおばの元に身を寄せる。しかしおばは兄妹に対して冷たい仕打ちをし、それは次第に度を越していく。そのため、2人はおばの家を出て防空壕でひっそりと暮らすことにした。悲惨な飢えに耐える2人を楽しませるのは、ほたるの明かりだけだった…」

 このストーリーは原作者・野坂昭如の原体験がベースとなっているという。
 野坂は妹を世話をしながらも、結局は死なせてしまったことに強い悔いが残り、その贖罪の思いからこの「火垂るの墓」を書いたという。

 映画は観るものに改めて、戦争の悲惨さ、残酷さを思い出させてくれる。
 空襲に遭いうめき声を上げながら死んでいく人、生きるために他の人のことなど関心が無くなってしまう人、ついには人の道を外れることにさえ抵抗を感じなくなる人、などなど…。
 今回視聴した実写版映画は、子役の二人の稚拙な演技が最初は若干気になったが、それも映画に没入する中で気にはならなくなり、むしろ二人の健気さが効果を高めたようにさえ感じられた。

               
               ※ 実写版に出演した俳優の皆さんです。

 野坂は、この「火垂るの墓」と「アメリカひじき」の2編によって、1967年直木賞を受賞し、世の中に出た。
 映画に感動した私は、その帰路BOOK OFFに立ち寄って原作を購入したのだった。恥ずかしながら私は野坂の出世作をまだ読んではいなかったのだ。
 原作によると、映画とは違い主人公もまた妹の死後、栄養失調に倒れ死に至っている。(映画ではそこまで描かれていない)

                  

 評判によると、実写版も好評だったが、アニメ版(スタジオジブリ制作、監督・脚本高畑勲)はさらに評価が高いようだ。機会があればアニメ版もぜひ観たいと思った。


ゴッホ展 ~巡りゆく日本の夢~

2017-08-30 18:24:59 | イベント
 私にとって、北海道立近代美術館は最も近くて、最も遠い存在である。それくらい“美術”に私は疎く、関心も抱けない存在だ。そんな私でも“ゴッホ展”だけはチェックしたいと思っていた。その近くて遠い近美の「ゴッホ展」を覗いてみた。 

               
               ※ 写真がイマイチ不鮮明ですが、今回のポスターの一つです。

 どの分野も素人の私であるが、特に“美術”関連はいただけない。その良さをまったく感得できないのだ。それでも「ゴッホ展」が開催されると知って、「これだけは観ておかなくては」と思い、今日(8月30日)の午後、道立近代美術館を訪れた。

                
               ※ 特別展の場合は、写真のように美術館前にチケット販売場が特設される場合が多いようです。             

 近美の特別展の場合は、観覧者で混雑する例が多い。“ゴッホ”の場合、日本人のファンが多いと考えられ「混雑具合はどうかな?」と思いながら向かった。確かに多くの美術ファンが訪れてはいたが、恐れていたほどの混みようではなかった。

               
               ※ 展示室に入る前が唯一写真撮影を許されているところです。

 ゴッホというと「ひまわり」が有名であるが、その「ひまわり」を始めとして彼の代表的な作品は、オランダからパリへ転居した1886年以降の作品が多いようである。というのも、もともと彼の作品は暗い色調のものが多かったらしいが、パリに転居し、印象派、新印象派に画に触れて大きく触発されたそうだ。さらには、日本の浮世絵の存在も知ることにより、大きな影響を受けたということだ。
 今回の「ゴッホ展」は、その副題が示す通り、日本の、特に浮世絵との邂逅によって、浮世絵がどれだけゴッホの絵に影響を与えたか、ということが大きなテーマになっている。

                    
                    ※ ご存じのようにゴッホの絵の中でも日本でもっとも有名な“ひまわり”です。         

 今回の「ゴッホ展」では、広重、北斎、歌川国貞などの作品と、それらの影響を受けたと考えられるゴッホの絵を対置する手法がとられているので、美術に疎い私でも少しは理解することができた。
 ゴッホは彼の生涯の中で実際に日本を訪れたことはなかったのだが、パリで浮世絵の版画を買い集めるなどして、浮世絵の素晴らしさに傾倒していったようだ。
 その一つ、渓斎英泉の「雲龍打掛の花魁」をゴッホ流に描き上げた画が今回の「ゴッホ展」のポスターなどに使用され、今回の代表作的位置づけとなっている。

