大昔、若かりし頃、某病院の当直での経験。
寝たきりのお婆さんの顎がはずれたと息子さんが連れてきた。確かに両下顎ともはずれているようで「モゴモゴ、アフアフ」言っている。そのときまで自分は何回か整復した経験はあり、頭の中で整復方法をシミュレーションしながら、「下顎の両奥歯に自分の親指をあてがいそのまま下顎を鷲づかみにしたままドジョウすくいの要領で下顎を下に引き下げながら押し込むべし・・・・」・・・「押し込むべし・・・」 、あれ? 「押し込むべしっ!」・・・・、ええ?汗だくで何回やっても入らない。困り果てて上の先生に電話したら「若年者と違って年寄りの習慣性脱臼の患者はなかなか入んねぇぞぉお、入っても喋らせるとまたすぐはずれるし・・、ま せいぜい頑張んなさいね」と・・・。
で、患者のもとへ戻ると後からお嫁さんが到着していて「あっ、先生、これはもう入ってますね。今、私がいれましたから。さ じゃあ帰りますか」と・・・。ええええ? 結局なんだったんだろうか? でも患者さんはいざしらず、家族の方が満足したのだから、ま いいか。それにしても医療って不思議だ。
先日、下顎を脱臼された患者さんが当院に見えられましたが、若い方でよかった。恥かかかずにすんだもの。