窓ガラスもない、板壁一枚だけの暗い住居…。北国北海道で過ごす冬はさぞかし厳しかったことだろう…。案内いただいた琴似屯田兵子孫会の永峰氏は屯田兵だった祖父に対する尊崇の念を抱きながら、丁寧に説明を務めてくれた。
本日午後、「めだかの学校」野外講座「北の守りと開拓を担った屯田兵の史跡を訪ねる」の第1弾、「琴似屯田兵の史跡を訪ねる」を開講した。
現地案内は、第1回目の座学の講師もお願いした琴似屯田兵子孫会の事務局長を務める永峰貴様にお願いした。
訪れた史跡は下記のとおりである。
◇屯田の森(各種屯田兵に関する石碑群)
◇琴似屯田歴史館資料室
◇琴似屯田兵屋(琴似神社境内)
◇琴似屯田兵村兵屋跡
以上4ヵ所だったが、実に中身の濃い見学学習となった。それは一にも、二にも永峰氏の熱心な説明があったが故であった。
※ 開会時に会員の方々に説明する永峰氏(後ろ姿)です。
特に永峰氏の説明に熱が入ったのが、琴似屯田兵として入植された人たちの心の拠りどころである琴似神社についてだった。
込み入った話は省略するが、琴似神社の前身(現代の社は3代目)は明治25年に旧亘理(現宮城県亘理町)の武早智雄神(たけはやちおのかみ)の分霊を持ち帰り、「日登寺」の境内に祀り「武早神社」と称したそうである。その後、明治30年に現在地に移り「琴似神社」と改称したそうである。屯田兵の方々がいかに神を敬っていたかを物語るエピソードである。
さて、境内にある「琴似屯田兵屋」であるが、この兵屋は建材などほぼ当時のままの姿で保存されているそうである。ただ老朽化が激しく一般公開はされていないのだが、永峰さまのお力により特別に見学が許されたものである。そうした形で保存されている屯田兵屋は唯一とされている。なんかと現代の技術でもって保存され続けることを願いたい。
※ 「琴似神社」境内に保存されている「琴似屯田兵屋」です。木の柵のように並んでいるのが「無双窓」です。木の柵を移動させて雨風を防ぎます。
続いて当時の屯田兵村の中に復元された「琴似屯田兵村兵屋跡」に案内された。こちらは琴似神社境内に保存されている「琴似屯田兵屋」とは違い、当時の兵屋を忠実に再現した兵屋である。したがって屋根も柾葺き屋根で、兵屋の裏には当時の菜園も併せて再現されている。
ここでの永峰氏の説明は、氏が子どもたち相手に屯田兵の生活を理解させるために工夫したことを、トイレや台所、飲料水の確保などについて実体験を取り入れることで理解させた体験談を披露された。その中で、特に印象に残っているは、明治時代はガラスがまだまだ貴重品だったという。したがって、屯田兵屋には窓ガラスは使われていなかったそうだ。窓は「無双窓」という寒さを考えない「江戸の武家長屋」を倣ったものだったそうだ。
※ 「琴似屯田兵村兵屋跡」の室内の居間で説明する永峰氏です。
私たちもその「無双窓」を閉める体験をしたが、窓の板戸を閉じると室内に光はまったく差さず、暗い中で生活しなくてはならなかったことが容易に想像された。
家屋だけでなく、当時の屯田兵や家族の人たちの生活は今から考えると非常に過酷なものだったことが容易に想像された。
参加された「めだかの学校」の会員の方々はどのような感想を持たれただろうか?
札幌近郊の屯田兵村を訪ね歩いた後に、感想を交流する機会を設ける必要を感じ始めている。
「琴似屯田兵の史跡を訪ねる」を拝見しまして、良き講座をされた、と感動させられました。
特に《・・「琴似神社」境内に保存されている「琴似屯田兵屋」です。木の柵のように並んでいるのが「無双窓」です。
木の柵を移動させて雨風を防ぎます。・・》
ここまで添付して下さった写真を拝見しながら、
あの当時を過ごされた琴似屯田兵の過酷さが、現代の私たちが少しでも理解できることです・・。
もとより貴兄は、《・・私たちもその「無双窓」を閉める体験をしたが、
窓の板戸を閉じると室内に光はまったく差さず、暗い中で生活しなくてはならなかったことが容易に想像された。
家屋だけでなく、当時の屯田兵や家族の人たちの生活は今から考えると非常に過酷なものだったことが容易に想像された。・・》
こうした貴兄の投稿文を読ませて頂き、あの当時を思い馳せ・・感銘させられた次第です。
貴兄が主催される野外講座は、優れた深みのある講座で、事前の調査などで労苦が多いと思われます。
貴兄は熱意の余り、ときには御身体を過労されてしまうと私は感じられ、
程々に御自愛された上で、今後も良き野外講座を公開して下さい。
私たちの講座「さっぽろの古を訪ねて」にご注目いただきありがとうございます。
ご存じとは思いますが、この講座を「Ⅲ」称しているように、私たちにとっては同種の講座を開催するのが3度目(3年目)になります。
私にとっては、「めだかの学校」と関わって以来の渾身の企画と思って取り組んでいる講座です。
まだまだ歴史の浅い北海道ですが、その北海道の形成に重要な役割を果たした人たちに焦点を当てての学びは非常に興味深く、学びにも大きなものがあります。
シリーズは一応「Ⅲ」で終止符を打とうと思っていますが、何らかの形で3年間で学んだことをもっと実のあるものにしなくてはとも考えております。どのような形になるのか、今年度の学びを続けながら考えていこうと思っています。
引き続き、私たちの学びを見守っていただければと思っております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。