                 
                 ※ 右側が国定の描いた花魁です。それを参考にしてゴッホが描いた花魁が左側の画です。

 ゴッホはまた、精神的に不安定であったことが知られている。同居していたゴーギャンの耳を切り落としたり、発作が続いたりと、晩年は幸福な生活とは縁遠い日々だったようだ。そしてまだ若年といってよい37歳のときに通説では自死したと伝えられている。
 彼の絵は、彼の死後になって初めて評価されるようになったということで、このことも彼には不幸なことの一つに違いない。

                     
                    ※ ゴッホは自画像もたくさん残していますが、これは会場にも展示されている「画家としての自画像」です。
                                 
 今回、展覧会を覗いてみて、ゴッホの絵の明るい色調、大胆な色遣い…。それは素人にも画の良さを感得することができた。会場に掲示された説明を丹念に読んでいくと、彼がいかに浮世絵の影響を受けたのか、彼の絵のどこが素晴らしいのか、を良く教えてくれる。

 「ゴッホ展」はまだ始まったばかり…。10月15日まで開催されるようだ。一度覗いてみるのも悪くはないと思う。

NHK札幌放送局見学

2017-08-29 19:37:50 | 「めだかの学校」関連

 まるで修学旅行生のようにぞろぞろと…。「めだかの学校」の生徒たちはお行儀よろしく案内スタッフの後をつきながらNHK札幌放送局の局社内を見学したのだった…。 

 8月28日(月)午後、「めだかの学校」8月の野外学習があった。今回の野外学習の学習先はNHK札幌放送局の見学だった。放送局の見学は興味深いと見えて、参加者は定員の40名を超えて43名ほどの参加者だったらしい。

               
               ※ NHK札幌放送局の現局舎の様子です。

 見学の内容は、あらかじめNHKの方で定めた定食メニューにのっとったものと思われるが、◆第一スタジオの見学、◆第二スタジオにおいて現役アナウンサーのお話、◆ニュースができるまでをDVDで視聴、◆車庫へ移動して、大型中継車の中の見学、◆取材用テレビカメラの操作体験、という内容だった。

 この中で私が興味深く見入ったのは、大型中継車である。大型中継車はプロ野球中継やNHKのど自慢など、さまざまなシーンで活躍しているようだ。中継車はいわば移動調整室という役割なのだが、見学した大型中継車は8台のテレビカメラの映像を操作することが可能とのことだった。

 中継車の車内は両側にびっしりと機器が並び、非常に狭くなっていた。その狭い中で8台のカメラの映像を操作するために8人のスタッフが詰めると相当に狭いのではないかと思い、スタッフに伺うと、一人で3台分のカメラの映像を操作するということだった。
 詳しいことは分からないが、野球中継を思い浮かべると、全体の映像を掌握しているチーフプロデューサーからの指示に従い、瞬時にスイッチの切り替わり、その映像を私たちが楽しんでいるということになるのだろう。

               
               ※ 実際に見学した中継車の車内とは異なるが、イメージをもっていただくために掲載しました。

 その他の内容については、特に私の関心を惹くものではなかった。
 案内するスタッフの対応、見学者に対するアナウンサーの話の様子などに、見学者慣れというか、マニュアルがあって、見学者(ある意味で視聴者)に対して不快な思いをさせないようにという繊細な配慮が感じられた見学会だった。

 なお、現局舎は1957年に現在地に建設されたとのことだが、2020年には北1条西9丁目(市立病院跡地)に移転、運用開始を目指しているとのことだった。

(写真撮影は一部を除いてOKだったが、ウエブ上の公開はNGとのことだったので、使用した2枚の写真はいずれもウェブ上で公開されている写真を借用した)


