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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 ハート・ロッカー №283

2020-03-29 18:46:30 | 映画観賞・感想

 戦時下における爆発物処理という特殊部隊の任務を描く、生きるか死ぬかの迫真のドラマは見ていて非常にスリリングである。しかし、これがアカデミー賞の最優秀作品賞と聞くと、若干首を傾げざるを得ないと思ったのだが…。

        

 私の2010~2020年までの日米アカデミー賞の作品賞を巡る旅もいよいよ最後となった。その年度の最優秀作品賞とあって見応えのある作品が多かったが、私からみて「これがどうして?」という作品も中にはあった。そうしたことも含めてこの2週間ほどはどっぷりと映画の世界に浸かった2週間だった。

 ということで、アカデミー賞を巡る旅の最後の作品は2010年度のアカデミー賞最優秀作品賞に輝いたキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」(2008年制作)である。          

 映画は2004年夏、戦時下のイラク・バグダッドで爆発物を解体処理に従事する特殊部隊の活躍と任務を描く戦争ドラマである。その特殊部隊の一つの班に新リーダーとして赴任してきたのがジェームス2等軍曹(ジェレミー・レナー)だった。ジェームスは爆発物処理の専門家であり、解体した爆弾は873戸以上というベテランだったが、危険を顧みないその行動が班の中に波紋をおこすのだった。

    

    ※ 主演のジェームス2等軍曹(ジェレミー・レナー)です。

 映画に特にストーリーはない。次々と危険な現場に立ち入り、爆発物の処理やイスラム人テロと対峙する場面に次々と遭遇する。その際に、ジェームスは他の制止を振り切り危険も顧みず爆発物の処理に率先して当たるのだった。その行動は私からみてもあまりにも無謀に思え、いくつ命があっても足りないのではと思わせるほどだった。

 典型的な場面は、ある夜バグダッド郊外で大規模な爆発事故が起こった。ジェームスは「爆発を起こした人間は近くのビルから爆発の様子を確認していたはずだ」と主張し、暗闇のビル内に立ち入り、爆発をさせた人物を射殺しようとビル内を捜索する。しかし、これは自殺行為そのものではないだろうか?爆発させた人物たちからジェームスたちはまる見えである。およそ正常な判断をする軍隊がするはずがない行為ではないかと私には思えた。映画はもちろんジェームスを死なせるはずはないのだが…。

      

      ※ 夜間のビル内の捜索です。私には無謀と映ったのだが…。

 映画は特別に戦争反対や軍制度を批判したり、イラク側を非難したりすることは表立ってはなく、ひたすらジェームス班の行動を追い続けることに終始するものだった。

 そのジェームス班も任期が来て、一人は負傷退任し、一人は除隊する。しかし、ジェームスは休暇を取った後、再び一年の任期で爆発物処理のため戦地に赴くのだった…。

       

       ※ テロの仕業で原型をとどめないジープです。

 映画を観終えて、私はどこがアカデミー賞の作品賞に値するのだろうか?と首を傾げた。しかし少し考えてみると、アメリカの若者にとっては日本とは違って軍隊がかなり身近な存在としてあるということなのだろう。そうした中で、軍隊に入隊して戦地に赴いた者にとって、自らの死は直ぐ身近に感ずるものなのではと思われる。そうした中に身を置いた時、人は正常な判断力が麻痺してしまい、危険に身をおいてこそ生きている実感を得るという哀しい、危険な実態を世に訴えようとしたのだろうか?だとしたら、アカデミー賞受賞も納得するのだが…。はたして私の見方は??

 なお、タイトルの「ハート・ロッカー」とは、「苦痛の極限状態」や「棺桶」を意味するアメリカ軍のスラングだそうである。



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