課税の不公平による社会の分断

2017-08-28 22:52:25 | 大学公開講座
 課税は本来国民に対して公平に課せられるはずであるが、実際にはさまざまな課税を免除される制度によって不公平な現実が浮かび上がってくるという。制度を巧みに利用した徴税逃れによって巨万の富を築き、社会の分断に繋がる実態について話を聴いた。

 8月24日(木)夜、北大公開講座「社会の分断をいかに乗り越えるか?」の最終講義である第4講が開講された。
 第4講は、法学研究科の田中啓之准教授「公平な課税の実現に向けた法の現在と課題」と題しての講義だった。

               

 講義は私にとって非常に難解だった。税の専門的な話など、私には何の興味もない話である。
 その話を聴きながら、今回の社会の分断は、これまで3回にわたって聴いてきた分断とは質の異なる分断の話のように私には聴こえてきた。つまりこれまでは、国と国の間の分断とか、国内においても明らかに社会的な分断を呈している問題だった。
 それに対して、今回の税の話は、納税を巡って、富める者は弁護士などの力を借りて、なんとか制度の隙をうかがって徴税を逃れて富を蓄えるのに対して、貧する者はそうした術もなく納税するしかないという事実である。そのため両者の間ではますます貧富の差が広がり、それが分断を生んでいるという話である。

 田中准教授の話は、国は租税負担の公平性に立ちながらも(それを「水平的公平」、「垂直的公平」という言葉で説明された)、租税特別措置、公益税制など課税においてさまざまな特別措置を講じている。
 特別措置は本来、その公平性のため、あるいは産業振興のため、また特別に保護しなければならない国民のため、などのためにとられた措置である。しかし、その措置を本来目的とは違った形で課税を逃れようとするものが必ず出てくるという話である。

 講義では、具体的な案件として、①りそな銀行事件、②日本ガイタント事件、③武富士事件、④ヤフー・IDCF事件が紹介された。
 その中で最も理解しやすかった③の武富士事件について触れてみると、サラリーマン金融で一世を風靡し、創業者は巨万の富を築いた。その財産の贈与を受けるべく長男は香港に居住し、一定の業務に従事していた。そこで生前に財産を香港に移し、贈与税を逃れようとした事件のようである。
 この事案は、最高裁において長男の住所が香港にあり、居住し業務も行っているという実績が考慮され、贈与税は発生しないという判決だったということだ。
 実際には、もっと制度の網をくぐるさまざまな工夫がなされたのではないかと想像されるのだが、こうした案件は表面に出ないだけでかなりの数に上るのではと思わされた。

 もちろん徴税を回避する行為を防ぐための措置(法律)を整備してはいるということだが、講義を聴いていると私たちの知らない世界で、法律を適用(課税)する側とそれから逃れようする側が暗闘(知恵比べ)をしているようにも聞こえてきた。
 こうしたことによって、貧富の差がますます広がり、ひいては社会の分断に繋がっているとしたら由々しき問題である。
 法律を立案する側も、法律を執行する側(国税庁?)も、社会的不公平がおこらないようにおおいに知恵を絞ってほしいものである。

ガンちゃんはやっぱり天才ではないか!?

2017-08-27 22:32:01 | スポーツ & スポーツ観戦
 野球評論家・岩本勉氏はうるさいとか、うざいとか、言う人もいるようだが、野球というエンターテイメントをより魅力的に伝える天才ではないだろうか!?この意見に賛否両論はあろうが、私の持論を披瀝してみたい。

                     
                     ※ 講演会の写真はNGだったので、今回投稿の写真は全てウエブ上から拝借した。

 8月26日(土)午後、北海道博物館で開催されている特別展「~北海道と野球をめぐる物語~ プレイボール!」の関連イベントとして「ガンちゃん、北海道日本ハムファイターズを語る!」と題して、岩本勉氏の講演会があったので参加した。

 さすがガンちゃんである。その人気は絶大だ。私が会場に着いた時には満杯の状況で会場後ろにかろうじて席を確保することができた。(会場のキャパは200人くらい?)
 ガンちゃんは登壇と同時にエンジン全開である。彼が愛するファイターズが不振のために、自らがファイターズの一員であるかのように自虐ネタは連発し、聴衆を沸かした。

 冗談ばかりではない。時には野球解説者らしくファイターズの今年の不振の原因を指摘した。その原因とは、ズバリ“慢心”であるとビシッと指摘した。春のキャンプから「チャンピオンらしく振舞おう」とする姿が岩本氏には気になったという。

 また、大谷選手のことを“今まで見たことのない生命体”とか、栗山監督を“夢追い人”と、岩本氏独特の言い回しで選手や監督を評した。
 そして、話の中心は自分の少年野球から高校野球に取り組んだ生活について、ややデフォルメされた感じで披露されたが、それについては省略する。

                    

 さて、ここからは私の岩本論である。
 岩本氏は私の記憶では、いわゆるファイターズ専任のような形で解説者デビューした最初の人ではないだろうか?ファイターズが北海道移転した当初、バックネット裏から明るく面白くファイターズを鼓舞し続けたことを記憶している。
 時には野球解説芸人ではないか、と思えるほど聴くものを笑わせてくれた。その時感ずるのは、彼の反応の良さ、地頭の良さである。その様子は、売れっ子芸人にも勝るとも劣らないと思う。
 そして私が岩本氏を推すのは、彼が発する言葉の底流に“ファイターズ愛”が溢れていることだ。
 こんな岩本氏の解説を、うるさいとか、うざいと評する人がいるようだが、私はプロ野球は典型的なエンターテイメントだと思っている。だから、面白く楽しくプロ野球を観戦したいと思う。そうしたときに、岩本氏はより面白くプロ野球を見せてくれる水先案内人のような役割を担っているように思う。
 今、ファイターズ専任のような形で、森本稀哲氏とか、稲田直人氏が思い浮かぶが、彼らのような辛気臭い(言葉が過ぎるかな?)解説を聞いても少しも楽しく感じない。

                    

 岩本氏は講演の最後に「誰よりも分かりやすく野球を伝えたい」と語った。雑音を気にすることなく、岩本氏にはこれからもポリシーを貫き、面白く楽しい野球解説を私たちに提供してほしいと思う。
 野球を楽しく伝える天才(?)としてますます岩本ワールドを展開してほしいと思う。

センシティブな問題 2

2017-08-26 22:06:17 | 講演・講義・フォーラム等
 第二部の登壇者を見て、うがった見方はしたくないのだが、主催者の思惑が透けて見えるような思いもした。それは私の思い過ごしだろうか?いや、そう考えること自体が、この問題がセンシティブであるということなのだろう…。 

               
               ※ 開会前の会場の様子です。各テーブルには、同時通訳を聴くことができるイヤホーンが置かれています。

 8月24日(木)午後、京王プラザホテル札幌において、世宗研究所と韓国国際交流財団が主催する「2017年札幌韓日関係シンポジウム」が開催された第二部は、日韓両国から司会の陳昌珠世宗研究所々長を含めて9名の論客が登壇して討論した。
 その9名とは…、
 ◇青山修二(北海道新聞函館支社記者)
 ◇鄭在貞(ソウル市立大学教授)
 ◇崔剛(峨山政策研究院副院長)
 ◇崔雲壽(東北亜歴史財団研究委員)
 ◇箱田哲也(朝日新聞社論説委員)
 ◇細谷雄一(慶応義塾大学教授)
 ◇澤田克己(毎日新聞社論説委員)
 ◇梁雲哲(世宗研究所副所長)
そして司会を務めた陳昌珠(世宗研究所々長)の9名である。
 途中から、二部になって退席していた遠藤乾氏(北海道大学大学院教授)が復帰して議論に加わった。

               

 この登壇者、特に日本側の登壇者を見て、何かお気づきになられたでしょうか? もう気付かれたと思いますが、日本側は細谷教授を除くと全て新聞人が登壇しているということです。その新聞人ですが、リベラル派と目される新聞社の方ばかりという点が目立ちます。日本において保守派と目される新聞社が一社も加わっていないところ違和感をもったのは私だけでしょうか?
 この人選は主催者が意図的にそうしたものか、はたまた保守派と目される新聞人が要請を断ったのか、真相は分からないが、これでは日本においてこうした問題を議論するには公平を欠くと言わざるを得ない。

 さらには、シンポジウムの最初から最後まで、会場の最前列に駐札幌韓国総領事が座って議論を見守り、総領事館の書記官と思われる人物が二人パソコンを持ち込み、逐一発言を記録していたことも象徴的だった。

 お断りしておきますが、私はリベラル派とも、保守派とも思ってはいなく、きわめてニュートラルな立場だと思っている。そして、私はこの種の議論が苦手にタイプである。
 その私から見ても、「これはちょっとバイアスがかかっているのでは?」と思わざるを得なかった。

 シンポジウムにおける各論客の発言からもそれを感ずることができた。各氏の具体的な発言の紹介はここではひかえることにするが、各氏はそれぞれ専門家であるから非常に慎重に論を進めているように私には映った。しかし、そこから見えてくるのは日本に対して、日韓の歴史問題を解決することに積極的になってほしいという主張である。その主張の裏には、韓国側から見た歴史認識を認めたうえで、という思いが各氏の論から透けて見えてくるように思えた。

 日韓両国の間に横たわるセンシティブなこの問題に対する私の思いは封印するが、議論を聴いていて、細谷氏の言うような楽観論にはとても立てないな、というのが私の感想である。
 議論の中で、朝日新聞の箱田氏が「政治家の責任において、日韓問題を解決するための機関を設けてほしい」と主張された。そのこと自体は必要に思うが、その設置の仕方についてもまた両国はつばぜり合いをするのではないか、と思うと解決は何時になるのか?…
 ちょっとブルーな気持ちで会場を後にしたのだった…。
 

 


センシティブな問題 1

2017-08-25 23:09:53 | 講演・講義・フォーラム等
 近くて遠い国、隣国韓国と日本に横たわる問題はきわめてセンシティブな問題であること思い知らされたシンポジウムだった。私にとってけっして得意ではないこの分野の問題について、2回に分けて考えてみることにした。

               
               ※ 第一部において、両国を代表してスピーチした細谷慶大教授(左)とチェ北東アジア財団研究員(右)と、遠藤北大教授(中)です。

 8月24日(木)午後、京王プラザホテル札幌において、世宗研究所と韓国国際交流財団が主催する「2017年札幌韓日関係シンポジウム」が開催され、参加した。

 シンポジウム告知の新聞記事では分からなかったが、会場に着いて初めて主催が「世宗研究所」だということが分かり、世宗研究所についてちょっと調べてみた。すると、ネット上で次のような記事が目に入った。
 ハンギョレ(新聞)の2010年の記事の抜粋である。
 『コン理事長はこの会議で(中略)「(親北韓・左傾研究所という)世宗に対する批判世論を解消し、改革を成し遂げるために統合という方式が良いということ」と強調した。彼は最近、財団解体に反対意志を明らかにした世宗研究所労働組合委員長に「外側で世宗研究所を何と言っているか知っているか? 左派の巣窟と言われている」と話したと伝えられた。

 この記事から、私は次のように想像する。
 世宗研究所は、韓国随一の民間シンクタンクとして、グローバルスタンダードな論調を展開していたものと思われる。しかし、それは韓国国内世論(特に保守派)にとっては、左寄りの研究所と見られていたようだ。そのことに対して、研究所を運営する財団としてはそうした世論を排除するために政権寄り(保守派)に舵を切る改革に踏み切ったということなのだろう。(あまりにも私の推測が多いものではあるが…)
 こうしたことから、今では世宗研究所はどちらかといえば韓国保守派を代表する言論機関(民間研究所)という位置づけではないかと私は理解した。

               
               ※ 開会式で挨拶に立った主催者の陳昌珠世宗研究所長です。

 さて、シンポジウムの方であるが、第一部は「新しい東アジアの秩序構築と韓日関係」と題して、遠藤乾北大大学院教授がコーディネーターを務め、日韓両国の二人の研究者がテーマに沿ったスピーチを展開した。そのスピーカーとは、日本側が細谷雄一慶大教授、韓国側はチェ・ウンド北東アジア財団研究院が務めた。

 細谷氏の発言要旨は次のとおりである。
 氏は日本の視点と断りながら、日本には二つの不安があるとした。

 その一つは、北東アジアの未来について、北朝鮮の動向に不安があるとした。もう一点が日韓関係における不安であるという。
 そして細谷氏は、北東アジアの未来については悲観的であるとし。その理由としてアメリカ・トランプ、北朝鮮・金正恩両首脳の不安定さに危機感を抱くとした。

 一方、日韓関係については比較的楽観的であるとした。
 その理由として、この問題のほとんどは国内問題であるということだ。その日韓関係についてそれぞれの国において問題解決を困難にさせているのは、日本においては保守派であり、韓国においては進歩派と目されているという。
 そのような状況の中、日本の安倍首相は保守派、韓国の文在寅新大統領は進歩派のリーダーと目されていることから、それぞれの派を抑える(コントロール)ことができのではないか、というのが細谷氏の見立てである。
 両国にとって、北朝鮮の脅威、米国が頼りにならない現実の中、両国の協力関係が何より必要との考えから、両国関係が好転するのではないか、と細谷氏は語った。

               
               ※ 開会式で祝辞を述べた韓惠進駐札幌大韓民国総領事館総領事です。

 続いて、スピーチしたのは韓国のチェ氏である。
 チェ氏は、日韓関係における細谷氏の楽観的見通しを冒頭に否定し、「これまでの5年間、日韓関係は非常に悪化した。これまでより悪くはならないが、けっして良い展望は開けない」とした。
 その理由として、日韓の歴史認識に対する、日本のそのときどきの首脳の発言の違いを指摘する。特に安倍首相の河野談話、村山談話との違いを指摘した。さらには、昨今徴用工問題も新たに浮上したことをチェ氏は指摘する。
 慰安婦問題について、日本側は解決済みとするが、韓国国内においてはまったく問題外と受け止められ、両国の合意は不可能ではないかと指摘した。

 非常に粗いまとめであるが、細谷氏、チェ氏のスピーチはそのまま両国の雰囲気を代表しているようにも思われる。
 この後、両国の知識人多数が登壇してシンポジウムが行われたのだが、そこでも両国に横たわる溝の深さと、簡単には埋まらない深刻さを私は思い知らされたのだった。その点については、明日触れてみることにする。


シニアのためのフットサル観戦講座

2017-08-24 21:58:37 | スポーツ & スポーツ観戦
 不純な動機で参加した講座だったが、そこは転んでもただでは起きたくない私である。これまで何度か観戦した中で、理解していたと思えたフットサルだったが、初めて知ることができたことも数多かった。

                

 8月20日(日)午後、北海道新聞社の広報施設「道新BOX」でエスポラーダ北海道による「シニアのためのフットサル観戦講座」が開催され、受講を申し込んだところ当選通知が舞い込んだので参加した。
 不純な動機とは、受講するとエスポラーダ北海道の観戦券がプレゼントされると知って、そのことが直接動機で申し込んだからである。

 講座は大きく三つに分かれて構成されていた。
 ◇第一部 金井コーチによる「フットサル観戦講座」
 ◇第二部 現役選手の田辺陸選手による「フットサルにかける思いを語る」
 ◇第三部 石川トレーナーによる「フィジカル体操」

                    
                    ※ 講座開始前にチームの小野寺隆彦監督が顔を見せ、ご挨拶された。

 金井コーチは、「フットサルを楽しむ五つのポイント」と題してお話された。その五つとは、①フットサルとは、②Fリーグとは、③ルールについて、④観戦ポイント、⑤エスポラーダ北海道、の5点だった。

 その中で私が初めて知ったことについてレポしてみたい。
 それは、グランドサッカー(普通のサッカー)とフットサルの違いについてである。
 まず、試合時間であるがサッカーが90分であるのに対して、フットサルは40分であることは知っていた。ところがサッカーの試合時間がランニングタイムを計測するのに対して、フットサルはプレーイングタイムを計測していることは初耳だった。
 ランニングタイムとは、試合が始まると時計は一切止まらず進行するが、プレーイングタイムは、試合が進行しているときのみタイムが計測されるということを指すという。つまりフットサルでは、ボールがコート外に出たり、試合が止まったたりしたときには時計も止まっているということである。
 その他のことは、私は既知識として持っていたが、ボールの大きさの違い(サッカー5号球、フットサル4号球)、プレーコートが20m×40mとサッカーのおよそ1/9の小さなコートで対戦するということ、などなどである。
 そしてフットサルの最大の魅力はスピーディーな試合展開だと強調された。

 さらにフットサルの特徴的なルールとして4点紹介された。
 ①ボールがタッチラインを出た場合は、キックインで試合を再開する。
 ②ボールがゴールラインを割った場合はGKのボールクリアランス(ボールスロー)で試合が再開される。
 ③前後半、それぞれで6つ以上の反則を犯すと相手チームに第2PKが与えられる。
 ④選手交代の自由、パワープレーなどの戦術が取られる。
 ⑤試合再開はレフリーの笛から4秒以内に開始するというルールがある。
といったようなことが紹介され、なんとなくうろ覚えだったルールを理解することができた。

                    
                    ※ ユニフォーム姿で登場した田辺選手は真摯にフットサルに取り組んでいる好青年でした。

 その後、田辺陸選手のトーク、石川トレーナーのフィジカル体操を体験して、受講目的だった9月2日の「エスポラーダ北海道 VS 府中アスレティックFC」戦のチケットを受け取り講座は終了した。

 講座を受講したことで、フットサル観戦がより楽しみになった思いである。
 9月2日(土)、北海きたえーるへ観戦に出かけ、エスポラーダを応援してこようと思っている。

高齢者の病気? 尿失禁の話

2017-08-23 16:29:26 | 講演・講義・フォーラム等
 尾籠な話と言うなかれ!口には出さねども、高齢者にとってはけっこう深刻な病気の一つなのである。私自身も尿の切れが悪くなっていることを感ずる昨今である。高齢者が罹りやすい病気の一つ「尿失禁」についてお話を聴いた。 

 私にとって一昨日レポした「かでる講座」と同じように、毎月一度開講されている札幌西円山病院主催の「地域で暮らす高齢者のための医療公開講座」を都合が許すかぎり受講している。その8月講座が8月19日(土)午後、かでる2・7で開講されたので受講した。
 今回のテーマは「尿失禁 ~隠さない・あきらめない~」というもので、同病院の看護師・土屋隼人氏が講師を担当した。また、「尿失禁予防体操と骨盤底筋群体操」を同じく同病院の理学療法士・高間望氏が担当した。

               
               ※ 講師を務めた札幌西円山病院の看護師・土屋隼人氏です。

 尿失禁は必ずしも高齢者特有の病気というわけではないが、やはり65歳以上の方の約8割が何らかの排泄障害を有しているという。
 その排泄障害には次のような種類があるという。
 ◇頻尿(昼間・夜間) ☆
 ◇尿勢低下
 ◇残尿感
 ◇尿意切迫感     ☆
 ◇切迫性尿失禁    ☆ ★
 ◇腹圧性尿失禁      ★
 ◇溢流性尿失禁      ★
 以上の内、☆印の場合は、医師に相談した方が良い。★印の場合は、隠さない、あきらめないで適切な治療・運動・適切なパッドを施すのが良いとの助言があった。

               
               ※ 会場内には最近出回っているさまざまな軽失禁パッドやパンツが展示されていました。

 それぞれの症状や傾向については省略するが、もし排尿障害に悩んでいる方がいたら、次のことを知ってほしいということだった。
(1)排尿障害に悩んでいる方は多数存在する。
(2)歳だからしょうがないという時代ではない。
(3)適切な治療や対応をすることで、今までと同じ生活を続けられる可能性がある。
(4)隠す・あきらめる必要はない。

 そして適切な治療や対応にはどのようなものがあるか、ということだが、一般的には①骨盤底筋体操、②軽失禁パッド、布パッド、③薬物療法、手術療法、などがあるという。
 軽失禁パッドや軽失禁パンツの性能が向上し、使用感も優れたものが出回っているということだ。軽度の場合には、①や②の方法で対処し、深刻さを増した場合には専門の医師に相談するのが適当ということだろう。

               
               ※ 講義の後に行われた尿失禁予防体操の方法を紹介してくれている一コマです。

 最後に講師の土屋氏が強調したことは、尿失禁症状のために外出をためらったり、不安な毎日を過ごすよりは、さまざまな対処方法があるので積極的に対策を講じて、QOL(生活の質)をこれまで同様に保ち続けることを考えてほしい、ということだった。
 心に留めておきたいお話だった。

※ このブログを投稿したところ、拙ブログに時折りコメントをいただく通称「出ちゃっ太」さんから直ぐにコメントをいただきました。悩める者にとっては勇気をいただくコメントです。そちらもぜひお目を通しください。 

映画 192 Start Line

2017-08-22 17:08:14 | 映画観賞・感想

 掛け値なしに「良い映画を観ることができたぁ…」と思った観賞後の感想だった。耳が聞こえない監督自身(彩子)が出演し、自転車で日本縦断の旅に出るロードムービーである。ドキュメントタッチの中で、さまざまなドラマが展開する…。 

                    

 夏に入って映画からしばらく遠ざかっていたこともあり、新聞で「想う映画館」なるグループが主催する「Start Line」の告知を目にしたとき、「なんとなく良さそうな映画では」と思われ、スケジュールも空いていたので観賞を申し込んだ。

 8月20日(日)午後、北海道立文学館の講堂で映画会は開催された。
 映画「Start Line」の内容を、配布されたフライヤーから紹介すると…、

「生まれつき耳が聞こえない映画監督 今村彩子が、2015年夏、自転車で日本縦断の旅へ、荒天、失敗に次ぐ失敗、聞こえる人とのコミュニケーションの壁に、ヘコみ、涙し、それでもひたすら最北端の地に向けて走り続ける。そんな彼女の姿を追うのは、伴奏者にしてカメラ撮影を担う“哲さん”。「コミュニケーションを、あなた自身が切っている!」と厳しく指摘する。相手を想うがゆえの容赦ない言葉に、一触即発の危機が訪れる…。そして、聴力を失ったサイクリスト、ウィルとの奇跡的な出会い、「ピープル インサイド オナジ」 はたして彼女はどんな答えを見つけるのか?人生の旅そのものの3,824Km。ニッポン中のためらう人に観てほしい。一篇の勇気のおすそわけです。」

          
               ※ 旅の途中で偶然出会ったウィルに彩子は激しく触発された。(左側は哲さんです)

 彩子は耳が聞こえないために人とのコミュニケーションをとるのが苦手で、消極的な自分を克服しようと自転車の旅に出ることを決意する。
“哲さん”は自転車店の店員であるが、彩子の旅を知って、休暇を取り伴走兼カメラマンとして同行する。
 その哲さんが何ともいいのだ! 彼は旅へ出ても消極的な彩子を容赦なく口撃する。彼は言う。「コミュニケーションを、あなた自身が切っている!」と…。その言葉に彩子は、時には涙し、時には不貞腐れながらも旅は続く。
 旅の後半、同じサイクリストでやはり耳が不自由なオーストリア人・ウィルに出会う。ウィルは陽気に誰とでもコミュニケーションをとろうとしている。そしてウィルは言う。「ピープル インサイド オナジ」…。つまり、外国人でも日本人でも、障害があってもなくても、「人の心の中はみんな同じだよ」とウィルは彩子に話しかけた。

 映画の中で彩子たちは目的地の宗谷岬に到達するが、彩子が変わったというところはみられない。
 しかし、哲さんの彩子を想うがゆえの厳しい指摘を受け止め、ウィルの積極的な姿に刺激を受け、きっと変わっていくであろう期待を抱かせながら映画は終わる。
 まさに彩子はようやく今、スタートラインに立ったのだ。

          
               ※ 3,824Kmを走り終え、宗谷岬に立った彩子と哲さん。

 30歳を超えているにも関わらず全てに自信無げな彩子。そんな彩子を叱咤し、励ます哲さんとウィル。映画 Start Lineは、ドキュメンタリー映画というよりは、巧まざるヒューマンタッチの映画だった。